マンジャロとウゴービは、どちらも週1回の皮下注射で使う薬です。名前が並んで語られることが多く、どちらが痩せるのかという形で比べられがちですが、日本で承認されている使いみちは同じではありません。ここを取り違えたまま比較すると、適応も保険の扱いも噛み合わなくなります。
この記事では、効能又は効果の線引き、成分と作用の仕組み、増量と打ち忘れの扱い、副作用と受診の目安を並べて整理します。減量効果をどこまで比較できるのかも、試験の条件とあわせて示します。数値は両剤の添付文書と厚生労働省の最適使用推進ガイドライン、学会の見解をもとにしています。
- 承認されている効能又は効果の違い
- 「どっちが痩せるか」を比べられる土俵
- 打ち忘れの猶予が48時間と72時間で違うこと
- 副作用の実際と、中止して受診すべきサイン
マンジャロとウゴービの違いを一覧で整理する
どちらも週1回の皮下注射で、食欲と血糖に働きます。ただし日本で認められている使いみちは重なっていません。
| 項目 | マンジャロ | ウゴービ |
|---|---|---|
| 一般名 | チルゼパチド | セマグルチド(遺伝子組換え) |
| 分類 | 持続性GIP/GLP-1受容体作動薬 | 肥満症・MASH治療剤 持続性GLP-1受容体作動薬 |
| 効能又は効果 | 2型糖尿病 | 肥満症(条件付き)/肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(条件付き) |
| 開始→維持用量 | 週1回2.5mg→5mg(最大15mg) | 週1回0.25mg→2.4mg |
| 増量のしかた | 4週間以上の間隔で2.5mgずつ | 4週間隔で0.5→1.0→1.7→2.4mg |
| 打ち忘れの猶予 | 次回投与まで72時間以上 | 次回投与まで48時間以上 |
| 最適使用推進ガイドライン | 対象外 | 対象品目(肥満症・MASHで別々) |
| 投与期間の上限 | 規定なし | 最大68週間(肥満症) |
| 薬価(1キット) | 2.5mg 1,443円/5mg 2,886円/15mg 8,658円 | 0.25mg 1,764円/1.0mg 5,557円/2.4mg 10,096円 |
| 販売開始 | 2023年4月 | 2024年2月(SD) |
表を読むときの補足(薬価と、ガイドラインの有無)
マンジャロの薬価は2026年8月1日に引き下げられました。持続可能性特例価格調整の対象となったためで、2.5mgは1,924円から1,443円になっています(記事執筆時点の薬価)。
週1回の薬なので、維持用量で月4回として計算すると差がはっきりします。マンジャロ5mgは2,886円×4回で11,544円、ウゴービ皮下注SD 2.4mgは10,096円×4回で40,384円です。
薬剤料だけで約3.5倍の開きがあり、3割負担ならおよそ3,463円と約12,115円になります。診察料や在宅自己注射に関する費用はこれとは別に加わります。窓口で患者さんが最初に聞くのは、この金額です。
表の下2段にも差が出ています。ウゴービは厚生労働省の最適使用推進ガイドラインの対象品目で、処方できる施設と医師、投与できる患者にそれぞれ要件が課され、肥満症では投与が最大68週間とされています。マンジャロの添付文書にこの表示はなく、2型糖尿病の薬として通常どおり保険診療で使われます。
いちばん大きな違いは「使える病気」が重なっていないこと
結論から書きます。この2剤は、効き目の強さで並べて選ぶ2択ではありません。承認されている効能又は効果が重なっていないからです。
マンジャロの添付文書「4.効能又は効果」は「2型糖尿病」の1行だけで、肥満症や痩身の適応はありません。ウゴービは条件付きの肥満症と、肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)が適応で、糖尿病の治療薬としては承認されていません。
では減量目的の比較相手はどこにいるのか。マンジャロの添付文書「8.15」に「本剤はチルゼパチドを含有しているため、ゼップバウンド等他のチルゼパチド含有製剤と併用しないこと」とあります。このゼップバウンドが、同じチルゼパチドの肥満症用の製品です。
つまり、減量効果を同じ土俵で比べるなら、対応するのは「マンジャロ対ウゴービ」ではなく「ゼップバウンド対ウゴービ」です。以降の比較もこの線引きを前提にしています。
マンジャロは2型糖尿病の薬、ウゴービは肥満症とMASHの薬
効能又は効果は、その薬をどの病気に使ってよいかを国が承認した範囲です。
