オノンとキプレスは、どちらも喘息やアレルギー性鼻炎で処方される飲み薬です。同じグループに属する薬でありながら、飲む回数も剤形も、使える年齢の範囲も違います。処方が切り替わったときに、何がどう変わったのかを説明しづらい場面があります。
この記事では、成分と商品名の対応から、両剤を直接比べた臨床試験の結果、剤形ごとに異なる効能・効果、用法が分かれた理由、副作用の記載差、飲み合わせまでを整理しました。両剤の添付文書とインタビューフォームの記載をもとに、薬剤師の視点でまとめています。
- オノンとキプレスの成分・剤形・用法・薬価の違いを一覧で確認できる
- 両剤を直接比較した国内第III相試験の数値と「非劣性」が意味すること
- 剤形によって変わる効能・効果と、小児の鼻炎で用法があるのはどちらか
- 精神神経系の副作用の記載差と、米国食品医薬品局(FDA)の警告と日本の添付文書の違い
オノンとキプレスの違いを一覧で整理する
オノンとキプレスは、有効成分の名前が異なる別の薬です。オノンの有効成分はプランルカスト水和物(小野薬品工業)、キプレスの有効成分はモンテルカストナトリウム(杏林製薬)です。
ただし、この2つは同じグループに属します。どちらもロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA、ロイコトリエンという炎症物質が働くための受け皿をふさぐ薬)に分類されます。日本で内服できるロイコトリエン受容体拮抗薬は、この2成分だけです。
混同されやすいのがシングレアです。シングレアはキプレスと同じモンテルカストナトリウムを有効成分とする別ブランドで、細粒4mg・チュアブル錠5mg・錠5mg・錠10mg・OD錠10mg(口の中で崩れる錠剤)という剤形の構成まで同じです。
つまり、有効成分と規格の構成で見れば、キプレスとシングレアは同じ薬です。別の成分にあたるのはオノンだけになります。ただし製造販売元は異なり、薬価も錠5mgでは分かれます。
| 項目 | オノン | キプレス |
|---|---|---|
| 有効成分 | プランルカスト水和物 | モンテルカストナトリウム |
| 販売会社 | 小野薬品工業 | 杏林製薬(同一成分の別ブランドがシングレア) |
| 剤形 | カプセル112.5mg、ドライシロップ10%の2剤形 | 錠5mg、錠10mg、OD錠10mg、チュアブル錠5mg、細粒4mgの5剤形 |
| 効能・効果 | どちらの剤形も気管支喘息、アレルギー性鼻炎 | 錠・OD錠は気管支喘息とアレルギー性鼻炎、チュアブル錠・細粒は気管支喘息のみ |
| 成人の用法 | 1日450mg(4カプセル)を朝食後と夕食後の2回に分ける | 喘息は10mg、アレルギー性鼻炎は5〜10mgを1日1回就寝前 |
| 食事の指定 | 朝食後および夕食後 | 食事の有無にかかわらず投与できる |
| 主な代謝酵素 | CYP3A4(肝臓で薬を分解する酵素の一種) | CYP2C8(同じく薬を分解する酵素) |
| 小児のアレルギー性鼻炎の用法 | ドライシロップに設定あり | 設定なし |
| 高齢者の減量記載 | あり(1回1カプセルを1日2回) | なし |
| 1日薬価(成人・喘息/先発品) | 83.2円(20.8円×4カプセル) | 41.9円(錠10mg 1錠) |
薬価は薬価基準収載品目リストに基づく製品一覧の2026年7月22日版(記事執筆時点の薬価)によります。この表のうち、処方の場面で最も影響が大きいのは効能・効果と小児の用法の欄になります。
後発品はどちらの成分にもあります。プランルカストには先発品にない225mg規格(錠・カプセル)があり、1日450mgを1回1錠の1日2回で済ませられます。先発のオノンは112.5mgのみで1日4カプセルになります。
そもそもどちらも何をする薬なのか
喘息もアレルギー性鼻炎も、アレルギーの反応が起きたときに体内で作られる化学物質が、気道や鼻の粘膜を狭くしたり腫らしたりして症状を出します。その化学物質のひとつがロイコトリエンです。オノンもキプレスも、このロイコトリエンの働きを止めるために設計されています。
ロイコトリエンは、アレルギー反応で活性化した細胞から放出される脂質性の炎症物質です。気道を収縮させ、血管から水分が漏れやすくなる状態(血管透過性の亢進)を招き、粘膜をむくませ、粘液の分泌を増やします。鼻では鼻腔通気抵抗(鼻の中の空気の通りにくさ)を上げて鼻づまりを起こします。
