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エフルエルダ筋注と従来型HAワクチンの違いまとめ~使い分け・接種設計・副反応まで網羅

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2024年に国内承認された高用量インフルエンザワクチン「エフルエルダ筋注」は、従来型のHAワクチンと比べて抗原量や接種経路が異なり、高齢者向けの新たな選択肢として注目されています。

本記事では、ビケンHAなどの標準用量ワクチンとエフルエルダ筋注の違いを薬剤師の視点で整理し、現場での実務対応に必要なポイントをコンパクトにまとめました。

接種判断、投与設計、副反応対応など、現場で役立つ情報を中心に解説します。

目次

ワクチンの基本構造と成分の違い

抗原量(HA含量)の違い

項目ビケンHA(標準用量)エフルエルダ筋注(高用量)
HA含量(1株あたり)15μg60μg
総HA量(1回分)60μg(15μg×4株)240μg(60μg×4株)
種類4価不活化ワクチン高用量4価不活化ワクチン

標準用量の4価ワクチンは、毎年の流行株(A型2種+B型2種)に由来するHA抗原を各15μgずつ含有しています。

一方、エフルエルダはその4倍となる各60μgを含有しており、高齢者の免疫応答の低下を補う目的で設計されています。

添加物・防腐剤の違い

項目ビケンHAエフルエルダ筋注
防腐剤チメロサール含有製剤あり無添加(チメロサールフリー)
主な添加物リン酸緩衝液、塩化Na ほかポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなど

単回使用前提のシリンジ製剤であるエフルエルダは、防腐剤を含みません

アレルギー歴のある患者には、従来製品(標準用量)でも防腐剤非含有製剤(例:フルービックHA)を選択するなど、薬剤師の確認が重要です。

接種設計と対象年齢の違い

ワクチンの選択においては、「誰に・どの量を・何回・どう接種するか」という設計が極めて重要です。

エフルエルダ筋注と標準用量HAワクチン(例:ビケンHA)では、接種量・回数・経路・対象年齢などに明確な違いがあります。

接種量・回数・年齢の違い

年齢区分標準用量ワクチン(ビケンHAなど)エフルエルダ筋注
6か月~3歳未満0.25mL × 2回(皮下注)接種対象外
3歳~13歳未満0.5mL × 2回(皮下注)接種対象外
13歳以上0.5mL × 1回(原則)または2回(医師判断)接種対象外
60歳以上上記同様0.7mL × 1回(筋注)

エフルエルダは60歳以上に限定された高用量ワクチンで、0.7mLを筋肉内に1回接種するのみと非常にシンプルです。標準用量では13歳未満で2回接種が必要な一方、エフルエルダは単回接種で済む点も高齢者にとって利点となります。

接種経路の違い:皮下注 vs 筋注

製剤接種経路実務上の注意点
ビケンHAほか皮下注(SC)皮下注の手技に慣れた体制向け
エフルエルダ筋注筋注(IM)誤接種防止のダブルチェック必須

インフルエンザワクチン=皮下注という現場の固定観念から、エフルエルダの筋注を誤って皮下注してしまうリスクがあります。プレフィルドシリンジには「筋注」と明記されているものの、接種前の声かけや事前確認が極めて重要です。

有効性とエビデンスの比較

エフルエルダ筋注は、高齢者での免疫応答の低下を補う目的で設計された高用量ワクチンです。ここでは、標準用量ワクチンとの有効性の違いを、国内外の臨床試験結果をもとに比較します。

国内第Ⅲ相試験(QHD00010)

  • 対象:60歳以上の健康成人(日本人)
  • 比較
    • エフルエルダ筋注:60μg/株×4株(0.7mL)を筋注
    • 標準用量HAワクチン:15μg/株×4株(0.5mL)を皮下注
  • 評価項目
    • 幾何平均抗体価(GMT)
    • 抗体陽転率
  • 結果
    • エフルエルダ群は、抗体価・陽転率ともに有意な上昇を示しました。
    • 高齢者において、より高い免疫原性が確認されました。

海外第Ⅲb/Ⅳ相試験(FIM12)

  • 対象:65歳以上 約4万人(米国中心)
  • 比較
    • 高用量ワクチン(TIV-HD) vs 標準用量ワクチン(TIV-SD)
  • 結果
    • 高用量群の相対的有効性は24.2%(95%CI: 9.7–36.5)
    • インフルエンザ発症率、入院率、合併症発生率が低下

このように、エフルエルダ筋注は、標準用量HAワクチンに比べて発症予防効果や免疫応答が優れることが臨床的に示されています

実務上の解釈ポイント

  • 高齢者においては、標準用量で十分な免疫応答が得られないケースがある。
  • 高用量は、抗体価をより高く、より早く上昇させる可能性がある。
  • ただし、全ての高齢者が対象というわけではなく、リスク因子や施設方針に応じた判断が必要です。

副反応とリスク対応

ワクチン選択においては、有効性だけでなく安全性と副反応の傾向も重要な判断材料です。ここでは、エフルエルダ筋注と標準用量HAワクチンにおける副反応とリスク管理の違いをまとめます。