禁忌は両剤とも3項目で、ほぼ共通しています。過敏症の既往、糖尿病性ケトアシドーシス・糖尿病性昏睡又は前昏睡・1型糖尿病、そして重症感染症や手術等の緊急の場合です。
違うのは3つ目だけで、ウゴービは2型糖尿病を有する患者における重症感染症、手術等の緊急の場合と限定されています。緊急時にインスリンで血糖を管理すべき場面を指すもので、待機手術の休薬を定めた項目ではありません。
マンジャロの効能又は効果と、使い始めるときの前提
適応は2型糖尿病のみです。「5.効能又は効果に関連する注意」には「本剤の適用は、あらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行った上で効果が不十分な場合に限り考慮すること」とあります。
体重に関する記載もありますが、向きはむしろ逆です。「8.9」は、過度の体重減少がみられた場合は減量または投与中止を考慮すること、投与開始時の体格指数(BMI)が23kg/m²未満での有効性及び安全性は検討されていないこと、を明記しています。「7.4」も、用量依存的な体重減少が認められるため増量の必要性を慎重に判断するよう求めています。
つまり添付文書は、減った体重を歓迎する書き方ではなく、減りすぎに注意する書き方をしています。なお2型糖尿病の薬は成分ごとに適応や用量の考え方が違い、内服薬についてはSGLT2阻害薬の一覧と違いで整理しています。
ウゴービの効能又は効果はBMIと健康障害で細かく決まっている
肥満症の適応には条件が書き込まれています。高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、「BMIが27kg/m²以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する」か「BMIが35kg/m²以上」に該当する場合に限る、という書き方です。
肥満と肥満症は別物です。肥満症は、肥満に健康障害が伴い、医学的に減量治療が必要と判断される状態を指します。体重が重いこと自体が適応になるわけではありません。
続ける条件も決まっています。「8.15」では、投与中も食事療法・運動療法を継続し、定期的に体重・血糖・血圧・脂質を確認して、3〜4ヵ月間投与しても改善傾向が認められない場合は中止することとされています。
糖尿病を合併している患者では、もう1つ確認すべき記載があります。ウゴービの「8.14」は、2型糖尿病を有する患者において、1.0mgを超えるセマグルチドとインスリン製剤との併用における有効性及び安全性は検討されていないとしています。
維持用量である2.4mgとインスリンを併せて使う場面は、この記載の外にあるということです。
2026年6月に加わったMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)とは何か
MASHは代謝機能障害関連脂肪肝炎の略で、お酒が主因ではないのに肝臓に脂肪がたまり、炎症と線維化(肝臓が硬い組織に置き換わる変化)が進む状態です。ウゴービには2026年6月19日にこの適応が追加されました。
ただし適応は「肝硬変を伴わない」もので、「中等度又は高度の線維化を有する場合に限る」という条件が付きます。「5.3」では、NASH Clinical Research Network(NASH CRN。肝臓の組織評価の基準をつくった米国の研究ネットワーク)の分類でステージF2またはF3の患者に投与することとされています。脂肪肝ならどれでも対象ではありません。
根拠になった国際共同第III相試験(ESSENCE)は、線維化ステージ2または3の1,197例(本剤802例のうち日本人95例、プラセボ395例のうち日本人46例)が対象です。最初の800例(本剤534例/プラセボ266例)の中間解析で、72週時点の「肝線維化の悪化を伴わないNASHの消失」が62.9%対34.3%(群間差28.6[95%信頼区間 21.1, 36.2]、p<0.0001)、「NASHの悪化を伴わない肝線維化の改善」が36.8%対22.4%(群間差14.4[7.5, 21.3]、p<0.0001)でした。
つまり、肝臓の組織所見が改善したところまでは示されています。ただし「5.2」に「本剤の肝疾患関連アウトカムの改善効果は検証されていない」と明記があり、肝硬変への進展や死亡まで防げるかは240週時点の評価が継続中です。ここは言い切れません。
「どっちが痩せるのか」に、どこまで答えられるのか
