週1回投与の持効型インスリン「アウィクリ」使い方と注意点まとめ

週1回投与の持効型インスリン「アウィクリ」使い方と注意点まとめ
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アウィクリは週に1回打つだけでよいインスリン製剤です。回数が少ないぶん、打ち忘れたときの対応やこれまでのインスリンからの切り替え方など、使う前に知っておきたい点がいくつかあります。

この記事では、作用のしくみや用法、デバイスの使い方、低血糖への注意、保管、薬価や処方制限までを、添付文書や学会のRecommendationをもとに薬剤師の視点で解説します。

この記事でわかること
  • アウィクリが週1回で効くしくみと、承認されている用法・用量
  • 連日インスリンからの切り替え方(7倍換算と、初回だけの1.5倍)
  • 1クリック=10単位・空打ち・注射までの流れなど、投与過誤を防ぐ手技
  • 低血糖が最も多い時期、打ち忘れ・重複投与時の対応、受診・相談の目安
目次

アウィクリ(インスリン イコデク)とは?世界初の週1回インスリンの基本

アウィクリは、1週間に1回打つだけの基礎インスリン(Basalインスリン)です。これまで毎日打つのが当たり前だった持効型インスリンを、週1回にまとめた世界で初めての製剤にあたります。

年間の注射回数でいえば、1日1回なら365回。アウィクリなら52回です。この差が、この薬のいちばん分かりやすい価値になります。

どんな薬か(販売名・一般名・分類)

販売名はアウィクリ注 フレックスタッチで、総量300単位と総量700単位の2つの規格があります。有効成分の名前(一般名)はインスリン イコデク(遺伝子組換え)です。

分類は「週1回持効型溶解インスリンアナログ注射液」。劇薬であり、医師の処方箋がなければ使えない処方箋医薬品です。製造販売元はノボ ノルディスク ファーマ株式会社です。

効能・効果は「インスリン療法が適応となる糖尿病」と定められています。1型糖尿病と2型糖尿病のどちらも国内では対象に入りますが、1型では慎重な判断が求められています(詳しくは後半で解説します)。

注意しておきたいのが濃度です。2つの規格はどちらも700単位/mLと、従来のインスリン製剤(多くは100単位/mL)より高濃度です。総量300単位は1筒0.43mL、総量700単位は1筒1.0mLで、同じ濃度のまま容量だけが違います。

販売名に「総量300単位」「総量700単位」と付いているのは、有効成分の濃度が2規格とも同じ700単位/mLで、名前だけでは区別できないためです。取り違えを防ぐために、あえて総量を名前に入れて差別化されています。

承認から発売までの歩み(300単位と700単位で時期が違う)

世界で最初に承認されたのは2024年3月7日のスイスです(国際誕生年月日)。日本では、そこから約3か月後の2024年6月24日に製造販売承認を取得しました。

ただし、2つの規格は発売時期が1年近くずれています。混乱しやすいので表で整理します。

項目総量300単位総量700単位
製造販売承認2024年6月24日2024年6月24日
薬価基準収載2024年11月20日2025年11月12日
販売開始2025年1月30日2025年12月3日
1筒の容量0.43mL1.0mL

再審査期間は8年間で、2024年6月24日から2032年6月23日までとされています。まだ市販後の情報が集まっている途中の新しい薬だ、という前提で扱うのが安全です。

日本と海外で適応が違う(日本は1型・2型、米国は成人2型のみ)

この薬は国によって使える範囲が違います。日本の添付文書では1型糖尿病・2型糖尿病のどちらも対象ですが、海外は必ずしもそうではありません。

米国では当初1型糖尿病での低血糖への懸念から審査完了通知(CRL)が出され、その後の再申請を経て成人の2型糖尿病に限って承認されたと報じられています。EU・日本は1型と2型、中国は2型で承認されたとされています。

海外の承認状況は一次報道や企業発表がもとの情報なので、断定はできません。ただ、「1型では低血糖が問題になりやすい薬だ」という認識が国際的に共有されていることは読み取れます。国内での適応や使い方の判断は、あくまで日本の添付文書が基準になります。

なぜ週1回で効くのか:アルブミン結合と「半減期およそ1週間」の仕組み

結論から言うと、血中のアルブミンというタンパク質に一時的にくっついて「休んで」いるからです。少しずつ離れては働くため、1回打てば1週間効き続けます。

血糖を下げる仕組み自体は、ほかのインスリンと同じ

アウィクリも、ほかのインスリン製剤と同じようにインスリンレセプター(細胞側の受け皿)に結合します。そして骨格筋や脂肪細胞での糖の取り込みを促し、肝臓での糖の産生を抑えることで血糖値を下げます。

さらに脂肪細胞での脂肪分解・タンパク質分解を抑え、タンパク質合成を促します。効き方そのものは新しくありません。新しいのは「効いている時間の長さ」だけです。

半減期を延ばす仕掛け=アルブミンと可逆的に結合して「休んでいる」

皮下に注射されたアウィクリは、血液中に移った後、血中のアルブミンと結合します。この結合している間は活性を示さない状態、つまり血糖を下げる働きをしない待機状態になります。

その後、ゆっくりとアルブミンから離れ、離れた分だけがインスリンレセプターと結合して血糖を下げます。この「貯めておいて少しずつ出す」仕組みが、作用の持続につながっています。

この結合はかなり強力です。試験管内でのヒト血漿タンパクおよびヒト血清アルブミンへの結合率は、いずれも99%超と報告されています。ほとんどが結合したまま血中にとどまっている計算になります。

半減期は155〜164時間。効きが安定するまでの時間

週1回、8週間投与したときの半減期(血中濃度が半分になるまでの時間)は、次のとおり報告されています。

  • 1型糖尿病の日本人24例:164時間(約6.8日)
  • 2型糖尿病の外国人46例:155時間(約6.5日)
  • 外国人データでの反復投与時:170〜238時間との報告もある

