プレベナー20とキャップバックスの違いと選び方を薬剤師が解説【肺炎球菌ワクチン】

プレベナー20とキャップバックスの違いと選び方を薬剤師が解説
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プレベナー20とキャップバックスは、どちらも高齢者やリスクの高い人に使う結合型の肺炎球菌ワクチンです。2026年4月に高齢者の定期接種で使うワクチンが切り替わったことで、公費で打てるのはどれか、含まれる血清型はどう違うのか、どちらを選べばよいのかが分かりにくくなりました。

この記事では、ワクチンの仕組みの違い、血清型とカバー率、比較試験で示された内容、接種回数の考え方、年齢や接種歴による選び方までを扱います。合同委員会の「考え方」第8版、厚生労働省の審議会資料とQ&A、両剤の添付文書とインタビューフォームをもとにまとめています。

この記事でわかること
  • プレベナー20とキャップバックスの血清型とカバー率の違い
  • 莢膜ポリサッカライドワクチンと結合型ワクチンの仕組みの違い
  • 比較試験で示されたことと、示されていないこと
  • 年齢・接種歴・持病による選び方と接種回数の考え方
目次

プレベナー20とキャップバックスの違いを先に整理する

どちらも「結合型肺炎球菌ワクチン(PCV)」という同じグループの不活化ワクチンです。肺炎球菌の表面をおおう莢膜(きょうまく)の糖に、タンパク質をつないで免疫がつきやすくした製剤を指します。

同じグループなので、1回0.5mLを筋肉内に注射するという打ち方も共通しています。それでも、実際に選ぶ段階では次の3点が大きく分かれます。

  • 2026年度の定期接種(公費)で使えるのはプレベナー20だけ。キャップバックスは全額自費
  • 含まれる血清型(肺炎球菌の型)の顔ぶれが違い、日本のデータでのカバー率はキャップバックスのほうが高い
  • プレベナー20は小児にも使えるが、キャップバックスは現時点で成人だけ

まず両剤の基本情報を並べます。細かい項目まで入れているので、必要なところだけ拾って読んでも構いません。

項目プレベナー20水性懸濁注キャップバックス筋注シリンジ
種類沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)21価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV21)
製造販売元ファイザー株式会社MSD株式会社
承認・販売開始承認番号30600AMX00115/2024年8月販売開始2025年8月8日承認/2025年10月販売開始
含まれる血清型20種類21種類(うち他のワクチンに入っていない型が8種類)
効能・効果の対象高齢者またはリスクの高い者+小児(侵襲性感染症の予防)高齢者またはリスクの高い成人のみ
用法・接種経路6歳以上は1回0.5mLを筋肉内注射(6歳未満のリスク者は皮下または筋肉内)1回0.5mLを筋肉内注射のみ
アジュバントリン酸アルミニウムに吸着無添加
キャリアタンパク質CRM197 約51μgCRM197 約65μg
2026年度の定期接種使える(定期接種で使えるのはこの1剤のみ)使えない(任意接種)
保険給付対象外(薬価基準未収載)対象外(薬価基準未収載)
費用定期接種の自己負担額は市区町村ごとに異なる全額自費。金額は医療機関ごとに異なる
貯法・有効期間2〜8℃/2年2〜8℃・凍結を避ける/製造日から30箇月

定期接種(公費)で使えるのはプレベナー20だけ

2026年4月1日から、高齢者の肺炎球菌ワクチンの定期接種に使うワクチンがニューモバックスNP(PPSV23)からプレベナー20(PCV20)に切り替わりました。PPSV23は23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンの略で、糖だけでできた従来型のワクチンを指します。

厚生労働省の「高齢者の肺炎球菌ワクチン」のQ&A(2026年2月20日版)は、この点をはっきり書いています。「2026年4月以降の定期接種に用いるワクチンは沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)のみであり、その他のワクチンは定期接種としては使用できません」という記載です。

つまり、キャップバックス(PCV21)もニューモバックスNP(PPSV23)もバクニュバンス(PCV15)も、公費の枠では選べません。定期接種の対象者がキャップバックスを希望する場合、公費助成を使わずに全額自費で接種することになります。

血清型のカバーが広いのはキャップバックス。ただし全額自費

肺炎球菌は莢膜の糖の構造によって多数の「血清型」に分かれ、ワクチンは型ごとに免疫をつけます。含まれていない型には効果が期待できないため、どの型が入っているかが効果の範囲を決めます。

厚生労働省研究班による成人の侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)のサーベイランスでは、65歳以上のIPD原因菌のうちワクチンが含む型の割合が算出されています。IPDとは、髄膜炎や菌血症のように本来は菌がいないはずの部位から肺炎球菌が検出される重い感染症のことです。

2022〜2024年の値は、PCV20が50%、PCV21が78%でした。差は28ポイントあり、範囲の広さではキャップバックスが上回ります。

ただし、この数字だけで結論は出ません。キャップバックスは任意接種で全額自費になるうえ、プレベナー20にあってキャップバックスにない型が65歳以上でまだ7%残っています。この点は後の章で数字とともに扱います。

どちらも「1回打てば一生安心」とは公的資料に書かれていない

結合型ワクチンは免疫記憶が残るため、「1回で終わり」と説明されることがあります。しかし、日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会の合同委員会がまとめた「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方」(第8版)の記載は、その言い方とは一致しません。

第8版(2026年4月1日)の図の注記には、次のように書かれています。

「PCV20およびPCV21接種後のワクチン効果の持続は5年程度と考えられるため、免疫原性の観点からはPCV20あるいはPCV21接種後5年以降の再接種が必要と考えられる。しかしながら、現時点でPCV20およびPCV21接種後の再接種の免疫原性、安全性のデータはない。」

つまり、「効果は5年程度と考えられる」と「再接種のデータはない」が同時に書かれている状態です。「一生効くから1回で終わり」とは書かれていません。定期接種の回数が1人1回であることは制度上の助成回数の話で、医学的に生涯1回で十分だと確定したという意味ではありません。

制度も推奨も改定されます。この記事は2026年8月時点の公的情報に基づいています。接種の可否・費用・対象は、居住地の市区町村と接種を受ける医療機関で確認するよう患者に案内してください。

莢膜ポリサッカライドワクチンと結合型ワクチンは、そもそも何が違うのか

プレベナー20とキャップバックスの違いを読み解く前に、その一段上の分類を押さえておくと理解が早くなります。肺炎球菌ワクチンは、糖だけでできた莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV)と、その糖にタンパク質をつないだ結合型ワクチン(PCV)に分かれます。

多糖体だけのワクチン(PPSV23)はT細胞の助けを借りずに抗体をつくる

肺炎球菌は莢膜というカプセルをまとっており、これが白血球による貪食(どんしょく。菌を取り込んで処理する働き)から菌を守っています。莢膜の糖に対する抗体ができると、菌が白血球に食べられやすくなり、感染が防がれます。

ニューモバックスNPの添付文書は、その仕組みをこう説明しています。「細菌莢膜血清型ポリサッカライドは、主にT細胞非依存性メカニズムによって抗体を誘発する。そのため、ほとんどの肺炎球菌莢膜血清型に対する抗体応答は、免疫系が未熟な2歳未満の幼児では一般に乏しいか又は不安定である。」

T細胞非依存性とは、免疫の司令塔であるヘルパーT細胞の助けを借りずにB細胞が抗体をつくる経路のことです。手早く抗体は上がりますが、免疫記憶が残りにくく、追加接種でブースター効果が得にくいという弱点があります。防御抗体レベルの上昇は接種後第3週までに生じるとされています。