いちばん多い疑問ですが、順位でそのまま答えることはできません。何と何なら比べられるのかを先に決める必要があります。
減量目的で同じ土俵に立つのはウゴービとゼップバウンド
チルゼパチドには、2型糖尿病用のマンジャロとは別に、肥満症を効能又は効果とするゼップバウンドがあります。厚生労働省は、ゼップバウンドについて肥満症の最適使用推進ガイドライン(令和7年3月、令和8年5月改訂)と、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の最適使用推進ガイドライン(令和8年5月)を策定しています。
ゼップバウンドは2024年12月27日に承認され、2025年3月19日に薬価収載、2025年4月11日に発売されました。ウゴービと同じく最適使用推進ガイドラインの対象で、施設要件も患者要件もほぼ同じ枠組みです。
標榜科、学会専門医の常勤、教育研修施設の認定、常勤の管理栄養士による栄養指導体制が求められ、投与前に治療計画に基づく食事療法・運動療法を6ヵ月以上、2ヵ月に1回以上の栄養指導とあわせて実施していることが条件になります。
ただし投与期間の上限は違います。ウゴービは最大68週間、ゼップバウンドは最大72週間です。それぞれの日本人を対象とした臨床試験で主要な有効性を評価した期間が、そのまま上限になっているためで、薬の優劣を表す数字ではありません。
同じチルゼパチドでも、マンジャロという名前で処方されている限り、それは2型糖尿病の治療として出ています。
「マンジャロで痩せる」は承認された使い方ではない
前述のとおり、マンジャロの効能又は効果は2型糖尿病だけです。そのうえで、自由診療のいわゆるメディカルダイエットとして、2型糖尿病ではない人に減量目的で処方されている実態があります。これは適応外使用にあたります。
この点は、ノボ ノルディスク ファーマ・アストラゼネカ・日本イーライリリーの3社連名による「GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用に関するお知らせ」(2025年8月5日)に記載があります。マンジャロ皮下注2.5〜15mgアテオスが製品一覧に明記され、2型糖尿病のみを効能・効果として承認を取得したものであり、それ以外の目的で使用された場合の安全性及び有効性は確認されていない、とされています。
日本糖尿病学会も「GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する見解」(2020年7月9日公表、2023年11月28日改訂)で、美容・痩身・ダイエット目的の自由診療での処方に注意を喚起しています。
保険上は、2型糖尿病以外の目的で使う場合は給付の対象外、つまり自由診療になります。個別の症例で審査上どう扱われるかは施設や審査により異なります。適応外で使うかどうかを判断し、その責任を負うのは処方医です。
糖尿病診療の現場でより重く受け止められてきたのは、供給への影響です。マンジャロは発売後、需要の急増を受けて限定出荷が続き、日本イーライリリーが限定出荷の解除を案内したのは2024年5月でした。
日本糖尿病学会の見解も、適応外使用の広がりと限定出荷を並べて注意を促しています。2型糖尿病の治療として必要としている患者に薬が届かなくなるという形で、影響が出るということです。
直接比較した試験の結果と、その読み方の限界
チルゼパチドとセマグルチドを直接比べた試験がSURMOUNT-5です。肥満、または体重に関連する健康障害を1つ以上もつ過体重で、糖尿病ではない成人が対象の第IIIb相無作為化比較試験で、72週時点の平均体重減少率はチルゼパチド群20.2%、セマグルチド群13.7%でした。
日本の肥満症の薬物療法の適応基準を満たす集団に絞ったサブ解析(383例。チルゼパチド190例、セマグルチド193例)では、72週時点の体重変化率の最小二乗平均がチルゼパチド −20.1%(標準誤差0.76%)、セマグルチド −12.9%(同0.74%)、差は −7.2%[95%信頼区間 −9.3, −5.1]、p<0.001でした。
読むときの限界が3つあります。第1に非盲検で、どちらの薬かを本人も医師も知った状態で行われています。第2に、比較されたチルゼパチドは肥満症としての用量設計で使われており、日本ではマンジャロではなくゼップバウンドに相当します。第3に、試験本体に日本人は含まれず、サブ解析も「日本の適応基準を満たす集団」であって日本人集団ではありません。