つまり半減期はおよそ1週間です。グルコースクランプ法で調べた血糖降下作用も、1型・2型のどちらでも臨床用量で1週間持続することが確認されています。週1回という用法は、この薬物動態に裏打ちされています。

半減期が長いということは、効きが安定する(定常状態に達する)までにも時間がかかるということです。初回に増量しなかった場合、1型では投与開始後2〜3週、2型では3〜4週かかったと報告されています。

ここが次章の「初回だけ1.5倍」につながります。シミュレーションでは、初回に1.5倍量を投与すると、1型では1週間早く定常状態に達し得ると推定されました。2型では2〜3週で達し得ると推定されています(いずれも外国人データを含む推定値)。

アウィクリの用法・用量:週1回・同一曜日が基本

承認されている用法・用量はシンプルです。成人に、1週間に1回、皮下注射する。これだけです。ただし単位数の幅が広いので、そこを押さえておきます(出典: アウィクリ注 フレックスタッチ 添付文書(2026年4月改訂・第5版))。

初期量は1回30〜140単位、維持量は週30〜560単位

添付文書では、初期は通常1回30〜140単位とし、患者さんの状態に応じて適宜増減するとされています。ほかのインスリン製剤を併用することもありますが、その投与量も含めた維持量は通常1週間あたり30〜560単位です。

ただし「必要により上記用量を超えて使用することがある」とも書かれています。あくまで目安の幅であり、実際の単位数は主治医が一人ひとりの患者の状態を見て決めるものです。

2型糖尿病では、急を要する場合を除いて、あらかじめ食事療法と運動療法を十分に行ったうえで使うかどうかを考えることとされています。インスリンから始める薬ではありません。

インスリンを使ったことがない人に始めるときは70単位以下が目安

基礎インスリンをまだ使っていない患者さんに新しく始める場合は、開始時の投与量を70単位以下を目安とし、低用量から慎重に開始することが求められています。

実際、インスリン治療歴のない2型糖尿病を対象とした臨床試験でも、アウィクリ群の開始用量は70単位に設定されていました。週70単位は1日あたりに直すと10単位相当です。慎重な入り方が設計に組み込まれています。

同じ曜日に打つ。やむを得ず変えるなら4日以上あける

アウィクリは同一曜日に投与する薬です。「毎週水曜日の朝」のように曜日を固定します。時刻については添付文書に指定がないため、続けやすい時間を主治医と決めることになります。

やむを得ず曜日を変える必要が出たときは、投与間隔を4日間以上あけることとされています。あわせて血糖モニタリングを十分に行います。前倒しにすると作用が重なり、低血糖につながるおそれがあるためです。

緊急時(糖尿病性昏睡・急性感染症・手術)はアウィクリだけで処置しない

糖尿病性昏睡、急性感染症、手術などの緊急時は、アウィクリのみで処置することは適当ではありません。速効型または超速効型のインスリン製剤を使用することとされています。週1回の薬は、細かく速く動かす場面には向きません。

手術・外傷・感染症のときはインスリンの需要が激しく変動します。シックデイ(体調を崩した日)に自己判断で単位数を増減させず、主治医に連絡することが大切です。

連日のBasalインスリンからの切り替え:7倍換算と「初回だけ1.5倍」

ここがアウィクリで最も間違えやすく、最も重要な部分です。覚えることは2つだけ。「基本は7倍」「初回だけ1.5倍」。この2つを取り違えると、低血糖にも高血糖にも振れます。

基本は「それまでの1日総量 × 7倍」

連日投与の基礎インスリンからアウィクリに変えるとき、週1回の投与量は、それまで毎日打っていた基礎インスリンの1日総投与量の7倍に相当する単位数を目安とします。

計算上の基本は、1日量を7日分に換算する「7倍」です。ただし、実際の切り替え量は血糖コントロール、低血糖歴、年齢、腎機能、食事摂取状況などを踏まえて主治医が決定します。

なぜ初回だけ1.5倍に増やすのか

7倍で始めると、切り替えた直後に血糖値が上がるおそれがあります。前の章で見たとおり、アウィクリは効きが安定するまでに数週間かかる薬だからです。立ち上がりの数日間、血中濃度がまだ足りません。

そこで血糖値の上昇を防ぐため、初回投与時のみ、7倍量をさらに1.5倍に増量して投与するという設計になっています。いわば助走をつける負荷投与です。

ただし、1型と2型で言葉の強さが違います。ここは正確に押さえておきたいところです。

対象添付文書での書かれ方
2型糖尿病初回投与時のみ1.5倍に増量することが推奨される。ただし血糖コントロールと低血糖リスクのバランスを考慮し、増量の必要性を慎重に判断する
1型糖尿病初回投与時のみ原則として1.5倍に増量する。ただし血糖コントロールと低血糖の発現リスクを踏まえ、増量の必要性を慎重に判断する

どちらも「必ず1.5倍にする」ではありません。増量するかどうかは慎重に判断すると、両方に明記されています。1.5倍は自動的な決まりごとではなく、その人の状態で見送ることもある選択です。

実際の単位数を計算すると、こうなります。

これまでの基礎インスリン
(1日総量)
初回(7倍×1.5倍)2回目以降(7倍)
20単位210単位140単位
40単位420単位280単位
60単位630単位420単位

なお、アウィクリは10単位刻みでしか設定できません(次章で解説します)。そのため計算結果が10単位刻みにならないことがあります。その場合にどう設定するかは添付文書に定めがないため、処方元の指示に従ってください。

たとえば、これまでの基礎インスリンが1日10単位なら、計算上は初回105単位、2回目以降70単位です。ただしアウィクリは10単位刻みのため、初回を100単位にするか110単位にするかを患者さんが決めてはいけません。処方された単位数を、そのまま設定してください。