キャリアタンパクにつなぐと、記憶B細胞ができる

結合型ワクチンは、この弱点を製剤の設計で解決したものです。キャップバックスの添付文書には、次のように記載されています。

「本剤は、それぞれがキャリアタンパク質(CRM197)と結合した血清型特異的な肺炎球菌莢膜ポリサッカライドを含有しており、肺炎球菌のオプソニン化、貪食及び殺菌を促進する抗体を誘導して肺炎球菌による疾患を予防する。本剤はT細胞依存性免疫応答を誘導する。キャリアタンパク質特異的ヘルパーT細胞は、血清型特異的B細胞の特異性、機能性及び成熟並びに記憶B細胞の誘導に寄与する。」

CRM197は、ジフテリア毒素の毒性をなくした変異タンパク質です。糖をこのタンパク質につなぐことでヘルパーT細胞が反応できるようになり、B細胞の成熟と記憶B細胞の誘導が起こります。オプソニン化とは、抗体が菌の表面に付いて白血球に食べられやすくする働きのことです。

つまり、同じ糖を使っていても、タンパク質につないだかどうかで免疫のつき方の質が変わります。厚生労働省が定期接種のワクチン変更の理由として「PCVの方がPPSVよりも高い有効性が期待でき」と説明しているのは、この機序の差を指しています。

なお、製剤の設計にはもう一つ違いがあります。プレベナー20は「免疫原性を高めるためにアジュバントであるリン酸アルミニウムに吸着させて不溶性とした不活化ワクチン」です。アジュバントとは免疫の反応を強めるための添加物を指します。キャップバックスはアジュバント無添加のPCVとされています。

この違いは取り扱いにも表れます。プレベナー20は懸濁液のため使用直前によく振り混ぜる必要があり、キャップバックスは無色で澄明から乳白光を呈する液で、振り混ぜの指示はありません。

記憶B細胞ができることと「効果が一生続くこと」は同じではない

ここで注意したいのが、機序の話をそのまま持続期間の話に延長しないことです。記憶B細胞が誘導されることと、実際の予防効果が生涯続くことは別の問題になります。

厚生労働省のワクチン評価に関する小委員会は、PCV13についてこう評価しています。「ワクチンの有効性は少なくとも4〜5年間持続し、有効性は高齢になるほど低下すると報告されている」。持続期間に上限があることは、公的な評価の側でも前提になっています。

「結合型だから記憶が残る、だから一生効く」という説明は、この一次情報とは整合しません。この点は後の「何回打つのか」の章でさらに詳しく扱います。

なぜ「成人専用」のワクチンが必要になったのか(血清型置換のはなし)

血清型とは何か、なぜ型ごとにワクチンをつくるのか

血清型は、肺炎球菌の莢膜を構成する糖の構造の違いによる分類です。同じ肺炎球菌でも型が違えば糖の形が違うため、ある型に対してできた抗体は他の型には効きません。

そのため肺炎球菌ワクチンは、多くの型の糖を1本に混ぜる形で作られます。ワクチン名の前に付く「20価」「21価」「23価」という数字は、含まれている血清型の数を表しています。

つまり、どの型が入っているかがそのワクチンの守備範囲を決めます。そして肺炎球菌の型の分布は時代とともに変わるため、守備範囲の意味も一定ではありません。

子どもへの定期接種が、大人の肺炎球菌の顔ぶれを変えた

日本の小児用肺炎球菌ワクチンは、2010年11月にPCV7が基金事業として導入され、2013年4月に定期接種化、同年11月にPCV13へ切り替わりました。その後2024年4月にPCV15、2024年10月にPCV20へと変わっています。

子どもに結合型ワクチンが行き渡ると、子どもの鼻やのどに住みつく肺炎球菌が減り、周囲の大人へうつる菌も減ります。この現象を間接効果と呼びます。

合同委員会の第8版は「PCV7が小児定期接種ワクチンに導入されて以降、その間接効果として成人におけるPCV7血清型のIPD症例の報告数が減少している」と記載しています。

ところが、ワクチンに含まれない型が空いた席に入り込みます。これが血清型置換(serotype replacement)です。第8版は「小児定期接種ワクチンのPCV13への切り替え後に発生した血清型置換により、65歳以上の非ワクチン血清型によるIPD症例の増加が顕著になっている」と述べています。

つまり、大人の肺炎球菌感染症を起こす型の顔ぶれは、子どものワクチン政策によって書き換えられてきました。従来の大人用ワクチンの守備範囲が相対的に狭くなったのは、この変化の結果です。

大人に残った型を狙って設計されたのがキャップバックス

キャップバックスのインタビューフォームは、開発の経緯をこう説明しています。成人では既存のPCVに含まれない15A・23A・35Bといった血清型が多く分離されており、小児へのPCV導入後の成人の疫学に基づいたワクチンの開発が求められた、という流れです。

第8版も同じ位置づけを示しています。「小児肺炎球菌ワクチンプログラムが成熟した国々における成人のIPDおよび肺炎の予防を目的としてPCV21が開発された」という記載です。

ここに、両剤の性格の違いが表れます。プレベナー20は小児と成人の両方を守備範囲に持つワクチンで、キャップバックスは成人に残った型を狙って設計されたワクチンです。血清型の顔ぶれが違うのは、設計の目的が違うからだと考えると理解しやすくなります。

この戦略は小児の接種率に支えられています。審議会でも「この疫学的な血清置換の戦略に乗るためには、しっかりと高い接種率を小児で実現することで、初めて、より効果的な高齢者でのカバーを広げた接種戦略が成立する」という指摘が出ています。

血清型とカバー率はどこがどう違うのか

共通する10種類、プレベナー20だけの10種類、キャップバックスだけの11種類

両剤に含まれる血清型を並べます。数が多いので、まず全リストを示し、そのあとで重なりと差を整理します。

  • プレベナー20(20血清型):1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F、33F
  • キャップバックス(21血清型):3、6A、7F、8、9N、10A、11A、12F、15A、15BのO-脱アセチル化体(=15C)、16F、17F、19A、20A、22F、23A、23B、24F、31、33F、35B

重なりと差は次のとおりです。

区分血清型
両剤に共通10種類3、6A、7F、8、10A、11A、12F、19A、22F、33F
プレベナー20だけ10種類1、4、5、6B、9V、14、15B、18C、19F、23F
キャップバックスだけ11種類9N、15A、15C、16F、17F、20A、23A、23B、24F、31、35B

プレベナー20にしかない10種類のうち、4・6B・9V・14・18C・19F・23Fの7種類は、最初の小児用結合型ワクチンであるPCV7に含まれていた型です。ここに血清型1と5、15Bが加わった構成になります。

合同委員会の第8版は、この点を「PCV21はPCV7血清型に加えて血清型1、5に対する免疫原性を欠いている」と表現しています。抜けているのは偶然ではなく、成人の疫学に合わせて型を入れ替えた結果です。

なお、キャップバックスが含むのは15Bそのものではなく「15BのO-脱アセチル化体」です。これは血清型15Cと構造が近く、15Cに対する免疫を誘導します。15Bに対しても交差反応性があり、免疫原性でPPSV23に対する非劣性が示されています。

キャップバックスだけが持つ8種類と、ペニシリンが効きにくい型の関係

キャップバックスの11種類のうち、他のどの肺炎球菌ワクチンにも入っていないのは8種類です。15A、15C、16F、23A、23B、24F、31、35Bがそれにあたります。残る9N・17F・20Aの3種類は、ニューモバックスNP(PPSV23)にも含まれています。

この8種類のなかに、薬剤耐性の観点で注目される型が含まれます。国内の髄膜炎由来株404株(2013〜2024年)のうち、ペニシリンG耐性(MIC 0.12µg/mL以上)は156株、38.6%でした。MICは最小発育阻止濃度のことで、その値以上でないと菌の増殖を抑えられないという指標です。