第2の点は、用量の上限ではなく維持用量の設計の違いです。マンジャロの維持用量は週1回5mgで、7.5mg以上は効果不十分な場合の増量にあたります。
一方ゼップバウンドは、2.5mgから4週間の間隔で2.5mgずつ増量して週1回10mgを維持用量とし、5mgまでの減量と15mgまでの増量が認められています。
では日本人のデータはどこにあるのか。ゼップバウンドには、日本人肥満症患者を対象とした国内第III相試験(I8F-JE-GPHZ試験)があります。
72週時点の体重変化率は10mg群 −18.4±7.61%(59例)、15mg群 −22.6±8.90%(65例)、プラセボ群 −1.8±4.94%(66例)でした。
ウゴービ側で日本人が大半を占めるのは4382試験で、68週時点の2.4mg群が −13.4±8.6%です。ただし別々の試験なので、この2つを並べて優劣を決めることはできません。評価時期が72週と68週で違い、対象患者の背景も揃っていないためです。
それぞれの試験で報告されている体重の変化
ウゴービ側の数字も試験ごとに条件が違います。日本人が大半を占めた国際共同第III相試験(4382試験、401例)では、68週時点の体重変化率が2.4mg群 −13.4±8.6%(193例)、プラセボ群 −1.9±5.9%(100例)、群間差 −11.06[95%信頼区間 −12.88, −9.24]。5%以上減った人が82.9%(160/193)、10%以上が60.6%(117/193)、15%以上が40.9%(79/193)でした。
海外中心の国際共同第III相試験(4373試験、1,961例)では68週時点で −15.6±10.1%と大きく出ますが、日本人は本剤2.4mg群1,306例のうち67例(5.1%)にとどまり、開始時の平均体重も105.4±22.1kgでした。数字の大小より、どの集団の数字かを先に見てください。
マンジャロの国内第III相試験(636例、52週、対デュラグルチド0.75mg)でも体重は減っており、5mg群 −5.8±0.41kg、10mg群 −8.5±0.42kg、15mg群 −10.7±0.41kgです。ただし2型糖尿病の患者が対象で、主要評価項目はヘモグロビンA1c(HbA1c)の変化量でした。肥満症の減量試験と横に並べることはできません。
成分と作用の仕組みはどう違うのか
両剤が働きかけるのはインクレチンです。食事をとると腸から出て、インスリン分泌を促し、胃の中身が腸へ送られる速度を遅らせ、脳に「もう十分だ」と伝えるホルモンの総称で、体内では数分で分解されます。両剤はこれを週1回で足りる形につくり替えた薬だ、という点が共通しています。
ウゴービはGLP-1受容体だけに作用する
有効成分セマグルチドは、インクレチンのうちグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)に似せてつくられたヒトGLP-1アナログです。「18.1」では、内因性GLP-1が標的とするGLP-1受容体と選択的に結合し、細胞内の情報伝達物質であるcAMPの放出量を増やす、と説明されています。
長もちする工夫は2つです。血液中のアルブミンと結合して分解と腎臓からの排泄を遅らせること、アミノ酸を置き換えてGLP-1を分解する酵素であるDPP-4に抵抗性をもたせたことです。結果として2.4mgの定常状態での消失半減期は155時間(約6.5日)、最高血中濃度までの時間は中央値24時間、皮下注射で全身に届く割合は89%と報告されています。
体重が減る仕組みは「18.2.1」にあります。非臨床試験から視床下部と脳幹に直接作用すると考えられること、中隔・視床・扁桃体を含む脳領域への作用を介して報酬系にも作用する可能性があることが記載されています。実際、肥満の被験者に2.4mgを20週間投与すると、自由に食べてよい場面でのエネルギー摂取量がプラセボと比べて35%低下しました。68週間の投与では、脂肪量の減少が除脂肪体重の減少より大きかったと報告されています。
裏を返せば、除脂肪体重も減ってはいるということです。なお、この記載も先ほどの摂取量のデータも、いずれも外国人被験者を対象としたものです。
つまり、食欲を抑える側のホルモンの働きを1週間もつ形で補う設計です。
マンジャロはGIP受容体とGLP-1受容体の両方に作用する
インクレチンにはもう1つ、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)があります。有効成分チルゼパチドは、この2つの受容体の両方に働くよう設計されました。