プランルカストは、ロイコトリエンのうちLTC4・LTD4・LTE4という3種類の受容体に選択的に結合して拮抗します。ヒスタミン、アセチルコリン、セロトニンなどには拮抗作用を示しません。モンテルカストは、システイニルロイコトリエン タイプ1受容体(CysLT1受容体)に選択的に結合し、LTD4やLTE4による気管支収縮・血管透過性の亢進・粘液分泌の促進を抑えます。
つまり、どちらも「ロイコトリエンが受け皿にはまるのを邪魔する」という同じ手口の薬で、受け皿の書かれ方に差があります。ただし、この記載差が効き方の差につながるという根拠は添付文書には示されていません。
ここから、患者からよく出る2つの誤解にも答えられます。ひとつは「ステロイドが入っているのか」という問いです。両剤ともロイコトリエン受容体拮抗剤であり、副腎皮質ステロイドでも抗菌薬でもありません。
もうひとつは「発作のときに飲む薬か」という問いです。両剤の添付文書の「重要な基本的注意」には、気管支拡張剤やステロイド剤とは異なり、すでに起こっている喘息発作を緩解する薬剤ではないと明記されています。投与中に大発作をみた場合は、気管支拡張剤あるいはステロイド剤の投与が必要とも書かれています。
どちらも症状が落ち着いているときも毎日続けて飲む長期管理薬です。「苦しいときだけ飲む薬」と受け取られていないか、服薬指導の場面で確認しておきたい点になります。
効き目に差はあるのか:両剤を直接比較した試験がある
「どちらが強いのか」は最もよく聞かれる問いです。この点については、両剤を同じ試験の中で直接比べたデータがキプレス錠の添付文書に載っています。承認申請時に行われた国内第III相二重盲検比較試験(医師も患者もどちらの薬かを知らない状態で比べる試験)で、気管支喘息とアレルギー性鼻炎の両方について実施されました。
気管支喘息での比較:有効率58.5%と46.0%
気管支喘息患者を対象とした国内第III相二重盲検比較試験では、最終全般改善度の有効率が次のとおりでした。
- モンテルカストFC錠(フィルムコーティング錠)10mg群:58.5%(83/142例)
- プランルカスト水和物450mg群:46.0%(63/137例)
- 非劣性マージンΔ=10%で、モンテルカストのプランルカストに対する非劣性が検証された
この試験での副作用発現率は11.0%(20/182例)でした。主な副作用は胸やけ3例(1.6%)、眼瞼浮腫・胃痛・胃不快感・食欲不振・嘔気・下痢が各2例(1.1%)です。
アレルギー性鼻炎での比較:鼻症状スコアの変化量
季節性アレルギー性鼻炎患者を対象とした国内第III相二重盲検比較試験(約1,400例)では、総合鼻症状点数の変化量が評価されました。総合鼻症状点数は、日中鼻症状点数と夜間鼻症状点数の平均を、治療期2週間について平均したものです。
ベースラインからの変化量の最小二乗平均は、モンテルカストFC錠5mg群が-0.19点、10mg群が-0.19点、プランルカスト水和物450mg群が-0.20点でした。非劣性マージンΔ=0.085点で非劣性が検証されています。点数は下がるほど症状が改善したことを示すため、3群の改善の程度はほぼ重なっていた、という結果になります。
「非劣性が検証された」とはどういうことか
非劣性試験は、「相手より優れていること」を確かめる設計ではありません。「あらかじめ決めておいた差の範囲より悪くはないこと」を確かめる設計です。
喘息の試験ではΔ=10%、鼻炎の試験ではΔ=0.085点という許容範囲が、結果を見る前に決められています。したがって、この2つの試験から言えるのは「設定した範囲内に収まることが確認された」ところまでです。
喘息の数字だけを並べると12.5ポイントの開きがありますが、この試験はその差の大きさを検定したものではありません。「モンテルカストのほうが効く」とも「まったく同じだけ効く」とも読み替えられない、というのが正確な受け取り方です。あわせて、この比較がモンテルカスト側の承認申請資料に基づくものである点も押さえておきたいところです。
効き目の強さで両剤に順位をつけられる一次データはない、というのがここでの結論です。
そのうえで、喘息の治療全体を見ると、順位づけの手前に置くべき論点があります。喘息予防・管理ガイドライン2024(JGL2024)でも長期管理の中心は吸入ステロイド薬であり、ロイコトリエン受容体拮抗薬はそこに追加する、あるいは補完する位置づけです。
したがって、コントロールが不十分なときにまず確認するのは、経口薬をどちらにするかよりも吸入が実際にできているかどうかになります。一方で、この系統の出番がはっきりしている場面もあります。アスピリン喘息(NSAIDs過敏喘息)と、アレルギー性鼻炎を合併する喘息です。