共通して注意が必要な重大な副作用

添付文書に記載されている重大な副作用は、両ワクチンで基本的に共通しています。

  • ショック、アナフィラキシー
  • 急性散在性脳脊髄炎(ADEM)
  • けいれん(熱性けいれんを含む)
  • 脳炎・脳症、視神経炎、脊髄炎
  • ギラン・バレー症候群
  • 肝機能障害、黄疸、間質性肺炎
  • 血管炎(IgA血管炎等)、血小板減少
  • スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)など

これらは発生頻度こそ低いものの、接種後の観察や情報提供、迅速な対応体制が求められる副反応です。

エフルエルダ筋注に特有の副反応傾向

高用量設計および筋注という特性により、エフルエルダ筋注では以下の軽度な局所・全身反応がやや多く見られる傾向があります(インタビューフォームより)。

副反応発現頻度
接種部位の疼痛43.8%
倦怠感、頭痛、筋肉痛など各10%以上

多くは一過性かつ軽度であり、追加の治療を要する例はまれです。

迷走神経反射への備え

エフルエルダは0.7mLの筋注であり、高齢者では接種刺激により迷走神経反射(失神・徐脈・めまい)を起こす可能性があります。

実務上の対応ポイント

  • 接種後は数分間、座位または安静保持を推奨
  • 過去に失神歴のある方には事前に確認
  • 看護師や接種スタッフとの連携で転倒防止体制の整備

特に高齢者施設などでは、立ち上がり直後の転倒事故を防ぐ観察体制が安全対策として重要です。

実務上の使い分けと薬剤師の役割

高用量ワクチンであるエフルエルダ筋注の登場により、高齢者へのワクチン選択肢が増えた一方で、現場での判断やオペレーションの複雑化も避けられません

ここでは、薬剤師が関与すべき実務上の使い分けポイントと、情報提供の視点を整理します。

エフルエルダ筋注を優先すべき対象者

エフルエルダは添付文書上、60歳以上が対象ですが、特に次のような方には選択が検討されやすいと考えられます。

  • 高齢者施設の入所者・通所者
  • 心疾患・呼吸器疾患・糖尿病などの基礎疾患がある方
  • フレイルや免疫機能低下が疑われる方
  • インフルエンザワクチン接種歴が少ない高齢者

これらは、標準用量ワクチンでの免疫応答が得にくいとされる層です。

製剤ごとの特徴と使い分け比較

項目標準用量HAワクチン(ビケンHAなど)エフルエルダ筋注
対象年齢6か月以上(全年齢)60歳以上のみ
接種回数年齢によって異なる(最大2回)単回接種
経路皮下注筋注
抗原量各株15μg(合計60μg)各株60μg(合計240μg)
主な目的重症化予防発症予防強化+重症化予防
剤型多回用バイアルまたはシリンジ単回用プレフィルドシリンジ
実務適性集団接種に向く個別接種・施設接種向き
保存条件冷所(10℃以下)冷所(2〜8℃)

薬剤師としてのチェックポイント

  • 接種経路・対象年齢・接種量の確認
  • 誤接種防止(特に皮下注と筋注の取り違え)
  • 在庫管理(保存温度帯の違い、単回用か否か)
  • 看護師・医師との情報共有(特に導入初期)

薬剤師がワクチン製剤の違いを正しく理解し、医療チーム内で安全な接種体制を構築することが求められています。

よくある質問と説明のポイント

現場では、医師・看護師・患者からさまざまな質問を受ける場面があります。ここでは、薬剤師が即答できるようにしておきたい質問とその回答例を簡潔にまとめます。

Q1:なぜ筋肉注射なのですか?

回答例
エフルエルダは、高齢者で十分な免疫反応を得るために設計された高用量ワクチンです。筋肉注射にすることで、抗原がよりスムーズにリンパ系へ移行しやすく、抗体が効率よく作られるとされています。

補足
mRNAワクチンや多くの海外製ワクチンも筋注が基本です。

Q2:副反応は強くないですか?

回答例
局所の痛みや倦怠感などは出やすい傾向がありますが、ほとんどは軽度で一過性です。重大な副反応の頻度は、標準用量ワクチンと大きな差はありません。

補足
接種後は数分間の安静を推奨しています。迷走神経反射への注意も必要です。

Q3:従来のワクチンでも効果はあるのですか?

回答例
はい、従来のワクチンでも重症化の予防効果はあります。ただし、高齢者では免疫が低下しているため、十分な抗体がつきにくいことがあり、高用量ワクチンが検討されます。

補足
発症そのものをより強く予防したい場合に、エフルエルダが有効とされます。

Q4:標準用量と高用量、どちらを選べばよいですか?

回答例
年齢や基礎疾患、施設の方針などによって選択が異なります。60歳以上の高齢者で、特にリスクが高い方にはエフルエルダが推奨されることがありますが、最終的には医師の判断になります。

補足
どちらのワクチンにもメリットがあるため、状況に応じて使い分けが行われます。

参考文献・情報出典一覧

以下は、本記事の作成にあたって参照した一次資料および公式情報です。内容の正確性を担保するため、添付文書・インタビューフォームを最優先に引用し、信頼性の高い公的情報に基づいて構成しています。

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