「18.1」には、GIP受容体及びGLP-1受容体のアゴニスト(受容体を活性化する側の物質)であり、両受容体に結合して活性化することでグルコース濃度に依存してインスリン分泌を促進する、とあります。構造はC20脂肪酸側鎖を含む39個のアミノ酸からなるペプチドで、アルブミンと結合して半減期が延びます。日本人の2型糖尿病患者で32週目に測定した半減期は約5〜6日、最高血中濃度までの時間は中央値で約24時間でした。
胃への作用も確認されています。「18.2.6」では、週1回4週間の反復投与で胃内容排出速度の低下が認められ、その低下は初回投与後に最も顕著で、反復投与で弱まったと記載されています。
腎機能・肝機能による用量調節については、両剤とも該当する項目が添付文書に設けられておらず、調節の規定はありません。「16.6」には、血液透析を受けている患者やChild-Pugh分類Cの患者を含めて、曝露量に大きな差が出なかったデータが載っています(いずれも外国人データ)。
ただし透析患者への使用可否そのものが定められているわけではありません。警戒すべきは腎機能そのものより、下痢や嘔吐による脱水から急性腎障害に至る経路のほうです。
注意したいのは、「GIPが加わるから余計に痩せる」と機序として言い切れる記載が、両剤の添付文書のどこにもないことです。2つの受容体に作用する設計だという話と、臨床試験でこう出たという話は、分けて示すところまでにとどめます。
使い方の違い:増量の刻み、打ち忘れ、注射器
どちらも週1回、同じ曜日に皮下注射します。違いが出るのは、増量の刻み方、打ち忘れたときの扱い、注射器の3つです。
増量の刻み方が違う(維持用量まで4週と16週)
マンジャロは2.5mgで始めて4週間後に維持用量の5mgへ上げ、効果不十分なら4週間以上の間隔で2.5mgずつ、最大15mgまで増やせます。ウゴービは0.25mgで始め、4週間ごとに0.5mg、1.0mg、1.7mg、2.4mgと5段階で上げるため、維持用量に届くまで16週かかります。
胃腸障害で我慢できないときの対応も書かれています。ウゴービ「7.2」は減量又は漸増の延期を検討すること、マンジャロ「7.3」は減量又は漸増の延期を考慮すること。無理に増やす設計ではありません。
増量の時期に関わる注意が、マンジャロ側にだけあります。「10.2」は経口避妊薬について、投与開始初期又は漸増後初期では併用する経口避妊薬の効果を減弱させるおそれがあるとし、機序を本剤の胃内容物排出遅延作用としています。
「16.7」の外国人データでは、ノルエルゲストロミンの最高血中濃度比が0.45[95%信頼区間 0.40, 0.51]、エチニルエストラジオールが0.41[0.36, 0.47]まで下がりました。
ウゴービの「16.7」はむしろ逆で、エチニルエストラジオールのAUC比1.11、レボノルゲストレルのAUC比1.20と上昇側に動いており、「10.2」に経口避妊薬の併用注意は立っていません。低用量ピルを飲んでいる女性にマンジャロが出たときは、増量した直後の期間について一言添えてください。
打ち忘れたときの猶予は48時間と72時間で違う
同じ「気づいたら打つ」でも、境目の時間が両剤で違います。
- ウゴービ:次回投与まで2日間(48時間)以上あれば、気づいた時点で直ちに投与し、その後は決めた曜日に戻す。48時間未満なら投与せず、次の決めた曜日に
- マンジャロ:次回投与まで3日間(72時間)以上あれば、気づいた時点で直ちに投与する。72時間未満なら投与せず、次の決めた曜日に
- 共通:週1回の曜日そのものを変える場合は、前回投与から少なくとも3日間(72時間)以上あける
つまり、次の予定日まで丸2日を切っているウゴービの患者さんと、丸3日を切っているマンジャロの患者さんは、どちらも「今日は打たずに次の曜日に」が答えになります。曜日と残り時間を一緒に確認すると間違えにくくなります。
注射器の種類と保存方法
ウゴービには2種類のデバイスがあり、中身の考え方が違います。SDは固定注射針付きシリンジを注入器にセットした単回使用の製品で、「14.2.3」に「本剤は単回使用の製剤である」と明記され、有効期間は24ヵ月です。ペン製剤は4回投与分の薬液を含むカートリッジをセットした、投与量が固定された複数回使用の製品で、有効期間は36ヵ月です。マンジャロのアテオスは固定注射針付きシリンジを注入器にセットしたキット製品で、0.5mL入りが2キット包装です。