アレルギー性鼻炎では、そもそもこの系統が選ばれるかどうかが症状のタイプで決まります。鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版で、ロイコトリエン受容体拮抗薬は鼻閉に対する効果が期待できる薬剤として位置づけられ、鼻閉型や充全型の中等症以上で選択肢に挙がります。
くしゃみと鼻汁が主体のタイプでは、第2世代抗ヒスタミン薬が先に来ます。窓口で「鼻がつまって夜眠れない」と訴える患者に出ていることが多いのは、この位置づけが背景にあります。オノンかキプレスかという比較の前に、なぜ抗ヒスタミン薬ではないのかを説明の軸に置けます。
効能・効果は剤形によって変わる
「オノンもキプレスも喘息と鼻炎に使える」という説明は、剤形まで見ると正確ではありません。
錠剤・カプセルは喘息と鼻炎、チュアブル錠と細粒は喘息だけ
添付文書の「効能又は効果」を剤形ごとに並べると、次のようになります。
- オノンカプセル112.5mg、オノンドライシロップ10%:気管支喘息、アレルギー性鼻炎
- キプレス錠5mg、錠10mg、OD錠10mg:気管支喘息、アレルギー性鼻炎
- キプレスチュアブル錠5mg:気管支喘息のみ
- キプレス細粒4mg:気管支喘息のみ
つまり、モンテルカストの小児向け剤形にはアレルギー性鼻炎の効能がありません。「キプレスは鼻炎にも使える」と剤形をまとめて説明すると、承認されていない効能の話になってしまいます。
その小児向け剤形は、年齢で分かれています。1歳以上6歳未満には細粒4mgを1日1回就寝前、6歳以上にはチュアブル錠5mgを1日1回就寝前です。低出生体重児、新生児、1歳未満の乳児を対象とした臨床試験は実施されていません。
もう1つ、同じ「5mg」でも中身を入れ替えられない組み合わせがあります。キプレス錠5mg(フィルムコーティング錠)とキプレスチュアブル錠5mgは、生物学的に同等ではありません。チュアブル錠のほうがバイオアベイラビリティ(飲んだ薬が全身の血流に届く割合)が高いためです。
チュアブル錠の添付文書には、両者を相互に代用しないことと明記されています。在庫の都合や患者の希望で剤形を変える相談を受けたときは、規格の数字が同じでも読み替えができないと分かっていると、疑義照会の判断が速くなります。
成人の用法にも分岐があります。キプレス錠は喘息が10mg、アレルギー性鼻炎が5〜10mgで、いずれも1日1回就寝前です。喘息と鼻炎を合併し、喘息の治療のために用いる場合は10mgを選びます。その理由はインタビューフォームに、気管支喘息はアレルギー性鼻炎よりも重篤な疾患であるため、と明記されています。
小児のアレルギー性鼻炎に用法があるのはオノンだけ
モンテルカスト製剤には、小児のアレルギー性鼻炎に対する用法・用量が設定されていません。錠剤とOD錠の用法は「成人には」としか書かれておらず、キプレス錠の添付文書9.7.4には、アレルギー性鼻炎について国内で小児等を対象とした臨床試験は実施していないと記載されています。
一方、オノンドライシロップ10%はアレルギー性鼻炎の効能を持ち、小児の用法・用量が設定されています。国内で小児のアレルギー性鼻炎に用法・用量が設定されているロイコトリエン受容体拮抗薬は、プランルカストのドライシロップだけです。
その用量は年齢ではなく体重で決まります。プランルカスト水和物として1日量7mg/kg(ドライシロップとして70mg/kg)を朝食後と夕食後の2回に分け、用時懸濁して服用します。
体重別の1回量は12kg以上18kg未満で0.5g、18kg以上25kg未満で0.7g、25kg以上35kg未満で1.0g、35kg以上45kg未満で1.4gです。
上限は2段構えです。1日最高用量はプランルカスト水和物として10mg/kg(ドライシロップとして100mg/kg)で、かつ成人の通常用量である450mg/日(ドライシロップとして4.5g/日)を超えないこと、と定められています。
体重が45kgを超える学童では、体重換算の値が成人量を追い越します。そのため、この上限が効いてきます。
ただし、そのオノンドライシロップにも重要な但し書きがあります。添付文書8.6に、小児の通年性アレルギー性鼻炎については臨床試験でプラセボ群に対する優越性が示されなかったため、患者の状態を観察し、有益性が認められない場合には漫然と投与しないこと、と明記されているためです。根拠となった試験成績は次のとおりです。
- 通年性アレルギー性鼻炎(4〜14歳)の二重盲検比較試験:最終評価時の鼻症状合計スコアの変化量(1群63〜67例)について、プラセボ群に対する優越性は示されなかった