耐性株の血清型分布を見ると、23Aが47%、15Aが19%、35Bが13%を占めていました。いずれもキャップバックスにのみ含まれる型です。

つまり、ペニシリンが効きにくい型が、キャップバックス固有の血清型に偏っています。治療の選択肢が狭まりやすい菌をワクチンで防げるかどうかという観点は、AWaRe分類による抗菌薬の整理を含め、抗菌薬の適正使用に関わる立場からも意味のある論点です。

日本のデータでのカバー率(2022〜2024年で PCV20 50%/PCV21 78%)

厚生労働省研究班による成人IPDサーベイランス(2013〜2024年、原因菌3,034株)から、65歳以上のIPD原因菌に占める各ワクチン含有血清型の割合が算出されています。3年ごとの推移は次のとおりです。

ワクチン2013〜15年2016〜18年2019〜21年2022〜24年
PCV15(バクニュバンス)55%36%32%35%
PCV20(プレベナー20)69%64%53%50%
PPSV23(ニューモバックスNP)68%64%53%51%
PCV21(キャップバックス)79%79%75%78%

PCV21以外は、小児へのPCV13定期接種導入後の間接効果に伴って低下しています。PCV21だけが全期間を通じて約80%で大きく動いていません。

ここで注意したい数字があります。「PCV20は成人IPDの約7割をカバーする」という説明を見かけますが、その約7割は2013〜2015年の69%にあたる値です。2022〜2024年は50%まで下がっています。

厚生労働省の患者向けページも現在は「この20種類の血清型は、成人侵襲性肺炎球菌感染症の原因の約5〜6割を占めるという研究結果があります」と記載しています。

肺炎球菌性肺炎に限った数字もあります。2019〜2022年の多施設観察研究では、65歳以上でPCV15が28.2%、PCV20が42.8%、PPSV23が42.6%、PCV21が72.3%でした。IPDと同じくPCV21が他より約30ポイント高い結果です。

海外の65歳以上のIPDでのカバー率も報告されています。

国(データの年)PCV21PCV20
米国(2022年)84%50%
カナダ(2022年)78%57%
英国(2019年)88%61%
ドイツ(2022年)85%66%
フランス(2019年)83%57%
スペイン(2022年)84%65%
オーストラリア(2022年)66%50%

ただし、これらの海外データは各国の小児ワクチン政策と流行状況を反映したものです。日本の定期接種の対象年齢や使用ワクチンとは制度が異なるため、そのまま国内の判断材料にはできません。

「カバー率」は「その割合を予防できる」という意味ではない

78%という数字を見ると、78%の感染を防げると読みたくなります。しかしカバー率が示しているのは、原因菌の血清型のうちワクチンに含まれる型が占める割合であって、予防できる割合ではありません。

厚生労働省のワクチン評価に関する小委員会(2026年2月26日)でも、参考人から「『予防される血清型の割合』ではなく『カバーされる血清型の割合』と記載したほうがよい。必ずしも予防効果があるわけではない」という指摘が出ており、事務局が表記の検討を回答しています。

実際の予防効果は、カバー率にワクチンの有効性を掛け合わせた形で現れます。厚生労働省の患者向けページも「PCV20は、血清型に依らない侵襲性肺炎球菌感染症全体の3〜4割程度を予防する効果があるという研究結果があります」と、カバー率とは別の数字を示しています。

つまり、カバー率は守備範囲の広さを示す指標であって、そのまま予防率として患者に伝えると過大な期待を持たせることになります。説明の場面では、この2つを分けて話す必要があります。

効果を比べた試験では、実際に何が示されたのか

キャップバックスとプレベナー20を直接比べた試験(STRIDE-3)

両剤を直接比べた試験がSTRIDE-3(海外第Ⅲ相003試験)です。肺炎球菌ワクチンの接種歴がない50歳以上の成人2,362例と18〜49歳の成人301例を無作為に割り付け、PCV21またはPCV20を1回筋注した二重盲検比較試験になります。

評価に使われたのはGMT(幾何平均抗体価)とOPA応答率です。GMTは抗体価の平均を対数目盛でならした値、OPA(オプソニン化貪食活性)は抗体が実際に菌を食べさせる力を測る指標を指します。

判定に使う言葉も先に整理します。非劣性は「対照より明らかに劣ってはいない」ことを示す判定、優越性は「対照より上回る」ことを示す判定です。どこまでの差なら許容するかを事前に基準として決めておき、信頼区間がその線を越えたかどうかで判断します。

結果は次のとおりです。両剤に共通する10血清型では、PCV21がPCV20に対する非劣性基準(GMT比の両側95%信頼区間の下限が0.5超)を満たしました。非共通の11血清型では、10血清型で優越性基準(GMT比の両側95%信頼区間の下限が2.0超)を満たしています。

基準に届かなかったのは血清型15Cで、GMT比の95%信頼区間の下限は1.77でした。OPA応答率でも、11血清型のうち10血清型で優越性基準(群間差の95%信頼区間の下限が10超)を満たし、15Cは下限5.6%で届いていません。

差が大きかった血清型のGMT比は、24Fが38.71倍、31が21.69倍、17Fが16.86倍、23Bが10.09倍、20Aが9.66倍、23Aが8.10倍、35Bが6.17倍、16Fが5.75倍、9Nが4.55倍、15Aが3.30倍でした。

安全性については、第8版が「本剤接種とPCV20接種後の安全性プロフィールには明らかな差異は認められなかった」としています。

日本人を対象にキャップバックスとニューモバックスを比べた試験(STRIDE-9)

国内データはSTRIDE-9(国内第Ⅲ相009試験)です。肺炎球菌ワクチンの接種歴がない65歳以上の日本人450例を無作為に割り付け、PCV21またはPPSV23を1回筋注した二重盲検比較試験になります。

12の共通血清型と血清型15BでPPSV23に対する非劣性基準(GMT比95%信頼区間の下限が0.5超)を満たし、非共通血清型の15Cでは優越性基準(下限1.0超)を満たしました。15CのGMT比は2.05です。

8つの非共通血清型(6A、15A、16F、23A、23B、24F、31、35B)のOPA応答率でも、PPSV23に対する優越性が示されています。差が大きいのは31で57.3ポイント、35Bで47.0ポイント、16Fと23Bがともに38.3ポイントでした。

読むうえで押さえておきたいのは、この試験ではPPSV23も筋注で投与されている点です。実臨床のPPSV23は皮下で接種されることも多く、副反応の出方が試験と一致しない可能性があります。

示されたのは「抗体の高さ」であって「肺炎がどれだけ減ったか」ではない

ここが、この記事でいちばん誤解を招きやすい部分です。STRIDE-3もSTRIDE-9も、評価しているのは免疫原性、つまり接種後にどれだけ抗体が上がったかになります。

肺炎や重症化がどれだけ減ったかを比べた試験ではありません。厚生労働省のワクチン評価に関する小委員会でも「PCV13を除いて、直接的な臨床での有効性データというものはございません」と明言されています。

つまり、「キャップバックスのほうが抗体が高く上がった」ことは示されていますが、「キャップバックスのほうが肺炎を多く防いだ」ことは示されていません。抗体価が高いほど臨床効果も高いという関係は一般に期待されるものの、この試験だけで結論づけることはできない、という読み方になります。

プレベナー20の臨床的な効果は、PCV13の知見を準用して評価されている

この事情はプレベナー20も同じです。国内の承認根拠となった国際共同第Ⅲ相試験(B7471009試験、日本・韓国・台湾)は60歳以上1,425例を対象にPCV13との免疫原性を比較したもので、発症予防を検証した試験ではありません。