窓口で差が出るのは注射針です。マンジャロのアテオスとウゴービ皮下注SDはどちらも注射針が一体になっており、別に用意する必要はありません。ウゴービのペン製剤はカートリッジ式で、JIS T 3226-2に準拠したA型専用注射針を別途使います(適合性はペンニードルプラスで確認されています)。
ペン製剤では、注射後に必ず針を外し、毎回新しい針を注射直前に取り付けるよう指導します。針を付けたままにすると、液漏れや針詰まりで正常に注射できないおそれがあります。
保存はどちらも2〜8℃で凍結を避けます。分かれるのは、冷蔵庫から出してよいかどうかです。
マンジャロは「20.2」で、室温保存する場合は30℃を超えない場所に外箱から出さずに置き、21日以内に使うこととされています。ウゴービ皮下注SDの「20.」には、室温保存を認める規定がありません。個装箱等により遮光し、凍結を避けて冷蔵庫に保管する、と書かれているだけです。
ウゴービのペン製剤は「20.」で、使用開始後は遮光して室温または冷蔵庫に保管し、6週間以内に使用することとされています。旅行や帰省で持ち出す相談は頻繁に受けるので、製剤ごとに答えを変えてください。
注射部位は両剤とも腹部・大腿・上腕で、毎回変更します(ウゴービは前回より少なくとも2〜3cm離す)。静脈内・筋肉内には投与しません。
自己注射については両剤とも、十分な教育訓練を実施したうえで患者が確実に投与できることを確認すること、すべての器具の安全な廃棄方法について指導を徹底すること、が添付文書に書かれています。
副作用と、すぐ受診すべきサイン
添付文書の副作用の頻度は、それぞれの薬の臨床試験に参加した集団の数字です。ウゴービは肥満症やMASHの集団、マンジャロは2型糖尿病の集団で、参加者が違います。数字の大小をそのまま「どちらが安全か」に読み替えることはできません。
消化器症状の実際(日本人中心の試験では便秘が最も多い)
ウゴービの日本人中心の4382試験(2.4mg群199例)で報告された主な副作用は、便秘24.1%、悪心15.6%、下痢13.1%、嘔吐7.5%、食欲減退6.5%、腹部不快感6.0%で、便秘が最多でした。
一方、海外中心の4373試験(2.4mg群1,306例)では悪心42.1%、下痢27.5%、嘔吐21.7%、便秘19.8%で、悪心が突出します。マンジャロの国内第III相試験では、5mg群で便秘13.8%、食欲減退13.8%、悪心11.9%、下痢10.1%、15mg群で食欲減退21.3%、悪心19.4%、便秘11.9%でした。
つまり日本人に説明するときは「吐き気が出るかもしれません」だけでは足りず、便秘の対策も同時に伝えるほうが実際に即しています。なお、ウゴービの添付文書にはその他の副作用として脱毛症(1〜5%未満)のほか、早期満腹(1〜5%未満)、不眠症(0.5〜1%未満)、起立性低血圧(頻度不明)の記載があります。マンジャロにこれらの記載はありません。逆に、重大な副作用としてアナフィラキシー・血管性浮腫が立っているのはマンジャロ側だけです。
重大な副作用と、投与を中止して受診すべきサイン
重大な副作用の骨格は似ています。ウゴービは低血糖(頻度不明)、急性膵炎(0.3%)、胆嚢炎(頻度不明)・胆管炎(0.1%)・胆汁うっ滞性黄疸(頻度不明)、イレウス(腸閉塞を含む腸の通過障害。0.3%)。マンジャロは低血糖(頻度不明)、急性膵炎(0.1%未満)、胆嚢炎(頻度不明)・胆管炎(0.1%未満)・胆汁うっ滞性黄疸(頻度不明)、アナフィラキシー・血管性浮腫(いずれも頻度不明)、イレウス(頻度不明)です。
低血糖だけは、頻度より「誰と併用しているか」で見方が変わります。マンジャロの「10.2」は、スルホニルウレア剤、速効型インスリン分泌促進薬(グリニド)又はインスリン製剤と併用する場合に低血糖のリスクが増加するとしたうえで、これらの薬剤の減量を検討することと明記しています。
ウゴービの「10.2」で名指しされるのはインスリン製剤とスルホニルウレア剤の2つで、グリニドは挙がりません。減量の対象も違い、「11.1.1」は本剤あるいは併用している糖尿病用薬を減量すると書いています。ウゴービ側では、本剤を減らす選択肢も想定されているということです。
現場では、マンジャロを始めるときにグリメピリドがそのまま残っている処方が実際に出てきます。処方箋を受けたら、まず併用の糖尿病用薬とその用量を確認してください。
患者さんに伝えておくサイン。嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛は急性膵炎の初期症状で、使用を中止して速やかに受診するよう指導します。高度の便秘、腹部膨満、持続する腹痛、嘔吐はイレウスを疑うサインです。腹痛などの腹部症状は胆石症・胆嚢炎・胆管炎・胆汁うっ滞性黄疸のおそれ、激しい下痢や嘔吐が続くときは脱水から急性腎障害に至るおそれがあります。甲状腺に関連する症候があれば専門医の受診を勧めます。