【最頻出の誤解】1.5倍は初回だけ。2回目は7倍量に戻す

ここがいちばん誤解されやすいところです。1.5倍への増量は、初回の1回だけ。2回目の投与では、1.5倍していない7倍量に戻します。

添付文書には「初回投与量を増量した場合、2回目の投与の際は、7.4.1項で示した単位数を投与すること」と明記されています。3回目以降は、血糖コントロールや低血糖の発現状況を見ながら調整していきます。

1.5倍を2回目以降も続けると、週あたり1.5倍の量を打ち続けることになります。作用が1週間持続する薬でこれを繰り返せば、低血糖のリスクが積み上がります。「1.5倍は初回だけ」は、この薬でいちばん大事な一言です。

この点は、日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会がまとめたRecommendationでも、あらためて注意が示されています。誤解が実際に起きているからこそ、繰り返し書かれていると受け止めるのが妥当です。

逆にアウィクリから連日インスリンへ戻すとき(週1回量の1/7が目安)

切り替えは行きだけではありません。アウィクリから連日投与の基礎インスリンへ戻す場面もあります。このとき考えることは3つです。

  1. アウィクリの最終投与後の朝食前の自己血糖測定値などを参照し、連日インスリンをいつから始めるかを検討する
  2. 切り替え時の1日あたりの投与量は、アウィクリの週1回投与量の7分の1量を目安とする
  3. 切り替え時とその後一定期間は、血糖モニタリングを慎重に行う

「いつから始めるか」が悩ましいのは、アウィクリの効果がしばらく残っているからです。すぐに連日インスリンを重ねれば、作用が重なって低血糖になりかねません。

この判断について、前述の学会Recommendationはより具体的な目安を示しています。最後にアウィクリを打ってから1〜2週の間で、朝食前血糖が180mg/dLを超えた時点で、7分の1量を開始するという考え方です。

血糖が上がってきたことを、アウィクリが抜けてきたサインとして使うわけです。ただしこれは学会が示す推奨であり、実際の再開時期は主治医が個々の状態を見て決めるものです。

アウィクリの使い方:1クリック=10単位・空打ち・針交換

ここはこの薬でいちばん実害が出ている場所です。手技そのものは難しくありませんが、思い込みが1つあるだけで10倍量の投与につながります。

単位設定は1クリック(1目盛り)=10単位

アウィクリの単位合わせダイアルは、1クリック(1目盛り)が10単位に相当します。投与単位数は10単位刻みで設定できます。

たとえば140単位を打つなら、ダイアルを14クリック回す計算です。従来の多くのインスリンペンが1クリック=1単位や2単位であることを考えると、感覚がまったく違います。

なぜこうなっているかというと、アウィクリのペンが700単位/mL製剤専用の注入器だからです。高濃度の薬液を、少ない液量で大きな単位数まで打てるように設計されています。だからこそ添付文書は、単位数を再計算せず、指示された単位数をそのまま設定するよう指導することを求めています。

【重要】「1クリック=1単位」と思い込むと10倍量になる

これは想定上の話ではありません。市販後に、実際に起きています。

学会Recommendationが示した市販後の情報には、重篤な低血糖の報告のなかに「1クリック=1単位」と誤認して10倍量を投与した事例が含まれていたことが記載されています。ダイアルの回し方を勘違いしただけで、量が一桁変わります。

添付文書でも、他のインスリン製剤やGLP-1受容体作動薬から切り替えるとき、また併用するときに、指示された単位数より多く設定して投与する投薬過誤が生じ、その結果として重大な低血糖を起こすおそれがあると注意されています。

「そんな間違いはしないだろう」と感じるかもしれません。ただ、これまで何年も1クリック=1単位のペンを使ってきた人ほど、手が覚えた動きのまま回してしまいます。慣れているほど危ないという、やっかいな性質があります。

確認したいのは、シンプルに次の1点だけです。

ダイアルの窓に表示される数字が、処方された単位数と一致しているか。クリックの回数ではなく、表示された数字を見る。これだけで10倍量の投与は防げます。設定に迷ったら、打つ前に薬剤師や主治医に確認してください。

注射前の空打ち(薬液の通りを確認する)

注射の前には、針から薬液が出ることを確認する空打ち(試し打ち)を行います。針詰まりや吐出不良に気づかないまま打つと、実際の投与量が足りなくなるためです。

アウィクリの空打ちについては、1クリック(=10単位)ぶんで行うと案内されています。ただし添付文書の本文には空打ちの単位量までは書かれておらず、手技の細部は製品に同梱されている取扱説明書が原典です。

添付文書も「添付されている取扱説明書を必ず読むよう指導すること」と求めています。空打ちの手順は、必ず取扱説明書と処方元の指示で確認してください。

針は毎回新しいものを。注射後は必ず外す

使える針は、JIS T 3226-2に準拠したA型専用注射針です。適合性の確認はペンニードルプラスで行われています。

針の扱いのルールは2つです。毎回新しいものを必ず注射直前に取り付ける。そして注射後は必ず外す。 付けっぱなしは避けてください。

針を付けたままにすると、液漏れや針詰まりで正常に注射できなくなるおそれがあります。さらに薬剤の濃度変化や感染症の原因にもなります。もともと700単位/mLと高濃度の薬なので、濃度が変わることの意味は小さくありません。

針の装着時に液漏れなどの不具合が見られたときは、新しい注射針に取り替えます。また、1本のペンを複数の患者さんで使い回すことはできません。

アウィクリを注射するまでの基本手順

アウィクリのデバイスはフレックスタッチですが、従来のインスリンペンと同じ感覚で扱うと、単位設定を誤るおそれがあります。初回は医師・看護師・薬剤師から実物を使った指導を受け、同梱の取扱説明書を確認してください。