厚生労働省のワクチン小委員会は、この点をこうまとめています。「PCV15及びPCV20について、現時点では臨床的な有効性を評価した知見はないものの、PCV13と比較して非劣性もしくは十分な免疫応答が確認されていることから、カバーする血清型のIPD及び肺炎球菌感染症に対する臨床的な有効性について、PCV13の知見を準用することは妥当である」。

準用元となるPCV13の臨床データがCAPiTA試験です。オランダで65歳以上を対象に行われたプラセボ対照二重盲検試験で、ワクチン血清型による市中肺炎を45.6%、菌血症を伴わない市中肺炎を45.0%、ワクチン血清型によるIPDを75.0%予防しました。

PCV20自体の実地データもあります。米国メディケア1,650万人を対象とした後ろ向きコホート研究では、PCV20接種によるすべてのIPDと肺炎に対するワクチン有効性はそれぞれ25.6%と15.2%でした。

10万人年あたりIPDが12.0エピソード、全肺炎が758.0エピソード減少し、最も大きな減少は85歳以上と免疫不全状態で確認されています。

つまり、プレベナー20は「臨床エンドポイントの直接データはないが、PCV13の実績を引き継ぐ形で評価されている」ワクチンです。この評価の枠組みを知っておくと、2剤の比較の限界も見えてきます。

年齢が上がるほど、同じワクチンでも効果は下がる

どちらを選ぶかと同じくらい、いつ打つかも効果に関わります。CAPiTA試験の事後解析では「65歳時点でのPCV13接種後のワクチン血清型の市中肺炎あるいはIPDに対する予防効果は65%であったが、75歳時点での接種では予防効果が40%に低下する」とされています。

PCV20の米国リアルワールド研究(IDWeek 2025発表)でも同じ傾向が出ています。IPDに対する有効性は65〜74歳で35.4%(95%信頼区間 22.6-46.0)、75〜84歳で24.0%(10.7-35.3)、85歳以上で16.6%(-1.4-31.4)でした。

すべての原因の肺炎に対する有効性も、それぞれ20.2%、15.9%、12.5%と下がっていきます。

ただし、このIDWeek発表分については厚生労働省の資料自身が「ポスター発表であり査読を受けた論文ではない」と注記しています。数字は一段割り引いて扱うのが妥当です。

費用対効果もこの傾向を反映しています。研究班の分析では、PCV20接種の増分費用効果比(ICER。1年分の完全な健康を追加で得るのにかかる費用)は65歳で116.0万円/QALY、70歳で191.2万円、75歳で931.0万円、80歳で1,189.6万円でした。

つまり、75歳を過ぎると費用対効果は急に悪化します。定期接種の対象が65歳に置かれているのは、この年齢による効果の減弱を踏まえた設計です。接種をためらっている人に「いずれ打つつもりなら早いほうが効果は高い」と伝える根拠にもなります。

カバー率が高いほうが常に優れている、とは言い切れない理由

プレベナー20にあってキャップバックスにない血清型が、65歳以上でまだ7%残っている

血清型の一覧で見たPCV7血清型(4、6B、9V、14、18C、19F、23F)は、プレベナー20には入っていてキャップバックスには入っていません。小児への結合型ワクチン導入によって大きく減った型ですが、ゼロにはなっていません。

65歳以上のIPD症例に占めるPCV7血清型の割合は、米国で4%、日本で7%と報告されています。

厚生労働省の小委員会(2026年2月26日)の事務局資料も「PCV20がカバーし、PCV21がカバーしない血清型の割合は2014年以降低下傾向にあるものの、2023年から2024年においても65歳以上では7%認められる」と説明しています。

つまり、キャップバックスを選ぶと、この7%分は守備範囲から外れます。カバー率78%対50%という差の裏側で、逆向きの取りこぼしも生じている、という構図です。

海外で流行が報告されている血清型4が、日本に入ってくる可能性

この7%のなかで、特に注目されているのが血清型4です。同じ小委員会で参考人からこう指摘されています。

「特に注目されているのは血清型4でして、これが海外ではカナダとかアメリカ・コロラド州とか、あるいはスペインのアンダルシア地方とか、そういったところで一定の流行があることが分かっています」。

続けて「高い侵襲性ポテンシャルを持った血清型が一旦国内に入ると、日本国内でも血清型4が広がる可能性は否定できない。サーベイランスを行うことで、PCV20は今後も有用になるのではないか」という見方も示されました。侵襲性ポテンシャルとは、感染したときに重い病気を起こしやすい性質のことです。

委員からも「将来的にPCV20と21の両方が利用可能になったほうがいいのか」「地域によって血清型が変わってくる場合に使い分けができたほうがいいか」という議論が出ています。両剤は上位互換の関係ではなく、守備範囲の異なる選択肢として並んでいる、というのが現在の位置づけです。

共通する血清型の一部では、プレベナー20のほうが抗体価が高かった

STRIDE-3の結果をさらに細かく見ると、共通10血清型のGMT比のうち、6Aが0.77、10Aが0.83、19Aが0.76、22Fが0.81と、いずれも95%信頼区間の上限が1未満でした。この4つの型では、PCV21よりPCV20のほうが高い抗体価だったことになります。

この点は審議会でも委員から指摘され、企業側は「低いかどうかに関しましては、そういった検証はしていない」「非劣性検証というところで御理解いただければ」と回答しています。試験の設計上、劣っていると結論づけることもできない、という意味です。

つまり、キャップバックスは非共通の型で大きく上回る一方、共通の型では一部でプレベナー20を下回る値が出ています。「新しいほうが全面的に優れている」という単純な図式には収まりません。患者から「どちらが優れているのか」と聞かれたときは、この非対称性まで含めて説明すると誤解が生じにくくなります。

副反応は違うのか。接種前後に確認しておくこと

それぞれの添付文書に載っている発現頻度

まず、それぞれの添付文書に記載されている副反応を挙げます。プレベナー20の高齢者・リスク者への接種では、10%以上の頻度で注射部位の疼痛と圧痛が59.6%、筋肉痛が38.2%、疲労が30.3%、頭痛が21.7%、関節痛が11.6%と記載されています。

1〜10%未満では紅斑と腫脹が挙がっています。重大な副反応としては、ショック・アナフィラキシーと血小板減少性紫斑病が頻度不明、痙攣(熱性痙攣を含む)が0.1%と記載されています。

キャップバックスでは、10%以上で注射部位疼痛が36.0%、疲労が挙げられています。1〜10%未満は注射部位紅斑、注射部位腫脹、38℃以上の発熱で、頭痛と筋肉痛の記載もあります。重大な副反応はショックとアナフィラキシーで、いずれも頻度不明です。

国内のSTRIDE-9では、PCV21接種後の注射部位有害事象が32.9%(74/225例)、全身性有害事象が17.3%(39/225例)でした。38.0℃以上の発熱は0%(0/225例)です。

また添付文書には、18〜64歳の成人では65歳以上の成人よりも報告された副反応が多かったとの注記もあります。

この2つの数字を並べて優劣を語れない理由

59.6%と36.0%を並べると、キャップバックスのほうが痛くないと言いたくなります。しかし、この2つは集計元の試験も評価方法も違うため、単純に比べられません。

PCV21の頻度は国内009試験・海外003試験・国際共同008試験の統合結果に基づいています。一方PCV20の頻度は、国際共同B7471009試験と海外B7471007試験を合算し、電子日誌で収集したものです。集め方が違えば、拾われる症状の数も変わります。

直接比較として使えるのは、同一試験内で両剤を比べた記述だけです。審議会ではSTRIDE-3について「事前に規定した注射部位疼痛の発現割合はPCV21群で低く、それ以外の発現割合は概して同程度でした。重篤な副反応の発現は認められておりません」と説明されています。