- 季節性アレルギー性鼻炎で通年性合併例を含む症例(10〜14歳)の花粉曝露試験:退室後の鼻腔通気度の曲線下面積(36例)について、優越性は示されなかった
- 季節性アレルギー性鼻炎で通年性合併例を除く症例(10〜15歳)の花粉曝露試験(74例、クロスオーバー):重み付き鼻症状合計スコア(くしゃみ対鼻汁対鼻閉=1対1対2)は本剤群1.86±1.49、プラセボ群2.47±1.56、差-0.62[95%信頼区間 -0.89, -0.34]、p<0.0001
添付文書は、小児の季節性アレルギー性鼻炎と成人の通年性アレルギー性鼻炎に対する有効性に加え、成人と小児の血中濃度の類似性などから、小児の通年性アレルギー性鼻炎に対する有効性は認められると考えられている、と結んでいます。つまり、使えないという意味ではなく、効果が見えないまま漫然と続けないという条件が付いている、と読むのが正確です。
細粒とチュアブル錠は、飲ませ方の条件が細かい
モンテルカストの小児向け剤形には、飲ませ方に条文レベルの縛りがあります。窓口での説明がそのまま効果に響く部分です。
細粒4mgは光に不安定なため、服用の準備ができるまで開封せず、開封後は直ちに(15分以内に)服用します。柔らかい食物や調製ミルク、母乳と混ぜた場合も、放置せず15分以内に飲ませます。混ぜてよいのは室温以下のスプーン1杯程度の柔らかい食物か、スプーン1杯(約5mL)の調製ミルク・母乳です。
光に不安定であることを理由に、再分包も認められていません。チュアブル錠5mgは、水やぬるま湯で飲み込ませるのではなく、口の中で溶かすかかみ砕いて服用します。丸のみしている子がいないか、次回の来局時に確認しておきたい点です。
「一包化してほしい」「粉を水に溶いて哺乳瓶で飲ませている」という相談は実際に出てきます。細粒は再分包が認められていないこと、混ぜてよいものと温度に条件があることを、その場で説明できるようにしておくと話が早く済みます。
承認された効能の外で使われるとき(適応外使用の扱い)
まず承認上の線を引いておきます。キプレス錠の用法及び用量は、アレルギー性鼻炎について「通常、成人にはモンテルカストとして5〜10mgを1日1回就寝前に経口投与する」です。キプレスチュアブル錠5mgと細粒4mgの効能又は効果は「気管支喘息」だけです。
したがって、小児のアレルギー性鼻炎に対してモンテルカストが処方された場合、それは適応外使用にあたります。喘息の診断があって小児向け剤形が処方されている場合と、鼻炎を目的として処方されている場合とでは、添付文書上の位置づけが変わります。
保険上の扱いについては、社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険中央会が公表している審査情報提供事例(適応外医薬品)の2026年3月19日版に、モンテルカストの事例は掲載されていません。小児のアレルギー性鼻炎に用いた場合を審査上どう扱うかについて、公的な取扱いは示されておらず、扱いは施設・審査により異なります。
一方、プランルカスト水和物の内服薬については、同じ一覧に事例189(小児科44、平成23年9月26日)が掲載されています。現行の適応症について小児に処方した場合、薬理作用が同様と推定されることを根拠に審査上認める、という内容です。同じロイコトリエン受容体拮抗薬でも、審査情報提供事例に載っているかどうかは成分によって分かれます。
適応外で使うかどうかを決めるのは処方医で、その裁量と責任の範囲にあります。薬剤師の側は、承認された用法との差がどこにあるかを把握したうえで、疑義照会の要否を判断することになります。
なぜオノンは1日2回で、キプレスは1日1回就寝前なのか
飲む回数とタイミングの違いは、剤形の都合ではありません。どちらも開発の段階で理由が記録されています。
就寝前に飲む理由:早朝の血中濃度を高く保つ設計
キプレスのインタビューフォームには、用法設定の根拠がはっきり書かれています。喘息の症状は早朝に最も悪化することから、早朝の血漿中薬物濃度を高く維持するために就寝前投与とした、という記述です。
アレルギー性鼻炎でも就寝前とされた理由は別に記載されています。アレルギー性鼻炎の患者は喘息を合併する率が非アレルギー性鼻炎の患者に比べて高いため、第II相試験において喘息患者に対する用法と同様に就寝前とした、という経緯です。
つまり、就寝前という指定は飲み忘れを防ぐための便宜ではなく、症状が悪化する時間帯に濃度を合わせるための設計です。患者から「朝でもいいか」と聞かれたときは、ここを説明の軸にできます。