  1. 製品名、規格、投与曜日、指示された単位数を確認する。ほかのインスリンと併用している場合は、ラベルを見てアウィクリであることを確認します。
  2. キャップを外し、薬液が無色澄明で、カートリッジにひびや破損がないことを確認します。
  3. ゴム栓を消毒し、新しい注射針をまっすぐ取り付けます。針は毎回交換し、注射直前に装着します。
  4. 外側の針ケースを外して捨てずに置き、内側の針キャップを外して廃棄します。
  5. 1クリック分(10単位)を設定して空打ちを行います。針先を上に向け、カートリッジを軽く数回はじき、注入ボタンを押して薬液が出ることと、カウンターが0に戻ることを確認します。
  6. 医師から指示された単位数を設定します。クリック数を数えるのではなく、カウンターの表示数字が処方単位と一致しているかを確認します。
  7. 注射部位を消毒し、皮下に針を刺します。注入ボタンを最後まで押し込み、カウンターが0になったことを確認します。
  8. カウンターが0になってからも、針を皮下に刺したまま6秒以上待ちます。音だけで注入完了を判断しないでください。
  9. 針を皮膚から抜きます。注射部位から血がにじんだ場合は、こすらず軽く押さえます。
  10. 外側の針ケースを使って針を安全に外し、医療機関や自治体から指示された方法で廃棄します。使用後は針を付けたままにせず、ペンにキャップをします。

空打ちで薬液が出ない、カウンターが0に戻らない、注入ボタンが押せない、途中で針が抜けたなど、正しく投与できたか分からない場合は、自己判断で追加投与しないでください。過量投与になるおそれがあるため、処方元または薬剤師に確認します。

打つ場所は大腿・上腕・腹部。前回から2〜3cm離す

皮下注射する場所は大腿(太もも)・上腕(二の腕)・腹部(おなか)です。同じ部位に注射する場合も、その中で注射箇所を毎回変え、前回の注射箇所から2〜3cm離して注射します。

同じ場所に繰り返し打つと、注射箇所に皮膚アミロイドーシスやリポジストロフィー(皮下脂肪が硬くなったり、萎縮・肥厚したりする変化)があらわれることがあります。

これが起きた場所に打つと、インスリンの吸収が妨げられて血糖コントロールが悪くなります。厄介なのはその先です。効かないからと増量した状態で正常な場所に打ってしまい、低血糖に至った例が報告されています。

血糖コントロールが不良なときは、増やす前に注射箇所にしこり(腫瘤)や硬結がないかを確認する。これが実務上の要点です。しこりや硬結があれば、その場所への投与は避けます。

なお、静脈内および筋肉内には投与できません。皮下注射をしたときにまれに注射針が血管内に入り、注射後すぐに低血糖があらわれることがあるため、注意が必要です。

ほかのインスリンと取り違えないための確認

アウィクリと他のインスリン製剤を取り違えないよう、毎回注射する前にラベルなどを確認することが求められています。アウィクリの注入ボタンはダークグリーンで、識別の手がかりの一つになります。

とくに超速効型インスリンと併用している人は、毎日打つペンと週1回のペンが同じ場所に並びます。「アウィクリを毎日打ってしまう」という過誤は、市販後に実際に報告されています(毎食前あるいは毎日1回投与した事例)。

週1回の薬だという一点を、家族も含めて共有しておくことが、いちばん確実な予防になります。

アウィクリを打ち忘れたときの対応

結論は明快です。気づいた時点で直ちに投与し、次の投与は4日間以上の間隔をあけて開始する。そして、その後は新たな開始日と同一曜日に週1回投与します。

  1. 打ち忘れに気づいたら、その時点ですぐ打つ
  2. 次の投与は、そこから4日間以上あけて開始する
  3. 以後は新しい開始日と同じ曜日に、週1回のリズムを組み直す
  4. この間は血糖モニタリングを十分に行う

ポイントは3番です。もとの曜日に戻そうとしないのがこの薬の考え方になります。打った日を新しい起点にして、曜日ごと引っ越すわけです。

もとの曜日に無理に戻すと、投与間隔が4日を切ることがあります。そうなると前回の作用が残ったまま次が重なり、低血糖につながりかねません。

2回分をまとめて打つ、という発想も避けてください。用量を自己判断で変えず、迷ったら主治医や薬剤師に連絡するのが安全です。

誤って短い間隔で2回投与した・毎日投与した場合

アウィクリを前回から4日未満で重ねて投与した、2日続けて投与した、あるいは週1回ではなく毎日投与してしまった場合は、次回の投与日を自分で決めず、直ちに主治医・処方元へ連絡してください

アウィクリは半減期がおよそ1週間あり、過量投与後の低血糖は遅れて現れたり、いったん改善しても再発したりする可能性があります。症状がなくても血糖測定を行い、医療機関から指示された期間は継続して観察します。

意識がもうろうとする、けいれん、自分で糖分をとれないなどの症状がある場合は救急要請が必要です。意識が低下している人に無理に飲食物を与えてはいけません。

次回分をスキップするか、いつ再開するかは、誤って投与した量、投与間隔、血糖値、併用インスリン、食事摂取状況などによって変わります。「翌週を飛ばせばよい」と一律には判断できません。

アウィクリはどれくらい効くのか:ONWARDS試験でわかったこと

先に結論を言うと、血糖を下げる効果は、毎日打つ基礎インスリンに引けを取らない(非劣性)ことが確かめられています。一方で低血糖は、条件によってはアウィクリのほうが多いという結果も出ています。

ONWARDS試験プログラムの全体像

アウィクリの評価は、ONWARDSと名づけられた第III相の国際共同試験プログラムで行われました。日本の添付文書に結果が掲載されているのは、そのうち4つの試験です。