STRIDE-9でも「注射部位の疼痛の発現割合に関しましては、PCV21群で低い傾向が認められました」とされています。つまり、同じ試験の中で比べた範囲では注射部位の痛みはPCV21で少なめだった、というところまでが言える内容です。

安全性の話題としてもう一つ。2023年に米国のワクチン有害事象報告システム(VAERS)でPCV20接種後のギラン・バレー症候群が11症例報告され、データマイニングで注目されました。

2024年10月時点の米国予防接種諮問委員会(ACIP)の評価では、ワクチン接種によるリスクはminimal(ごくわずか)と判断され、成人へのPCV20の推奨に変更はありません。診療記録で確認された症例はなく、すべて請求データ上の検出でした。

接種を受けられない人・注意が必要な人

禁忌(接種不適当者)は両剤で同様です。本剤の成分またはジフテリアトキソイド(ジフテリア毒素を無毒化したもの)に対してアナフィラキシーや重度のアレルギー反応を呈したことがある者、明らかな発熱がある者、重篤な急性疾患にかかっている者、その他予防接種を行うことが不適当な状態にある者が該当します。

接種要注意者として挙げられているのは次のような人です。

  • 免疫不全の診断がされている者、近親者に先天性免疫不全症の者がいる者
  • 心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患等の基礎疾患を有する者
  • 接種後2日以内に発熱がみられた者、全身性発疹などアレルギーを疑う症状を呈したことがある者
  • 痙攣の既往のある者
  • ジフテリアトキソイドに対してアレルギーを呈するおそれのある者
  • 血小板減少症や凝固障害のある者、抗凝固療法を受けている者(筋肉内注射部位の出血のおそれ)

問診で取りこぼしやすいのが最後の項目です。ただ、添付文書に書かれているのは「筋肉内注射部位の出血のおそれがある」という一文だけで、なぜ問題になるのかまでは書かれていません。理由は2つあり、患者側の止血のしにくさと、筋肉内注射という経路が重なることにあります。

まず患者側です。この項目には3つの状態が並んでいますが、共通点は1つで、どれも血が止まりにくいということです。

けがをして出血が止まるまでには、2つの段階があります。最初に血小板が傷口に集まってふたをする一次止血、続いて凝固因子が働き、フィブリンという線維でそのふたを補強して固める二次止血です。どちらが欠けても、いったん止まったように見えて後から出血してきます。

3つの状態は、この2段階のどこかが欠けています。血小板減少症は、ふたを作る血小板そのものが足りない状態です。凝固障害は、血友病のように二次止血を担う凝固因子が足りない状態です。そして抗凝固療法は、ワルファリンやDOAC(直接経口抗凝固薬)で凝固因子の働きを薬によって意図的に抑えている状態にあたります。

つまり抗凝固薬を飲んでいる人は、病気ではなく治療によって二次止血が弱められています。血栓を防ぐという目的からすればそれが狙いどおりなのですが、血が止まりにくいという結果は凝固障害のある人と変わりません。だから同じ項目に並んでいます。

なお添付文書が挙げているのは抗凝固療法ですが、アスピリンやクロピドグレルなどの抗血小板薬は、二次止血ではなく一次止血のほうを抑えます。日本血栓止血学会誌の総説は抗血小板薬にも触れており、どちらも筋肉内接種の禁忌にはならないとしています。

ここに、もう1つの理由である接種経路が重なります。

筋肉は皮下組織より深い層にあり、血流も豊富です。そのため皮下注射に比べて出血が止まりにくく、注射部位に血腫(皮下や筋肉内に血がたまったしこり)ができることがあります。日本血栓止血学会誌の総説(2022年)も、ワクチンの筋肉内接種は皮下接種と比べて出血リスクが高いと述べています。

日本のワクチンは長く皮下接種が原則だったため、この注意は現場で意識されにくい部分です。同じ総説は、近年登場した筋肉内接種のみのワクチンとして成人の肺炎球菌結合型ワクチンを名指ししています。プレベナー20とキャップバックスは、まさにこれに当たります。

整理すると、もともと血が止まりにくい人が、皮下より止血しにくい経路で注射を受けることになります。この2つが掛け合わさるため、単独ならほとんど問題にならない注射部位の出血が、血腫として残りうる。これが、この3つが接種要注意者に挙げられている理由です。

禁忌ではない。打てないわけではないという点が大事

ここを取り違えないことが実務では重要です。この項目は接種要注意者であって、禁忌ではありません。同総説は「抗血小板薬や抗凝固薬内服中の患者でも、ワクチンの筋肉内接種の禁忌とはならない」と明記しています。

ワルファリンを服用している場合については、接種前72時間以内にプロトロンビン時間(PT。血液が固まるまでの時間を見る検査)を測定し、過延長がなくPT-INRが治療域にあれば筋肉内接種が可能とされています。DOAC(直接経口抗凝固薬)でも同様に接種可能と考えられる、と述べられています。

出血性疾患がある人への具体的な手当てとしては、国際的な合同ガイダンス(WFHなど4団体、2020年12月22日)を引く形で次の3点が挙げられています。なお、これは出血性疾患のある人がCOVID-19ワクチンを接種する場面の推奨として示されたものです。

  • 可能な限り細い針(25〜27ゲージ)を使う
  • 接種部位を10分以上しっかり圧迫する(可能なら冷却も)
  • 遅発性の血腫を見逃さないよう、接種の数分後と2〜4時間後に接種部位を自分で見て触って確認してもらう

血小板が減る病気については、血小板数が2万/μL未満あるいは3万/μL未満で筋肉内接種後の出血リスクがあるとされ、患者への十分な説明と接種後の長めの観察が推奨されています。

つまり、抗凝固薬を飲んでいるから打てない、という話ではありません。ワクチンのために抗凝固薬を止めるかどうかを含め、判断するのは主治医です。薬剤師として押さえておきたいのは、筋注と聞いて不安がる患者に禁忌ではないと正確に伝えられること、そして接種後の圧迫と血腫の観察を具体的に案内できることです。

なお免疫抑制療法中の場合は免疫反応が低下する可能性があり、接種時期の判断は主治医が行います。

接種後にこの症状が出たらすぐ医療機関へ

両剤とも重大な副反応としてショック・アナフィラキシーが記載されています。接種後に呼吸困難、蕁麻疹、まぶたや唇の腫れ、血圧低下などアナフィラキシーを疑う症状が出た場合は、直ちに医療機関を受診するよう伝えます。

接種当日の過ごし方については、添付文書に沿って次の点を案内します。過激な運動は避けること、接種部位を清潔に保つこと、局所の異常反応や体調の変化、高熱、痙攣などの異常な症状が現れた場合は速やかに医師の診察を受けることです。

肺炎球菌ワクチンは肺炎を100%防ぐものではありません。高齢者の肺炎は高熱や咳といった典型的な症状が出ないこともあります。息切れ、意識がぼんやりする、食欲が急に落ちるといった変化があれば早めに受診するよう、接種時にあわせて説明しておくと役立ちます。

「何回打つのか」「5年後にまた打つのか」に正確に答える

「5年ごとに打ち直す」はニューモバックスが唯一の選択肢だった時代の話

「肺炎球菌ワクチンは5年ごとに打ち直す」という理解は、いまも広く残っています。これはPPSV23しか選択肢がなかった時代の運用で、現在の方針とは違います。

合同委員会の第8版は、本文でこう書いています。「第7版以降、高齢者におけるPCVの利用が拡充されたことから、PPSV23接種後の同ワクチンの再接種を原則として選択肢としない。」図の注記にも「PPSV23の再接種は選択肢としない」と記載されています。