1日2回になっている理由:半減期と用量設定の経緯
回数の差には、薬物動態と開発の経緯の両方が関わっています。プランルカストは、健康成人5例に225mgを食後単回投与したとき、血漿中濃度が約5時間で最高642ng/mLに達し、血漿中半減期は約1.2時間でした。
モンテルカストは、FC錠10mgを健康成人8例に空腹時単回投与したとき、3.9時間後にCmax(最高血中濃度)526ng/mL、消失半減期4.6時間です。
用量設定の経緯も記録に残っています。オノンの前期第II相比較試験では150/450/900mg/日を1日3回毎食後で検討し、至適用量を450mg/日と推察しました。続く後期第II相比較試験では、服用上の簡便さを考慮して300/450mg/日を朝食後・夕食後の2回に分けて投与しています。全般改善度は300mg/日で63.0%、450mg/日で76.0%でした。
この成績と1日2回投与時の血漿中濃度推移から、450mg/日を朝夕2回に分けるのが適切と判断されています。インタビューフォームが1日2回の根拠として挙げているのは、この第II相試験の成績と、服用上の簡便さ、そして1日2回投与時の血漿中濃度推移です。
つまり、もともとの用法は1日3回毎食後で、そこから2回にまとめられた経緯があります。半減期だけで回数が決まったわけではない、という順序で押さえておくと正確です。回数が多いことは効き目が弱いことを意味しません。
服用タイミングの縛りにも差が出ます。キプレスは適用上の注意に食事の有無にかかわらず投与できると明記されているのに対し、オノンは食後という指定と1日2回という回数の両方が服用時刻を決めます。
なお、効果が出るまでの日数を明示した記載は、両剤の添付文書とインタビューフォームのいずれにも見当たりません。手がかりになるのは評価期間で、モンテルカストのアレルギー性鼻炎の第II相試験・第III相試験はいずれも治療期2週間の平均で効果を判定しています。
やめどきについては、両剤に共通する記載が3つあります。効果が認められない場合には漫然と長期にわたり投与しないこと(オノン8.6/キプレス8.4)、ステロイド維持量を減量し得た患者で中止する場合は原疾患再発のおそれがあるので注意すること(オノン8.3/キプレス8.1)の2つがまず挙がります。
3つ目は、ロイコトリエン拮抗剤の使用時に好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA。血管に炎症が起きる病気で、旧称はチャーグ・ストラウス症候群)様の血管炎を生じたとの報告がある、という記載です。両剤の「重要な基本的注意」にあります。
この報告は、おおむね経口ステロイド剤の減量・中止時に生じていると添付文書に明記されています。確認するのは好酸球数の推移と、しびれ、四肢脱力、発熱、関節痛、肺浸潤影です。
表記はオノンが「Churg-Strauss症候群様」、キプレスが「好酸球性多発血管炎性肉芽腫症様」と分かれていますが、指している病態は同じです。
キプレスにはさらに、喘息が良好にコントロールされている場合でも継続して服用するよう患者に十分説明しておくこと(8.5)という記載があります。
副作用の違いはどこにあるのか
精神神経系の副作用をめぐって、「オノンのほうが安全」という説明を耳にすることがあります。実際の添付文書を条文で並べると、印象とは違う姿になります。
重大な副作用の顔ぶれは、両剤で一致しない
精神神経系の話に入る前に、押さえておきたい差があります。「重大な副作用」の欄に並ぶ項目が、両剤で同じではありません。
オノンに記載されているのは、ショック、アナフィラキシー、白血球減少、血小板減少、肝機能障害、間質性肺炎、好酸球性肺炎、横紋筋融解症です(いずれも頻度不明)。
キプレスに記載されているのは、アナフィラキシー、血管浮腫、劇症肝炎、肝炎、肝機能障害、黄疸、中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑、血小板減少です(いずれも頻度不明)。
並べると、片方にしかない項目が見えます。間質性肺炎・好酸球性肺炎と横紋筋融解症はオノンだけ、中毒性表皮壊死融解症・皮膚粘膜眼症候群と血管浮腫はキプレスだけの記載です。
実務に落とすと、確認する初期症状が変わります。オノンでは発熱、咳嗽、呼吸困難、筋肉痛、脱力感。キプレスでは発疹に発熱や粘膜症状を伴っていないか、顔面や口唇の腫れがないかを見ます。喘息の患者が「咳が増えた」と言ってきたとき、原疾患の悪化なのか間質性肺炎なのかは、薬歴の側からも意識しておきたい分岐です。