いずれも主要評価項目はHbA1cの変化量で、非劣性マージンを0.3%として、既存の毎日打つ基礎インスリンと比べています。4試験合わせて日本人も400例以上が参加しました。

「非劣性」とは、既存薬より優れていることではなく、一定の幅より劣らないことを示す考え方です。週1回でも毎日打つのと遜色ない、というのが証明された内容になります。

2型糖尿病での結果(ONWARDS 1・2・4)

2型糖尿病では3つの場面で検証されました。結果を並べます。

試験対象・対照HbA1c変化量
(本剤 vs 対照)
レベル3または2の低血糖
(件/人・年)
ONWARDS 1インスリン治療歴なし
対 グラルギン100/52週
−1.55% vs −1.35%
群間差 −0.19
0.30 vs 0.16
ONWARDS 2基礎インスリン治療中
対 デグルデク/26週
−0.93% vs −0.71%
群間差 −0.22
0.73 vs 0.27
ONWARDS 4Basal-Bolus療法中
対 グラルギン100/26週
−1.16% vs −1.18%
群間差 0.02
5.64 vs 5.62

3試験とも非劣性が検証されました。HbA1c 7%未満の達成割合も、ONWARDS 1では57.57%対45.44%、ONWARDS 2では40.32%対26.49%と、アウィクリ群で高い結果でした。

低血糖の見え方は場面で分かれます。インスリン治療歴のないONWARDS 1では0.30対0.16と件数自体がごくわずか。Basal-Bolus療法中のONWARDS 4では5.64対5.62とほぼ同じでした。

差が目立つのは、基礎インスリンから切り替えたONWARDS 2です。0.73対0.27と、アウィクリ群で多く報告されました。切り替えの場面には注意が要る、と読める結果です。

1型糖尿病での結果(ONWARDS 6)

1型糖尿病を対象にした試験では、結果の意味合いが変わります。ここは正直に押さえておきたい部分です。

Basal-Bolus療法中の1型糖尿病582例で、デグルデクと26週間比較したところ、HbA1c変化量は−0.47%対−0.51%で非劣性が検証されました。効果の面では届いています。

問題は低血糖です。レベル3またはレベル2の低血糖は、アウィクリ群19.93件/人・年(発現割合85.2%)に対し、デグルデク群10.37件/人・年(76.4%)でした。約2倍の開きです。

26週の後にさらに26週延長した期間でも、17.00件/人・年(90.7%)対9.16件/人・年(85.6%)と傾向は変わりませんでした。この結果が、1型糖尿病での慎重な扱いの根拠になっています。

低血糖に注意:投与後2〜4日に最も多く、回復が遅れることがある

アウィクリで最も重い副作用は低血糖です。重大な副作用として記載されており、頻度は不明とされています。この薬の低血糖には、週1回ならではの2つの特徴があります。

低血糖が最も多いのは「各投与後の2〜4日」

1つ目の特徴は、下がるタイミングが読めることです。添付文書には「本剤の臨床試験では、低血糖は各投与後の2〜4日に最も多く認められている」と明記されています。

これは裏を返せば、見張るべき日が分かっているということです。水曜日に打つなら、金曜から日曜あたりがいちばん下がりやすい時期にあたります。

学会Recommendationも、投与後2〜4日目の食前血糖が最も下がりやすく、用量調整の参考になると述べています。血糖測定のタイミングを決めるときの、実務的な手がかりになります。

週1回だからこそ、回復が遅れて再発することがある

2つ目の特徴は、こちらのほうが重要です。アウィクリは週1回投与する薬であり、その作用は持続的であるため、低血糖からの回復が遅延するおそれがあると添付文書に記載されています。

さらに、低血糖は臨床的に回復した場合にも再発することがあるため、継続的に観察することとされています。ブドウ糖をとって一度良くなっても、そこで終わりとは限りません。

理由は薬物動態を思い出せば明らかです。半減期が155〜164時間ある薬は、打った分をすぐには消せません。低血糖が起きたとき、原因の薬がまだ何日も体内に残っているという点が、毎日打つインスリンとの決定的な違いになります。

低血糖の症状があるときは、糖質を含む食品をとるなど適切な処置を行います。α-グルコシダーゼ阻害薬(糖の吸収を遅らせる飲み薬)を併用している場合は、砂糖では対応が遅れるためブドウ糖をとります。

経口摂取ができない場合は、ブドウ糖の静脈内投与やグルカゴンの筋肉内投与などの処置が行われます。学会Recommendationは、アウィクリによる重症低血糖は遷延しうるため、ブドウ糖の持続静注・入院・専門医へのコンサルトを考慮するとしています。

市販後に報告された重篤な低血糖28例で何が起きていたか

ここは、この薬を扱うすべての人に知っておいてほしい情報です。

学会Recommendationによれば、発売後の2025年1月30日から7月29日までの間に、重篤な低血糖が28例報告されています。そのなかには次のような事例が含まれていたと記載されています。

  • 毎食前、あるいは毎日1回投与した事例(週1回の薬を連日打ってしまった)
  • 「1クリック=1単位」と誤認し、10倍量を投与した事例

注目したいのは、この2つがどちらも薬の性質による副作用ではなく、投与方法の取り違えだという点です。避けようがない副作用ではありません。手順の理解で防げる種類の事故です。

また、切り替え後に糖尿病性ケトアシドーシス(インスリン不足で血液が酸性に傾く、命に関わる状態)を発症した症例も報告されています。低血糖だけでなく、切り替えがうまくいかず高血糖側に振れる危険もあるということです。

だからこそ、この記事で繰り返してきた3点に戻ります。週1回であること。1クリックは10単位であること。1.5倍は初回だけであること。 この3つを外さなければ、報告されている過誤の多くは避けられます。

低血糖を起こしやすい背景(高齢者・腎/肝障害・シックデイなど)