もともとPPSV23の再接種には副反応の問題もありました。添付文書には「過去5年以内に、多価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを接種されたことのある者では、本剤の接種により注射部位の疼痛、紅斑、硬結等の副反応が、初回接種よりも頻度が高く、程度が強く発現すると報告されている」とあります。

つまり、2026年4月以降にニューモバックス既接種者が検討するのは、PPSV23をもう一度打つことではなく、プレベナー20またはキャップバックスを打つことになります。「5年経ったからまたニューモバックスを」という相談を受けたら、この方針転換から説明する必要があります。

「結合型は一生効く」と言い切れない理由

結合型に切り替わったことで、今度は「1回で一生」という説明が出回るようになりました。しかし第8版(2026年4月1日)の図の注記は、次のとおりです。

「PCV20およびPCV21接種後のワクチン効果の持続は5年程度と考えられるため、免疫原性の観点からはPCV20あるいはPCV21接種後5年以降の再接種が必要と考えられる。しかしながら、現時点でPCV20およびPCV21接種後の再接種の免疫原性、安全性のデータはない。」

ここには2つのことが同時に書かれています。免疫の面からは5年以降の再接種が必要と考えられること、しかし再接種のデータがまだないことです。どちらも「〜と考えられる」「データはない」という留保のついた表現で、断定はされていません。

厚生労働省のワクチン小委員会の評価も「PCV13のワクチンの有効性は少なくとも4〜5年間持続し、有効性は高齢になるほど低下する」というものです。費用対効果モデルの設定でも「PCVについては接種後5年は維持され、15年目に効果消失」と置かれています。

つまり、現時点で正確に言えるのは「一生効く」ではなく「持続は5年程度と考えられているが、再接種をどうするかはまだ結論が出ていない」です。患者に説明するときも、この2段構えのまま伝えるほうが誠実になります。

制度としての回数は「1人1回」。これは医学的な結論とは別

定期接種の接種回数は1人1回です。ただしこれは公費で助成される回数を定めたもので、医学的に生涯1回で十分だと確定したという意味ではありません。

この2つを混同すると、「制度が1回と言っているのだから1回でよい」という誤った納得につながります。制度上の助成回数と、医学的な再接種の必要性は、別の話として整理しておくのが正確です。

前に別の肺炎球菌ワクチンを打っている場合、どれだけ間隔をあけるか

接種歴がある人については、第8版が具体的な間隔を示しています。PPSV23あるいはPCV13・PCV15・PCV20を接種した場合、接種から1年以上の間隔を置いてPCV20あるいはPCV21を接種することができる、という内容です。

図の注記でも「PCV13/PCV15/PCV20 既接種者については、安全性の観点からは1年以上の間隔で接種することができる」とされています。文末が「接種することができる」であって「接種する」ではない点は、そのまま読み取る必要があります。

つまり、1年以上あければ打てるという選択肢の提示であり、打つべきだという推奨ではありません。実際に接種するかどうかは、年齢・接種歴・持病・費用負担を踏まえて接種する医師が判断します。

年齢・接種歴・持病によって、選び方はどう変わるか

ここまでの材料を、患者の状況別に整理します。前提として、添付文書にはどちらを先に選ぶかという記載はありません。第8版もプレベナー20とキャップバックスを並列で示しており、一方を推奨する書き方はしていません。

65歳ちょうどで、肺炎球菌ワクチンを打ったことがない人

この年齢が定期接種の対象です。個別通知が届いていれば、自己負担額を払ってプレベナー20を接種できます。費用対効果の面でも、65歳での接種はICERが116.0万円/QALYで、他の年齢より良好でした。

キャップバックスを希望する場合は、定期接種の枠を使わず全額自費になります。血清型のカバーは広くなる一方、公費助成は受けられず、PCV7血清型の7%分は守備範囲から外れます。

つまり、この層では「公費で確実に1本打つ」か「費用をかけて守備範囲を広げる」かの選択になります。どちらにも根拠があり、公的にどちらか一方が推奨されている状況ではありません。

66歳以上で「対象外」と言われた人

2014年度から2023年度までの約10年間は、65歳以上100歳までの5歳刻みの年齢を対象にPPSV23の接種機会が2回にわたって提供されていました。この経過措置は2024年3月31日で終了しています。

PCV20への切り替えにあたって新たな経過措置は設けられませんでした。第71回基本方針部会の事務局案には、その理由がこう記されています。

「70歳においても費用対効果は良好である一方で、既にPPSV23の接種機会が十分に確保されていたこと、有効性は高齢になるほど低下すること及びそれらの知見を踏まえワクチン小委において第一義的には現行の65歳が適切とされたこと、自治体の事務負担の考慮、今後PCV21の議論が開始される見込みであること等を踏まえ、現時点では65歳を超える方に対する経過措置を設けないこととしてはどうか。」

ただし、これで終わりというわけでもありません。「65歳を超える年齢の者については、70歳で接種機会を設けることを軸に、今後、あらためて本部会において検討する」ともまとめられています。

つまり、現時点で66歳以上の人が接種する場合は任意接種(全額自費)で、プレベナー20とキャップバックスのどちらも選べます。将来的に70歳での接種機会が設けられる可能性はありますが、決まってはいません。

60〜64歳で、心臓・腎臓・呼吸器の障害やHIVによる免疫機能障害がある人

定期接種にはもう一つの入口があります。60歳以上65歳未満で、心臓・腎臓もしくは呼吸器の機能の障害、またはHIVによる免疫の機能の障害を有する者として厚生労働省令で定めるものが対象です。目安は身体障害者手帳1級相当になります。

この条件に当てはまれば、65歳を待たずに定期接種としてプレベナー20を接種できます。該当しそうな患者を担当している場合は、手帳の等級を確認したうえで市区町村に問い合わせるよう案内すると、機会を逃さずに済みます。

糖尿病・COPD・がん治療中など、リスクの高い持病がある人

国内の成人IPDサーベイランス(2013〜2022年)では、IPD患者2,483例のうち65歳以上が1,740例(70.0%)を占めました。そのうち基礎疾患のある患者は1,011例(58.1%)、免疫不全状態のある患者は543例(31.2%)です。

65歳以上のIPD患者の基礎疾患の内訳は、糖尿病309例(17.8%)、慢性肺疾患257例(14.8%)、アルコール依存症256例(14.7%)、慢性心疾患255例(14.7%)、慢性肝疾患70例(4.0%)でした。重複を含む集計です。COPDは慢性閉塞性肺疾患のことで、慢性肺疾患に含まれます。

免疫不全状態の内訳は、固形がん198例(11.4%)、抗がん剤治療140例(8.0%)、ステロイド療法133例(7.6%)、慢性腎疾患・透析116例(6.7%)、自己免疫性疾患97例(5.6%)が上位でした。

続いて機能的・解剖学的無脾症37例(2.1%)、免疫抑制剤治療32例(1.8%)、生物学的製剤治療17例(1.0%)、血液幹細胞移植後7例(0.4%)と並びます。

第8版は、こうした患者への接種をこう記しています。

「これらの基礎疾患を有する患者ではその重症度に応じてPCV20またはPCV21の接種、あるいはPCV15-PPSV23による連続接種を検討することが望ましい。また、免疫不全状態のある患者ではPCV20またはPCV21、あるいはPCV15-PPSV23による連続接種が推奨される。」

ここは推奨の強さが分かれる箇所です。基礎疾患のみの場合は「検討することが望ましい」、免疫不全状態がある場合は「推奨される」と書き分けられています。この差は言い換えずに伝えるべきところです。

64歳以下のハイリスク者については、合同委員会が別文書「64歳以下のハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方(第4版、2026年2月9日)」を公表しています。65歳未満の患者について検討する場合は、そちらを参照してください。