精神神経系の注意喚起は、どちらの添付文書にも書かれている
キプレスの「重要な基本的注意」には、本剤との因果関係は明らかではないが、うつ病、自殺念慮、自殺及び攻撃的行動を含む精神症状が報告されているので、患者の状態を十分に観察すること、と記載されています。
オノンの「重要な基本的注意」(カプセル8.5/ドライシロップ8.5)には、他のロイコトリエン拮抗剤を投与した患者で、因果関係は明らかではないがうつ病、自殺念慮、自殺及び攻撃的行動を含む精神症状が報告されているので、本剤の投与にあたっては患者の状態を十分に観察すること、と記載されています。
並べると分かるとおり、差は主語だけです。キプレスは「本剤」、オノンは「他のロイコトリエン拮抗剤」となっています。注意喚起そのものは両剤に載っており、オノンに精神症状の記載がないという説明は、現行の添付文書と合いません。
「その他の副作用」の欄でも同じことが確認できます。キプレスは0.1〜5%未満に頭痛と傾眠、頻度不明に異夢、易刺激性、情緒不安、痙攣、不眠、幻覚、めまい、感覚異常(しびれ等)、激越、振戦、夢遊症、失見当識、集中力低下、記憶障害、せん妄、強迫性症状が並びます。
オノンカプセルは、0.1〜1%未満に頭痛・眠気・めまい、0.1%未満に不眠・しびれ・味覚異常、頻度不明にふるえ・けいれん・興奮・不安です。記載の粒度と症状の数はキプレスのほうが多いものの、オノンにも精神神経系の副作用は挙がっています。
数字で見られる部分もあります。プラセボ対照臨床試験41試験の統合解析では、モンテルカスト投与群9,929例中1例に自殺念慮が認められたのに対し、プラセボ群7,780例では認められませんでした。
プラセボ対照臨床試験46試験の統合解析では、行動変化に関連する事象(不眠、易刺激性等)がモンテルカスト投与群11,673例中319例(2.73%)、プラセボ群8,827例中200例(2.27%)に認められましたが、統計学的な有意差はありませんでした。
つまり、頻度で優劣を語れるだけの材料はそろっていません。服薬指導では、不眠・いらいら・悪夢・行動の変化に気づいたら自己判断で中止せず処方元に連絡するよう伝えます。小児では保護者にも同じ内容を伝えます。
米国FDAの枠囲み警告と、日本の添付文書との違い
米国食品医薬品局(FDA)は2020年3月、モンテルカスト(シングレア)およびすべての後発品に対し、重篤な精神神経系事象に関する枠囲み警告(Boxed Warning。米国の添付文書で最も強い警告の形式)を要求しました。あわせて、アレルギー性鼻炎に対しては、代替治療で効果が不十分または不耐容の患者に限って使用するよう勧告しています。
一方、日本のキプレスの添付文書に枠囲み警告はありません。アレルギー性鼻炎への使用を制限する記載もなく、「重要な基本的注意」での注意喚起にとどまっています。
つまり、米国の規制上の措置を日本の扱いとして説明すると、実際の添付文書と食い違います。国内では観察の対象として位置づけられている、と区別して伝えるのが正確です。
妊婦・授乳婦の扱いにも記載差があります。両剤とも妊婦には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する、という書き方です。ただしキプレスにはかっこ書きが付きます。
海外の市販後において、妊娠中に本剤を服用した患者から出生した新生児に先天性四肢奇形がみられたとの報告がある、これらの妊婦のほとんどは妊娠中に他の喘息治療薬も服用しており、本剤との因果関係は明らかにされていない、という内容です。オノンにこの記載はありません。
授乳婦は両剤とも、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮して継続または中止を検討する、という書き方です。キプレスには動物実験(ラット)で乳汁中への移行が報告されている旨が添えられています。
現場では、妊娠が分かった時点で患者が自己判断でやめてしまう薬の代表格になります。中断そのものが喘息のコントロールを崩す要因になるため、勝手に中止せず処方元に相談するよう伝える場面が実際に多い薬です。
なお、禁忌は両剤とも「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」のみで、併用禁忌の設定はありません。
飲み合わせで気をつける点の違い
代謝される経路が違うため、注意すべき併用薬の顔ぶれも変わります。多剤併用の高齢者で効いてくる差です。
代謝酵素の違いで、併用注意の記載数が変わる