添付文書は、低血糖を起こすおそれがある状態として次を挙げています。当てはまる場合は、より慎重な観察が必要になります。

  • 脳下垂体機能不全または副腎機能不全
  • 下痢、嘔吐などの胃腸障害
  • 飢餓状態、不規則な食事摂取
  • 激しい筋肉運動
  • 過度のアルコール摂取
  • 高齢者、重度の腎機能障害・肝機能障害

気をつけたいのが、低血糖の症状が出ないケースです。長期にわたる糖尿病、糖尿病性神経障害、β遮断剤の投与、強化インスリン療法が行われている場合は、初期の自覚症状(冷汗・振戦など)が通常と異なったり、自覚症状がないまま低血糖や低血糖性昏睡に陥ったりすることがあります

また、低血糖症状を起こすことがあるため、高所作業や自動車の運転に従事している人には注意が必要とされています。なお、すでに低血糖症状を呈している患者さんへの投与は禁忌です。

【受診・相談の目安】こんなときはすぐ医療機関へ

判断に迷ったときのために、目安を整理しておきます。

冷汗、動悸、強い空腹感、手のふるえ、意識がもうろうとする、けいれん。こうした低血糖のサインがあれば、まず糖質をとってください。自分で飲み込めない、意識がはっきりしないといった場合は、ためらわず救急要請を。アウィクリの低血糖は回復が遅れることがあるため、いったん良くなっても医療機関に連絡してください。

切り替えの後に、強い口渇、尿の量が増える、悪心・嘔吐、腹痛、意識がぼんやりするといった症状が出たときは、糖尿病性ケトアシドーシスの可能性があります。市販後に報告があるため、様子を見ずに受診してください。

そこまでではなくても、次のようなときは自己判断せず主治医や薬剤師に相談してください。体調を崩して食事がとれない(シックデイ)。低血糖を繰り返す。血糖が思うように下がらない。打ち忘れたが対応に迷う。

とくに用量を自分の判断で増減しないことが大切です。1週間効き続ける薬では、その調整が数日先まで尾を引きます。

どんな人に向く?慎重に考えるべき人は?

はじめにお断りしておくと、この薬を使うかどうかを決めるのは主治医です。ここで整理するのは、その相談をするときに持っておくと役に立つ材料になります。

週1回のメリットが活きやすい場面

注射回数が年365回から52回になることが、そのまま利点になる場面があります。毎日の注射が負担になっている人、注射のために生活が縛られている人では、続けやすさが変わってきます。

介護施設や訪問看護の現場では、毎日の基礎インスリン注射を週1回に減らせることが大きな利点になる場合があります。家族が毎日訪問できない、看護職が常時対応できないといった事情がある患者さんでは、治療を続けやすくなる可能性があります。

ただし学会Recommendationは、訪問看護や介護環境では慎重に計画することを求めています。週1回は「打つ回数が減る」だけで、「見なくてよくなる」わけではありません。

  • 誰が、何曜日に、何単位を投与するのか
  • 投与済みであることを、記録表やカレンダーでどう共有するか
  • 低血糖が起こりやすい投与後2〜4日を、誰が観察するか
  • 食事がとれない、発熱・嘔吐がある、血糖が低いときに誰へ連絡するか
  • 超速効型インスリンなど、毎日使う注射薬との保管場所をどう分けるか

この運用を決めずに導入すると、二重投与、毎日投与、投与忘れ、低血糖の発見遅れにつながります。施設では「週1回だから管理が簡単」と考えるのではなく、投与記録と低血糖時の連絡体制を先に作ることが重要です。

1型糖尿病では慎重に判断する(添付文書5.1・保険留意事項)

国内の適応には1型糖尿病も含まれます。ただし添付文書の「効能又は効果に関連する注意」には、はっきりとした但し書きがあります。1型糖尿病では連日投与の基礎インスリンと比べて低血糖の発現が多く、同一患者で複数回発現した場合も多かったという記載です。

そのうえで添付文書は、連日投与の基礎インスリンなどを用いた治療を選択することも検討したうえで、アウィクリの適用を慎重に考慮することを求めています。同じ内容は、厚生労働省の保険留意事項通知にも盛り込まれました。

また1型では、生活様式の変化で血糖値が変動しやすいため、慎重な血糖モニタリングを行いながら投与量を調整することとされています。低血糖を繰り返すなど適切なコントロールが得られない場合は、連日投与の基礎インスリン製剤などによる治療に変更することも明記されました。

2型糖尿病でも、対照群との比較では同様の傾向が認められています。1型と比べれば低血糖が発現した患者の割合は低いものの、その点を考慮したうえで適用の可否を判断することとされています。

高齢者:学会Recommendationが示す5つの視点

高齢者は生理機能が低下していることが多く、低血糖が発現しやすい点に注意が必要です。実際、母集団薬物動態解析では、18歳以上65歳未満と比べた定常状態の血中濃度比は、65歳以上75歳未満で1.05、75歳以上で1.11と、わずかに高い推定値でした。

日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会は、高齢者での週1回持効型溶解インスリン製剤の使用について、Recommendation(2025年4月18日策定・2026年3月31日改訂)を公表しています。挙げられた留意点のうち、高齢者への使い方に直結するのは次の5つです。

  1. 治療目標を柔軟に(HbA1cの目標を厳格にしすぎない)
  2. 血糖モニタリング(投与後2〜4日目の食前血糖が最も下がりやすく、用量調整の参考になる)
  3. 訪問看護・介護環境では慎重に計画する
  4. 感染症・術前は(超)速効型インスリンを併用する
  5. 低血糖を予防する

高齢者では「初回1.5倍を必ずしも行わない」選択肢もある

同じRecommendationは、切り替えについてもう一歩踏み込んでいます。高齢者では初回1.5倍投与を必ずしも行わないという選択肢も考慮するという内容です。当院でも疑義照会してもそのままでとうケースを数回経験しています。