目と甲状腺については記載に差がある
目に関する記載はウゴービ側にだけあります。「15.1」に、本剤との因果関係は明らかではないとしたうえで、海外の2型糖尿病患者を対象とした複数の観察研究でセマグルチド投与後に非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION。視神経に十分な血液が届かず、急に視野が欠けたり視力が落ちたりする病気)の発現リスク上昇が報告されている、と書かれています。因果関係は明らかでないと原典が述べているため、断定も否定もできません。
甲状腺については両剤とも「15.2」に、げっ歯類のがん原性試験で甲状腺C細胞腫瘍の発生頻度の増加が認められたとの報告があり、甲状腺髄様癌の既往のある患者、および甲状腺髄様癌または多発性内分泌腫瘍症2型の家族歴がある患者での安全性は確立していない、と記載されています。日本の添付文書では、これらの患者は禁忌になっていません。
ただし内訳は同じではありません。ウゴービは、ラットとマウスの2年間がん原性試験で、いずれも臨床用量を下回る曝露量で増加が報告されています。
マンジャロは、ラットの2年間がん原性試験では全用量で増加がみられた一方、rasH2トランスジェニックマウスを用いた6ヵ月間がん原性試験では、甲状腺C細胞の過形成も腫瘍も増加は認められませんでした。試験の期間も動物種も結果も違うため、同じリスクとして並べることはできません。
臨床上の扱いは同じです。両剤とも、投与中は甲状腺関連の症候の有無を確認し、異常があれば専門医の受診を勧めるよう求めています。
妊娠・授乳に関する記載も両剤で違う
避妊の期間が両剤で違います。ウゴービの「9.4」は2ヵ月以内に妊娠を予定する女性では投与を中止すること、マンジャロの「9.4」は最終投与後1ヵ月間の避妊を求めています。妊娠を希望する時期から逆算して伝える必要があります。
授乳については、マンジャロに実測値があります。「16.3.2」に、授乳中の健康な女性11例へ5mgを単回皮下投与したところ3例の乳汁中にチルゼパチドが検出され、濃度は4.6〜7.2ng/mLだったと記載されています。
ウゴービの「9.6」はラットでの乳汁移行の報告にとどまり、ヒトでの乳汁移行のデータはありません。減量目的の相談は妊娠を考える年代と重なるので、ここは最初に確認しておきたいところです。
よくある質問
- マンジャロからウゴービに切り替えられますか。用量の換算表はありますか
-
用量を対応させる換算表は、両剤の添付文書にもインタビューフォームにもありません。切り替える場合は開始用量から漸増し直す形になります。適応が違う薬なので、可否は主治医が判断します。
- 2剤を併用すれば、もっと体重が減りますか
-
併用しないこととされています。ウゴービの「8.12」は、他のセマグルチド含有製剤に加え、GLP-1受容体に対するアゴニスト作用を有する薬剤とも併用しないこととしており、マンジャロもこの記載に含まれます。併用を支持する公的な根拠はありません。
- ウゴービを処方してもらえる医療機関は、どう探せばよいですか
-
標榜科、学会専門医の在籍、教育研修施設の認定、常勤の管理栄養士といった要件を満たす医療機関に限られます。かかりつけ医に相談して、条件を満たす施設につないでもらうほうが確実です。
- 68週が終わったら、そのあとはどうなりますか
-
肥満症では投与は最大68週間とされ、その後は食事療法・運動療法による管理へ移ります。中止後に悪化した場合は、原則として再び6ヵ月以上の食事療法・運動療法を行ったうえで、必要な場合に限り再投与を検討します。
まとめ|マンジャロとウゴービの違いは効き目の強さではなく使える病気
- 効能又は効果は、マンジャロが2型糖尿病、ウゴービが条件付きの肥満症とMASH。重なっていない
- 減量目的で同じ土俵に立つのはウゴービとゼップバウンド。マンジャロを痩身目的で使うのは適応外
- 打ち忘れの猶予はウゴービ48時間、マンジャロ72時間。曜日を変えるときは両剤とも72時間以上あける
- ウゴービは最適使用推進ガイドラインの対象で、施設・医師・患者それぞれに要件があり、投与は最大68週間
- 併用は添付文書で「しないこと」とされ、用量の換算表は存在しない