プランルカストは、主として肝薬物代謝酵素CYP3A4(シトクロムP450 3A4。多くの薬の分解に関わる酵素)で代謝されます。併用注意は2群に整理されています。
1つ目は、主にCYP3A4によって代謝される薬剤です。本剤とこれらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性があり、本剤がCYP3A4を競合的に阻害するとの報告が根拠とされています。2つ目は、CYP3A4を阻害する薬剤(イトラコナゾール、エリスロマイシン等)で、本剤の血中濃度が上昇する可能性があります。動物データでは、カニクイザルでケトコナゾールと併用したとき、本剤の血中濃度が、Cmaxで2.8倍、AUC(血中濃度時間曲線下面積。体内に入った薬の総量の指標)で2倍に上昇しました。
モンテルカストの主要代謝酵素はCYP2C8です。併用注意として挙がっているのはフェノバルビタール1剤のみで、CYP3A4誘導により本剤の作用が減弱するおそれがあるとされています。健康成人にフェノバルビタール100mgを14日間反復投与すると、モンテルカストのAUC0-∞が約40%減少しました(外国人データ)。
ここは読むときに注意が要ります。同じ添付文書でも、「16.4 代謝」はCYP2C8が主要代謝酵素であったと記載し、「10. 相互作用」の冒頭は主として薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)3A4で代謝されると記載しています。
併用注意にフェノバルビタールが挙がっているのは、後者の記載に対応しています。相互作用の項だけを見た人と話が食い違いやすい箇所です。
つまり、添付文書に記載された併用注意薬の数は、モンテルカストのほうが少ないという整理になります。ただしこれは「相互作用がない」という意味ではなく、記載されている範囲が狭い、という読み方にとどめる必要があります。
高齢者の扱いにも記載差があります。オノンの「用法及び用量に関連する注意」には、高齢者では減量する(例えば、1回1カプセルを1日2回)など注意すること、と明記されています。
「特定の背景を有する患者に関する注意」でも、一般に生理機能が低下していることを理由に減量するなど注意することとされています。腎機能や肝機能の数値で線を引く書き方ではありません。
キプレスには、高齢者の用量調節に関する記載そのものがありません。ここは条文の差がそのまま監査の差になります。オノンで高齢者に1日450mgの常用量が出ていても、それ自体は用法の範囲内で、減量は「注意すること」という書き方にとどまります。
数値基準がないぶん、実際に減らすかどうかは処方医の判断に委ねられています。そう整理しておくと、疑義照会の要否を判断しやすくなります。
よくある質問
- 飲み忘れたときはどうすればよいですか
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飲み忘れたときの具体的な指示は、両剤の添付文書とインタビューフォームのいずれにも見当たりません。2回分をまとめて服用しないよう伝えたうえで、次の分から通常どおりに戻す形が一般的です。個別の対応は処方元に確認するよう案内します。
- 同じ成分の市販薬は買えますか
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買えません。ロイコトリエン受容体拮抗薬はスイッチOTC(医療用から市販薬に転用された薬)になっておらず、プランルカストもモンテルカストも医療用医薬品としてのみ薬価基準に収載されています。市販薬で対応したいという相談には、第2世代抗ヒスタミン薬など別系統の選択肢を案内することになります。
- 気道過敏性検査や運動負荷検査の前に休薬は必要ですか
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小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023のWeb版では、これらの検査前に通常休薬する必要がない薬剤としてロイコトリエン受容体拮抗薬が挙げられています。β2刺激薬や抗コリン薬は休薬が必要とされており、扱いが異なります。実施施設の指示を優先します。
- シングレアとキプレスは薬価も同じですか
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規格によって異なります。錠10mgとOD錠10mgは41.9円、細粒4mgは56.3円、チュアブル錠5mgは41.3円で同額ですが、錠5mgはシングレアが46円、キプレスが42.2円です(2026年7月22日版、記事執筆時点の薬価)。成分と規格が同じでも銘柄で差が出る例になります。