矛盾しているように見えるかもしれません。ただ、添付文書自体が「増量の必要性を慎重に判断すること」と書いています。1.5倍は義務ではなく、天秤にかける選択だという点で、両者は一致しています。

天秤の中身はこうです。1.5倍しなければ切り替え直後に血糖が上がるおそれがある。1.5倍すれば低血糖のリスクが上がる。低血糖のダメージが大きい高齢者では、後者を重く見る考え方があるということになります。

もちろんこれは学会が示す推奨であり、個々の患者さんへの指示ではありません。どうするかは主治医が状態を見て決めます。

腎機能障害・肝機能障害のある人

意外に思われるかもしれませんが、腎機能や肝機能が落ちていても、薬物動態そのものは大きく変わりません

単回投与での検討では、腎機能が正常な人と比べたAUC(総曝露量)の比は、軽度で1.12、中等度で1.21、重度で1.16、透析が必要な末期で1.13でした。肝機能障害でも、軽度1.13、中等度1.15、重度0.97と、大きな差は見られていません。

それでも添付文書は、重度の腎機能障害・重度の肝機能障害のある患者では低血糖を起こすおそれがあると注意しています。薬の動きが同じでも、低血糖からの回復力や糖の産生能力が落ちているためです。数値が変わらないことと、安全であることは別だと押さえておきたいところです。

妊婦・授乳婦・小児

この3つについては、判断材料がまだ限られています。

対象添付文書での扱い
妊婦治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与。妊婦に投与した臨床試験成績は得られていない
授乳婦治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討。ヒト乳汁中への移行は不明
小児等小児等を対象とした臨床試験は実施していない

妊娠中・授乳中の方、あるいは妊娠を希望している方は、必ず主治医に伝えたうえで治療を相談してください。糖尿病の治療自体を自己判断で中断しないことも同じくらい大切です。

アウィクリの保管方法と使用期限:300単位と700単位で違う

保管のルールは、使い始める前と使い始めた後で変わります。そして使い始めた後の期限は、2つの規格で違います。

未使用は冷蔵(2〜8℃)、使用開始後は室温で遮光

まだ使っていないものは、凍結を避け、2〜8℃で保存します。冷蔵庫の場合、冷気の吹き出し口に近い場所は凍結のおそれがあるため避けます。有効期間は36か月です。

使い始めた後は逆で、室温にキャップなどにより遮光して保管します。冷蔵庫での保管(2〜8℃)も可能ですが、この場合も凍結は避けてください。

使用開始後は300単位が6週間以内、700単位が12週間以内

ここが規格で分かれるポイントです。同じ薬でも、使用開始後に使い切るまでの期間が倍違います。

項目総量300単位総量700単位
使用開始後の期限6週間以内12週間以内
未使用時の貯法凍結を避け、2〜8℃で保存(有効期間36か月)凍結を避け、2〜8℃で保存(有効期間36か月)
使用開始後の保管室温で遮光。冷蔵(2〜8℃)も可、凍結は不可室温で遮光。冷蔵(2〜8℃)も可、凍結は不可
包装0.43mL×2本1.0mL×2本

期限を過ぎて残った場合は廃棄します。週1回しか打たない薬なので、「まだ残っているから」と期限を越えて使ってしまいやすい点には注意が要ります。使い始めた日を、ペンや箱に書いておくと確実です。

ほかの薬と混ぜない・カートリッジから薬液を抜かない

アウィクリは他の薬剤と混合できません。混合により成分が分解するおそれがあるためです。

また、インスリンカートリッジにインスリン製剤を補充することはできません。カートリッジを取り外して使用したり、シリンジで薬液を抜き取ったりすることも禁じられています。過少投与や過量投与になるおそれがあるためです。

そのほか、カートリッジにひびが入っている場合、薬液に濁りや変色がある場合は使用しません。使う前にひと目確認する習慣が役に立ちます。

アウィクリの薬価・処方制限・保険の扱い

費用と制度の話です。2025年12月から長期処方ができるようになった点が、実務では大きな変化にあたります。

薬価(記事執筆時点)

アウィクリの薬価は規格で異なります。いずれも1キットあたりの価格で、厚生労働省の薬価基準収載品目リスト(令和8年7月15日適用)に基づきます。

規格薬価(1キット)
アウィクリ注 フレックスタッチ 総量300単位2,081円(記事執筆時点の薬価)
アウィクリ注 フレックスタッチ 総量700単位3,809円(記事執筆時点の薬価)

薬価は薬価改定で変わります。実際の窓口負担は、負担割合や併用薬、在宅自己注射指導管理料などの管理料によっても変わるため、金額の見通しは処方元や薬局で確認してください

処方制限:長期処方はいつから解禁されたか

まず前提として、アウィクリという薬そのものに、投薬期間の制限は定められていません。インタビューフォームにも「本剤は,投薬期間に関する制限は定められていない」と明記されています。

それでも発売当初に2週間分までしか処方できなかったのは、新薬に共通する「14日ルール」によるものです。新しく薬価収載された医薬品は、収載の翌月からおおむね1年間、1回の外来で14日分までとされています。

そのため2つの規格は、解禁の時期も収載日にひもづきます。総量300単位は2024年11月の薬価収載を受けて2025年12月に長期処方が解禁されました。総量700単位も2025年12月3日の発売にあわせ、12月から投薬期間の制限が解除されたとされています。

週1回の薬で14日分までということは、1回の受診で2回分しか出せなかったということです。「毎日の注射から解放される薬なのに、2週間ごとに受診が必要」という状態が続いていました。長期処方の解禁で、この薬の利点がようやく素直に活きる形になりました。