ニューモバックスを打ったことがある人

「もう打ったから終わり」と考えている人は少なくありません。第8版の考え方では、PPSV23接種後に1年以上の間隔を置いてPCV20またはPCV21を接種することができるとされています。

一方で、PPSV23をもう一度打つ選択肢は原則としてなくなりました。「5年ごとに」という以前の運用を続けるのではなく、結合型に切り替えるかどうかを検討する段階に変わっています。

ただし、定期接種として公費で打てるかどうかは別問題です。第8版は「過去に定期接種としてPPSV23を接種した者は、原則として定期接種の対象外となる」としています。自治体の運用でも、公費助成を受けてPPSV23を接種済みの場合はPCV20を公費で接種できないと案内している例があります。

つまり、接種そのものは1年以上あければ検討できるが、費用は自費になる可能性が高い、という整理です。

任意接種で打ったことがある65歳の人(市区町村に確認する価値がある)

ここは第8版の一部修正で扱いが変わった箇所です。2026年4月1日版の5.2)は「PPSV23もしくはPCV既接種者は定期接種の対象外となる」と書いていました。

これが一部修正(2026年6月15日)で次のように改められています。

「過去に定期接種としてPPSV23を接種した者は、原則として定期接種の対象外となる。(中略)また、過去に任意接種による肺炎球菌ワクチン接種歴のある65歳の方で、個別通知が送付されていない場合は、定期接種を受けることができるかどうかについて、居住する市区町村へ問い合わせすることが望ましい。」

「定期接種として」という限定が加わり、任意接種で打った人は一律に対象外とは限らない可能性が示されました。同じ修正で5.1)も「未接種者は」から「定期接種対象とならない未接種者では」に変わっています。

つまり、自費で肺炎球菌ワクチンを打った経験がある65歳の人で、個別通知が届いていない場合は、市区町村に問い合わせる価値があります。最終的な可否は自治体の判断になるため、記事の側で「対象です」「対象外です」と断定はできません。

バクニュバンス(PCV15)とPCV15-PPSV23連続接種はどこに位置づけられるか

バクニュバンス(PCV15、MSD)は2022年9月に国内で製造販売承認された15価の結合型ワクチンです。含有血清型はPCV13の13種類に22Fと33Fを加えた構成になります。

単独で見ると、65歳以上のIPDでのカバー率は2022〜2024年で35%と、4剤の中で最も低い値です。ただし、PPSV23と組み合わせる使い方が想定されています。

理屈はこうです。PCV15を接種するとPCV15血清型に特異的な記憶B細胞が誘導され、その後にPPSV23を接種すると、両ワクチンに共通する14血清型に対してブースター効果が期待できます。結合型で記憶をつくり、多糖体で範囲を広げる組み合わせです。

接種間隔について第8版は「PCV15とPPSV23の接種間隔については、その安全性と両ワクチンに共通な血清型特異抗体のブースター効果が確認されている1年から4年以内に行うことが推奨される」としています。

ハイリスク者では感染リスクを考慮し、PCV15接種後1年以内のPPSV23接種を検討することも考えられる、とも記載されています。

ただし全体としての位置づけは強くありません。第8版5.1)は未接種者について「図中には示していないが、PCV15-PPSV23の連続接種の選択肢も考えられる」と書くにとどめています。あくまで選択肢の一つ、という扱いです。

プレベナー20を打った人がキャップバックスも打つ、という選択肢はあるか

両剤の血清型が異なることから、両方打てば守備範囲が足し算になるのではないか、という発想が出てきます。承認上の扱いから確認します。

添付文書には、他の肺炎球菌ワクチンとの連続接種に関する用法の規定はありません。一方で第8版は、PCV20既接種者について1年以上の間隔を置いてPCV21を「接種することができる」としており、選択肢としては存在します。

ただし、公的に推奨されている使い方ではありません。厚生労働省の参考資料は「過去にPPSV23のみの接種歴がある方に対して、PCV20やPCV21等の再接種を推奨している国はあるが、PCV20の接種歴がある方に対して、PCV21の接種を推奨している国はない」と明記しています。

保険上の扱いは、どちらも薬価基準未収載で給付の対象外です。したがって2本目も全額自費になります。

つまり、「できる」と「推奨される」は別物です。上乗せ接種を検討する場合も、費用と、公的推奨がない状況を踏まえたうえで、接種する医師の判断で決めることになります。

キャップバックスは今後、定期接種(公費)になるのか

2026年2月時点の審議状況

「待っていれば公費で打てるようになるのか」という疑問は、費用を考えるうえで避けて通れません。現時点の到達点を示します。

2026年2月26日の第33回ワクチン評価に関する小委員会でPCV21が審議されました。結論は、成人の肺炎球菌感染症に係るファクトシートの追補版を国立感染症研究所に作成依頼し、その内容を踏まえて再度議論する、というものです。定期接種化は決まっていません。

審議の方向としては前向きな評価も出ています。委員から「PCV21の有効性・安全性、そして費用対効果の現時点での知見において、一定程度の安全性・有効性・費用対効果の議論に進むだけの知見というものはそろってきていると思います」という発言がありました。

合同委員会の第8版も、改訂ポイントで「21価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV21, キャップバックス®)が2025年8月に国内で高齢者とハイリスク者に対して薬事承認され、現在、定期接種化に係る検討が行われている」と記載しています。

つまり、検討は進んでいるものの結論は出ていません。「そのうち公費になる」という前提で接種を先送りする判断は、根拠のない見通しに基づくことになります。

66歳以上への経過措置は、そのときにあらためて検討される

66歳以上への経過措置についても、審議の場では「65歳を超える方に対する経過措置については、今後PCV21の定期接種化に係る検討を行う際に、その必要性を含め、あらためて検討することとしてはどうか」とされています。

つまり、PCV21の定期接種化の議論と経過措置の議論は紐づいています。どちらも現時点では決まっておらず、いつ結論が出るかも示されていません。

海外でも高齢者への公的接種に導入している国は限られている

PCV21は米国で2024年6月、EUで2025年3月、日本で2025年8月に承認されています。承認自体は各国で進んでいます。

ただし厚生労働省の参考資料は「多くの諸外国においてPCV21は薬事承認されているが、PCV21を現在、高齢者等に対して公的接種に導入している国は限られている」としています。承認されていることと、公費で打てることは別です。

米国の予防接種諮問委員会(ACIP)はPCV21を19歳以上の推奨PCVの一つに位置づけ、年齢基準を50歳以上へ引き下げています。しかし、これは米国の制度上の話です。日本の定期接種の対象年齢や使用ワクチンとは異なるため、海外の推奨をそのまま国内の判断に持ち込むことはできません。

接種の実務で押さえておきたいこと

接種経路と部位(どちらも筋注。ニューモバックスだけ皮下も可)

接種経路は冒頭の比較表でも触れましたが、切り替え期に間違いが起きやすいので改めて整理します。プレベナー20は6歳以上のリスク者・高齢者で筋肉内注射、6歳未満のリスク者では皮下または筋肉内です。キャップバックスは筋肉内注射のみになります。ニューモバックスNPは筋肉内または皮下です。

接種部位は、キャップバックスが「通常、上腕の三角筋中央部」とされ、臀部や神経幹・血管が存在する可能性のある部位には注射しないよう記載されています。プレベナー20も成人では三角筋中央部で、臀部には接種しません。

インフルエンザなど他のワクチンとの同時接種

両剤とも「医師が必要と認めた場合には、他のワクチンと同時に接種することができる」とされています。ただし混合はせず、別々の部位に注射します。

制度上も「同時接種については、医師が特に必要と認めた場合に行うことができる」「他のワクチンとの接種間隔の定めは置かない」という現行の取り扱いが維持されています。

キャップバックスについては、インフルエンザワクチンとの同時接種試験(STRIDE-5)が実施されています。審議会では「安全性、同時接種の有無で特に大きな違いはなく、安全に接種していただける」と説明されました。