この記事の結論は1つです。マンジャロとウゴービは、効き目の強さで並べる2択ではなく、使える病気が違う薬です。「どちらが痩せるか」と尋ねられたときにまず返すべきなのは、順位ではなく「何の治療として使うのか」という問いになります。
その前提に立つと、確認する順番も決まります。2型糖尿病の治療として来ているのか、肥満症またはMASHの治療として来ているのか。肥満症であれば、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかがあるか、BMIと健康障害の条件を満たすか、6ヵ月の食事療法・運動療法と栄養指導をすでに受けているか。ここまで揃って初めてウゴービが選択肢に入ります。
患者さんの背景で分岐する点も押さえておきたいところです。妊娠を予定している場合は、ウゴービなら2ヵ月以内に妊娠を予定する女性で中止、マンジャロなら最終投与後1ヵ月間の避妊という差があります。経口避妊薬を使っている人にはマンジャロ側の併用注意が効いてきます。手術や内視鏡の予定がある人には、休薬日数ではなく「使っていることを必ず事前に申告する」を伝えます。
日本の添付文書には休薬期間の指示がありません。両剤とも、術前の絶食指示を守っていても全身麻酔又は深い鎮静下で誤嚥が生じた症例の報告と、胃内容物が残るリスクが高まるおそれを記載するにとどめています。日数を先に言わず、麻酔科と内視鏡側に判断材料を渡すのが確実です。
窓口で最初に確認するのは、処方箋の薬剤名と病名の組み合わせ、そして他のGLP-1受容体作動薬が併用されていないかどうかです。そのうえで、打ち忘れの猶予時間と廃棄方法という、両剤で説明が変わる2点を押さえておけば、日々の指導で迷う場面はかなり減らせます。
参考文献
- マンジャロ皮下注アテオス 添付文書(日本イーライリリー、2026年5月改訂・第10版/PMDA掲載)
- ウゴービ皮下注SD 添付文書(ノボ ノルディスク ファーマ、2026年6月改訂・第7版/PMDA掲載)
- 厚生労働省「最適使用推進ガイドライン セマグルチド(遺伝子組換え)(販売名:ウゴービ皮下注)〜肥満症〜」(令和5年11月、令和8年6月改訂)
- 厚生労働省「最適使用推進ガイドライン セマグルチド(遺伝子組換え)(販売名:ウゴービ皮下注)〜代謝機能障害関連脂肪肝炎〜」(令和8年6月)
- 厚生労働省「最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(販売名:ゼップバウンド皮下注)〜肥満症〜」(令和7年3月、令和8年5月改訂)
- 厚生労働省「最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(販売名:ゼップバウンド皮下注)〜閉塞性睡眠時無呼吸症候群〜」(令和8年5月)
- 日本糖尿病学会「GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解」(2020年7月9日公表、2023年11月28日改訂)
- ノボ ノルディスク ファーマ/アストラゼネカ/日本イーライリリー「GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用に関するお知らせ」(2025年8月5日/PMDA掲載)
- 厚生労働省 中央社会保険医療協議会「市場拡大再算定及び持続可能性特例価格調整の対象品目について」(マンジャロ皮下注アテオス、令和8年8月1日適用)
- 厚生労働省 中央社会保険医療協議会「ウゴービの費用対効果評価結果に基づく価格調整について」(令和7年11月1日適用)
- ウゴービ皮下注ペン1.0MD 他 添付文書(ノボ ノルディスク ファーマ、2026年6月改訂・第5版/PMDA掲載)
- 日本糖尿病学会「マンジャロ®皮下注アテオス® 限定出荷解除日についてのお知らせ(日本イーライリリー)」(2024年5月15日)
- 日本肥満学会「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント」(2023年11月25日策定、2025年4月10日改訂)
- Aronne LJ, et al. N Engl J Med. 2025;393(1):26-36(SURMOUNT-5試験)
- Kitamoto T, et al. Curr Med Res Opin. 2026 Jul 11:1-13, doi:10.1080/03007995.2026.2695047(オンライン先行公開/日本の肥満症薬物療法の適応基準を満たす集団のサブ解析)
