MENU
お知らせ内容をここに入力できます。 詳しくはこちら

フォスブロック錠250mg:透析患者の高リン血症治療に必須のリン吸着薬を徹底解説

  • URLをコピーしました!

慢性腎不全の患者さんでは、腎臓が十分にリンを排泄できないため、血液中にリンがたまりやすくなります。高リン血症は骨や血管への悪影響をもたらし、心血管疾患や生命予後に直結するため、透析患者さんにとって重要な管理項目です。

その治療の基本となるのがリン吸着薬であり、なかでも広く使われているのがフォスブロック錠250mgです。フォスブロックは、食事中のリンを腸管内で吸着し、便と一緒に排泄させることで血清リン濃度を下げる薬剤です。

この記事では、フォスブロック錠250mgの作用機序、効果、副作用、注意点などをわかりやすく整理します。特に「食直前服用が必須」である点や、便秘・消化器症状に注意が必要である点を中心に、薬剤師として実臨床で押さえておきたいポイントを解説していきます。

目次

概要

フォスブロック錠250mgは、透析中の慢性腎不全患者における高リン血症の改善を目的とするリン吸着薬です。消化管内で食事由来のリンと結合し、便中へ排泄させることで血清リン値を下げます。

製品名

フォスブロック錠250mg(Phosblock® Tablets 250mg)

名前の由来

「Phosphate(リン)」を「Block(遮断)」することに由来。

成分名

セベラマー塩酸塩(Sevelamer hydrochloride)

販売メーカー

協和キリン株式会社

包装

  • PTP100錠(10錠×10シート)
  • PTP500錠(10錠×50シート)
  • PTP1000錠(10錠×100シート)

※本剤は極めて吸湿性が高いため分包は不可。PTPシートでの交付が推奨されています。

保管方法

室温保存。直射日光・高温・湿気を避けること。

どんな薬(一般向け)

食事に含まれるリンを体に吸収させない薬です。食事と一緒に飲むことで、腸の中でリンをつかまえて便として排出し、血液中のリン濃度を下げます。透析を受けている腎臓病患者さんでよく使われます。

食事をしないと効果が出ないため、必ず食直前に服用することが大切です。

作用機序

陰イオン交換樹脂として消化管内でリン酸と結合し、便中に排泄させることで血清リン濃度を低下させます。消化管からは吸収されません。

対象患者(適応症)

透析中の慢性腎不全患者における高リン血症。

「透析中」に限定されています。リオナ、キックリン、ホスレノールなどは「慢性腎臓病患者における高リン血症の改善」なので、使用患者が限定されるとデッドストックになる可能性がありますね。

代謝経路

消化管からは吸収されず、全て便中に排泄されます。

最高血中濃度到達時間

吸収されないため血中濃度は上昇しません。

半減期

吸収されないため設定なし。

作用発現時間

服用後、食事由来のリンが腸内にある時点から作用を発揮。

作用持続時間

食事と一緒に服用した間の腸管滞在時間に依存。

用法用量

  • 成人:通常、1回1〜2g(4〜8錠)を1日3回、食直前に服用
  • 血清リン濃度を指標に適宜増減し、最高用量は9g/日(36錠)。
  • かみ砕かず、水またはぬるま湯で服用。
  • 飲み忘れ:食事中または直後なら服用。それ以外は飛ばして次回に。2回分をまとめて飲まないこと。

<医療従事者向け:用量調整の目安(添付文書より)>

開始量

状況開始用量
血清リン < 8.0 mg/dL1回1gから
血清リン ≥ 8.0 mg/dL1回2gから
沈降炭酸カルシウム < 3g/日 からの切り替え1回1gから
沈降炭酸カルシウム ≥ 3g/日 からの切り替え1回2gから

増減基準(血清リン濃度に応じて)

血清リン濃度投与量調整
6.0 mg/dL以上1回0.25〜0.5g(1〜2錠)増量
4.0〜6.0 mg/dL投与量を維持
4.0 mg/dL未満1回0.25〜0.5g(1〜2錠)減量

投与を忘れた場合

食事中または直後に気づいた場合はすぐ服用。それ以外のタイミングでは飛ばして、次回食直前に服用。2回分を一度に服用してはいけない。

注意事項(薬剤師として)

  • 便秘・腹部膨満・腹痛など消化器症状に注意。腸閉塞や腸管穿孔のリスクあり。
  • ビタミンA・D・E・Kや葉酸の吸収を妨げる可能性あり。長期使用では欠乏に注意。
  • シプロフロキサシンや甲状腺ホルモン製剤との併用は吸収阻害により作用減弱の可能性。服用間隔をあける。

処方監査

  • 透析中の患者か確認。
  • 他のリン吸着薬との重複確認。
  • 便秘や消化管疾患(潰瘍、憩室、手術歴など)の有無。
  • 併用薬(シプロフロキサシン、レボチロキシン等)の有無。

自動車の運転

中枢神経系への作用はなく、特別な制限は記載なし。

服薬指導(患者に説明するべきこと)

  • 必ず食直前に服用すること。
  • かみ砕かずに水で飲むこと。
  • 飲み忘れ時の対応(食事中・直後なら服用、次回へ持ち越し可)。
  • 便秘や腹痛が出た場合は早めに医師・薬剤師に相談。
  • 他の薬との飲み合わせに注意が必要な場合がある。

次回モニタリング項目

  • 血清リン濃度、血清カルシウム濃度
  • 排便状況(便秘・腹部症状)
  • 脂溶性ビタミン・葉酸の欠乏症状の有無

一包化・粉砕は可能か?

  • 一包化不可(高吸湿性のため)
  • 粉砕不可(膨潤により誤嚥や腸閉塞のリスク)

まとめ

フォスブロック錠250mgは、透析患者の高リン血症治療薬で、食直前の服用が必須です。体内には吸収されず、消化管内でリンを排出します。便秘や腸閉塞などの消化器症状に注意しながら、適切に使用することが重要です。

薬剤師の視点から

フォスブロック錠250mgは、私自身、臨床の場で扱うときに「便利な一方で悩ましい薬」だと感じています。

まず、この薬は適応が透析中の慢性腎不全に限定されているため、どうしても使用患者が限られます。他のリン吸着薬(リオナ、キックリン、ホスレノール)はCKD全般に使えるので、その点で差は大きく、施設によってはデッドストックになりやすいのが実情です。

次に、錠剤の大きさと服用錠数はやはり課題だと思います。1回4〜8錠、最大36錠は透析患者さんの多剤併用を考えると大きな負担です。しかも本剤は吸湿性が強く、水分を含むと膨張するため直前粉砕も推奨できません。分包もできないので、「どうにか飲みやすくしてあげたい」と思っても工夫の余地が少ないのが現場としてつらいところです。

ただし、カルシウムを含まないリン吸着薬である点は大きな強みです。高Ca血症を避けたい患者さんには第一選択になり得ますし、腸管でのみ作用するシンプルさには安心感があります。

参考文献

  • フォスブロック錠250mg 添付文書(協和キリン株式会社, 2020年改訂)
  • フォスブロック錠250mg インタビューフォーム(協和キリン株式会社)
  • フォスブロック錠「よくあるQ&A」協和キリン株式会社(2023年更新)

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次