免疫原性については「23Bを除くそれ以外の型に関しては非劣性が示された」「インフルエンザに関してはA H3N2亜型を除き非劣性を示している」と報告されています。つまり、一部の型では非劣性の基準に届かなかった、という点まで含めた結果です。

小児に使えるのはプレベナー20だけ

効能・効果の範囲にも違いがあります。プレベナー20は高齢者・リスクの高い者に対する肺炎球菌感染症の予防に加えて、小児に対する肺炎球菌による侵襲性感染症の予防という2本立ての構成です。小児のIPD予防では初回免疫3回と追加免疫1回という用法になります。

キャップバックスの効能・効果は「高齢者又は肺炎球菌による疾患に罹患するリスクが高いと考えられる成人における肺炎球菌による感染症の予防」で、成人のみです。添付文書にも「小児等を対象とした臨床試験は実施していない」と記載されています。

MSDは2025年11月7日に、リスクの高い小児に対する適応の承認事項一部変更承認申請を行ったと公表しました。ただし申請段階であり、小児適応は現時点で未承認です。小児への接種を前提とした説明はできません。

なお、「リスクが高いと考えられる者」の定義は両剤でほぼ共通です。添付文書には次のように挙げられています。

  • 慢性的な心疾患・肺疾患・肝疾患・腎疾患
  • 糖尿病
  • 基礎疾患もしくは治療による免疫不全状態、またはその疑い
  • 先天的・後天的無脾症
  • 鎌状赤血球症その他の異常ヘモグロビン症
  • 人工内耳装用や慢性髄液漏などの解剖学的要因
  • その他医師が必要と認めた者

健康被害の救済制度は、定期接種と任意接種で枠組みが違う

自費で接種するかどうかを考えるとき、費用以外にもう一つ知っておきたいのが救済制度です。定期接種で健康被害が生じた場合は、予防接種法に基づく救済(医療費や障害年金等の給付)の対象になります。

任意接種の場合は医薬品副作用被害救済制度など、別の枠組みで扱われます。給付の内容や手続きが異なる点は、自費接種を検討する患者に伝えておくべき情報です。詳細は制度ごとに条件が定められているため、個別の可否は断定せず、窓口に確認するよう案内します。

接種記録が分からない場合の相談先もあわせて押さえておくと役立ちます。自治体によっては、定期接種期間に受けた接種歴を健康課などで照会し、接種済証を発行する仕組みがあります。

よくある質問

「ニューモバックスは効果がない」と言われることがあるのはなぜですか

個人レベルでは有効性が示されています。65歳以上の市中発症肺炎を対象とした研究では、すべての肺炎球菌性肺炎に対して27.4%、ワクチン血清型による肺炎に対して33.5%でした。一方、2014年からの定期接種で同年代のIPD症例の実質的な減少が認められなかったことが、この言説の背景と考えられます。

小児が打つプレベナー20と、高齢者が打つプレベナー20は同じワクチンですか

同じ製剤です。効能・効果に高齢者・リスクの高い者と小児の両方が含まれており、2024年10月から小児の定期接種にも使われています。ただし用法は異なり、小児のIPD予防では初回免疫3回と追加免疫1回、成人は1回接種です。

2回目の肺炎球菌ワクチンを公費で打つことはできますか

定期接種の助成回数は1人1回のため、公費で2回目を受けることは原則できません。自治体のQ&Aでも「可能ですが、任意接種(公費助成はありません)となります」と案内されています。運用は市区町村で異なるので、居住地の窓口で確認するよう伝えてください。

治療中で対象年齢のうちに接種できなかった場合はどうなりますか

長期療養特例の対象になる場合があります。上限年齢は設けられておらず、「特別の事情」がなくなったときから1年以内に接種を受ける必要があるとされています。該当するかどうかは医学的な判断を伴うため、詳細は市区町村への確認が必要です。

過去の接種歴がわからない場合はどう確認すればよいですか

自治体によっては、定期接種期間に受けた接種歴を健康課などで照会し、接種済証を発行する仕組みがあります。任意接種で受けた分は自治体に記録が残らないことがあるため、接種した医療機関に問い合わせる方法もあわせて案内するとよいでしょう。

プレベナー20とキャップバックスの違いを踏まえて、どう考えるか

この記事で見てきた内容を整理します。

この記事の要点
  • 2026年4月1日から定期接種はPPSV23からPCV20に切り替わり、公費で使えるのはプレベナー20だけになった
  • 血清型は共通10種類、プレベナー20だけが10種類、キャップバックスだけが11種類。65歳以上のIPDカバー率は2022〜2024年でPCV20 50%、PCV21 78%
  • 一方でプレベナー20にあってキャップバックスにない血清型が65歳以上で7%残り、共通型の一部ではプレベナー20のほうが抗体価が高かった
  • 比較試験で示されたのは免疫原性であり、肺炎や重症化を直接比べたデータはない
  • 「1回で一生」とは公的資料に書かれていない。第8版は持続を5年程度と考えつつ、再接種のデータはないとしている
  • キャップバックスは全額自費。定期接種化は2026年2月時点で審議中であり、決まっていない

この記事の結論を1つに絞るなら、プレベナー20とキャップバックスは上位互換の関係ではなく、守備範囲の異なる2つの選択肢だということです。カバー率の数字だけで優劣は決まりません。

説明の場面では、この順番で組み立てると相手が迷いにくくなります。まず定期接種の対象かどうか、次に接種歴、そのうえで持病と費用負担の許容度です。対象年齢であれば公費のプレベナー20という選択肢が明確にあり、範囲の広さを優先するなら自費のキャップバックスという選択肢が並びます。

患者から相談を受けたときに確認したい点も整理しておきます。65歳かどうか、60〜64歳で該当する障害があるか、過去の接種が定期接種か任意接種か、最後の接種から1年以上経っているか、抗凝固薬を服用していないか。この5点が押さえられれば、話は具体的なところまで進みます。

とくに注意しておきたいのが、任意接種で打ったことがある65歳の人です。第8版の一部修正で「定期接種として」という限定が加わり、個別通知が届いていない場合は市区町村に問い合わせることが望ましいとされました。一律に対象外と案内すると、公費の機会を逃す可能性があります。

また、「5年ごとに打ち直す」「1回打てば一生」という2つの説明はどちらも現在の一次情報とは一致しません。この2つの誤解は現場でよく出会うものなので、聞かれる前に整理しておくと説明が楽になります。

最後に、どちらを接種するかを決めるのは、年齢・接種歴・持病を踏まえた接種する医師の判断です。この記事は、その相談の材料として使ってください。制度も推奨も改定されるため、接種の可否・費用・対象は市区町村と接種を受ける医療機関で確認するのが確実です。

参考文献

執筆:薬剤師/感染制御認定薬剤師。本記事は一般的な情報提供であり、診断・治療を目的とするものではありません。症状や治療・お薬について判断が必要な場合は、かかりつけの医師・薬剤師にご相談ください。

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この記事を書いた人

花(はな)|病院薬剤師・感染制御認定薬剤師

病院薬剤師として20年以上勤務し、現在は感染制御認定薬剤師としてICT(感染対策)やAST(抗菌薬適正使用)に携わっています。
記事では、添付文書やガイドライン、公的機関の資料を確認し、医療現場で迷いやすい点までわかりやすくまとめます。根拠が十分でない内容は断定せず、現時点でわかっていることと限界を分けて伝える方針です。

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