まとめ:オノンとキプレスの違いをどう説明するか
- オノン=プランルカスト水和物、キプレス=モンテルカストナトリウム。シングレアはキプレスと同一成分の別ブランド
- 直接比較試験で確認されたのは非劣性。喘息58.5%と46.0%(Δ=10%)、鼻炎-0.19/-0.19点と-0.20点(Δ=0.085点)で、優劣はつけられない
- 効能はキプレスの剤形で変わる。チュアブル錠5mgと細粒4mgは気管支喘息のみ
- 小児のアレルギー性鼻炎に用法があるのはオノンドライシロップだけ。ただし通年性では優越性が示されなかったという但し書きがある
- 就寝前投与は早朝の血中濃度を保つ設計。1日2回は半減期約1.2時間という薬物動態に由来する
- 精神神経系の注意喚起は両剤の添付文書にある。差は主語(本剤か、他のロイコトリエン拮抗剤か)
- 併用注意はプランルカストがCYP3A4関連の2群、モンテルカストはフェノバルビタール1剤。高齢者の減量記載はオノンのみ
この記事の結論を1つに絞るなら、オノンとキプレスを分けているのは効き目の強さではない、ということになります。承認審査の場で行われた直接比較試験でも、あらかじめ設定した範囲内に収まることが確認されたにとどまり、順位はついていません。
実際に選択を分けているのは、適応と剤形と年齢、飲む回数とタイミング、相互作用、そして薬価です。「前はオノンだったのに今回はキプレスになった」という場面でも、格上げや格下げが起きたわけではない、と説明の軸を置けます。
患者の状況に当てはめるときは、まず年齢と対象疾患を確認します。小児の鼻炎に用法があるのはオノンドライシロップだけ、モンテルカストの小児向け剤形は喘息のみ、という条文の線がそのまま選択肢を決めるためです。次に併用薬を見ます。CYP3A4で代謝される薬や阻害する薬があれば、プランルカスト側で確認する点が増えます。
そのうえで、患者に必ず伝えたいことが2つあります。1つは、これらが発作を止める薬ではなく、症状が落ち着いていても続ける長期管理薬であること。もう1つは、不眠やいらいら、悪夢、行動の変化に気づいたときは、自己判断で中止せずに処方元へ連絡してほしいということです。小児では保護者にも同じ内容を伝えておきます。
剤形が合わない、錠数が多くて続かない、という相談は処方医や薬剤師に伝えれば検討できます。効き目の優劣で悩むより、条文の線と生活の条件を突き合わせたほうが、なぜこの薬なのかを言葉にできます。
参考文献
- オノンカプセル112.5mg 添付文書(小野薬品工業、2026年7月改訂・第3版/PMDA掲載)
- オノンドライシロップ10% 添付文書(小野薬品工業、2024年2月改訂・第2版/PMDA掲載)
- オノンカプセル112.5mg インタビューフォーム(小野薬品工業、2024年3月改訂・第13版)
- キプレス錠5mg・錠10mg・OD錠10mg 添付文書(杏林製薬、2026年8月改訂・第3版/PMDA掲載)
- キプレスチュアブル錠5mg・細粒4mg 添付文書(杏林製薬、2024年5月改訂・第2版/PMDA掲載)
- キプレス インタビューフォーム(杏林製薬、2026年8月改訂・第48版)
- 国民健康保険中央会「審査情報提供事例について(適応外医薬品)」(2026年3月19日版)
- KEGG MEDICUS「システイニルロイコトリエン受容体拮抗薬 商品一覧」(薬価基準収載品目リストに基づく、2026年7月22日版)
- 日本アレルギー学会「喘息予防・管理ガイドライン2024」(JGL2024、2024年)
- 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会「鼻アレルギー診療ガイドライン 2024年版」(アレルギー73巻2号、2024年)
- 日本小児アレルギー学会「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023」Web版(2023年)
- U.S. Food and Drug Administration「FDA requires Boxed Warning about serious mental health side effects for asthma and allergy drug montelukast (Singulair); advises restricting use for allergic rhinitis」(2020年3月4日)