在宅自己注射指導管理料は算定できる。注入器加算は算定できない

保険の扱いは、厚生労働省の通知(令和6年11月19日付け 保医発1119第11号)で示されています。実務で押さえるのは3点です。

項目扱い
C101 在宅自己注射指導管理料算定できる。インスリン製剤であり、本剤の自己注射を行っている患者に指導管理を行った場合に算定できる
C151 注入器加算算定できない。注入器一体型のキットであるため
C150 血糖自己測定器加算算定できる。週1回投与でも、インスリン製剤の自己注射を1日1回以上行っている患者に準じて所定点数を算定できる

3つ目がポイントです。週1回では「1日1回以上の自己注射」という要件を満たさないのでは、と考えたくなりますが、承認された用法・用量どおり週1回打っている患者さんは、1日1回以上行っている患者さんに準じて算定できると、同じ通知の関係通知改正で手当てされています。

この通知は当初、総量300単位のみを対象としていました。その後、令和7年11月11日付けの通知(保医発1111第6号)で総量700単位も対象に加えられています。

よくある質問

アウィクリの1クリックは何単位ですか?

1クリック(1目盛り)は10単位です。1単位ではありません。10単位刻みで設定するため、140単位ならダイアルを14クリック回す計算になります。クリックの回数ではなく、表示された数字が指示どおりかを確認してください。

アウィクリは何曜日の何時に打てばいいですか?

週1回・同一曜日に投与することが決められています。一方で時刻の指定は添付文書にありません。続けやすい時間帯を主治医と決めて固定するとよいでしょう。やむを得ず曜日を変えるときは、投与間隔を4日以上あけます。

アウィクリは1型糖尿病でも使えますか?

国内では1型糖尿病も適応に含まれます。ただし臨床試験で連日投与の基礎インスリンより低血糖の発現が多かったため、添付文書は連日投与の治療を選ぶことも検討したうえで慎重に考慮するよう求めています。使うかどうかは主治医の判断です。

アウィクリはほかのインスリンと併用できますか?

併用することがあります。維持量の目安である週30〜560単位は、ほかのインスリン製剤の投与量も含めた量として示されました。ただし糖尿病性昏睡や急性感染症、手術などの緊急時は、アウィクリのみで処置せず速効型・超速効型を使うこととされています。

アウィクリは冷蔵庫で保管するのですか?

使い始める前は、凍結を避けて2〜8℃で保存します。使い始めた後は室温で遮光して保管してください。冷蔵も可能ですが、凍結は避けます。使用開始後に使い切る期限は、総量300単位が6週間以内、総量700単位が12週間以内です。

アウィクリを2日続けて打ってしまったら、次回はいつ打ちますか?

次回を自己判断で決めず、直ちに主治医・処方元へ連絡してください。過量投与後は低血糖が遅れて現れたり、再発したりすることがあります。再開時期は投与量、間隔、血糖値などを踏まえて医師が判断します。

正しく注射できたか分からないときは、もう一度打ってよいですか?

追加投与しないでください。途中で針が抜けた、カウンターが0にならなかった、薬液が出たか分からない場合でも、自己判断で打ち直すと過量投与になるおそれがあります。ペンを手元に置いたまま、主治医または薬剤師へ確認してください。

アウィクリのまとめ:週1回インスリンを安全に使うための要点

アウィクリは、毎日の基礎インスリンを週1回にまとめられる、世界で初めての製剤です。血糖を下げる効果は毎日打つインスリンに引けを取らないことが臨床試験で示されています。

一方で、半減期がおよそ1週間あるという性質は、利点と注意点の両方を生みます。押さえどころを整理します。

アウィクリで外してはいけない要点
  • 週1回・同一曜日に打つ。曜日を変えるときは4日以上あける
  • 1クリック(1目盛り)=10単位。1単位ではない。表示された数字で確認する
  • 連日インスリンからの切り替えは1日総量の7倍が目安
  • 1.5倍への増量は初回だけ。2回目は7倍量に戻す。増量するかどうかは慎重に医師が判断する
  • 低血糖は各投与後の2〜4日に最も多い。作用が持続するため回復が遅れ、再発することがある
  • 打ち忘れたら気づいた時点で打ち、次は4日以上あけて新しい曜日に固定する
  • 短い間隔で重ねて打った、毎日打った、正しく打てたか不明な場合は追加投与せず、すぐ処方元へ連絡する
  • 使用開始後は300単位が6週間以内、700単位が12週間以内に使い切る
  • 1型糖尿病では低血糖が多く、適用は慎重に判断される

この記事でいちばんお伝えしたかったのは、発売後の半年間に報告された重篤な低血糖28例の中身です。そこには「毎日打ってしまった」「1クリックを1単位と誤認して10倍量を打った」という事例が含まれていました。薬の副作用ではなく、手順の取り違えで起きたものです。

裏を返せば、週1回であること、1クリックは10単位であること、1.5倍は初回だけであること。この3つを外さなければ、報告されている過誤の多くは避けられます。週1回という利便性は、手技の正確さとセットで初めて手に入ります。

そのうえで、ご自身に当てはめる目安を1つ挙げるなら低血糖に気づける環境があるかです。高齢の方、腎機能や肝機能が低下している方、ひとり暮らしや訪問看護を利用している方では、打つ回数が減ることよりも、投与後2〜4日を誰がどう見守るかのほうが重要になります。

参考文献

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この記事を書いた人

花(はな)|病院薬剤師・感染制御認定薬剤師

病院薬剤師として20年以上勤務し、現在は感染制御認定薬剤師としてICT(感染対策)やAST(抗菌薬適正使用)に携わっています。
記事では、添付文書やガイドライン、公的機関の資料を確認し、医療現場で迷いやすい点までわかりやすくまとめます。根拠が十分でない内容は断定せず、現時点でわかっていることと限界を分けて伝える方針です。

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