タリビッド点眼とクラビット点眼の違いは?成分・適応・薬価を比較

タリビッド点眼とクラビット点眼の違いは?成分・適応・薬価を比較
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タリビッド点眼液とクラビット点眼液は、どちらも眼科でよく処方される抗菌の目薬です。名前は似ていないのに系統は同じで、成分名を見比べただけでは、なぜ2つあるのか、どちらが出ても同じなのかまでは分かりません。

この記事では、オフロキサシンとレボフロキサシンという成分の関係、抗菌力の「約2倍」が指している数字、適応症と適応菌種、添付文書の注意記載の差、濃度と剤形のちがい、薬価までを並べます。

添付文書とインタビューフォーム、感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版)、薬価基準収載品目リストに基づいて、薬剤師の立場からまとめています。

この記事でわかること
  • オフロキサシンとレボフロキサシンの関係と、「約2倍」の中身
  • 適応症・適応菌種と、添付文書の注意記載の差
  • クラビットの2つの濃度と、タリビッドの眼軟膏の位置づけ
  • 先発品同士で約2.5倍ある薬価と、後発品の扱い
目次

タリビッド点眼液とクラビット点眼液の違いを先に整理する

この2剤の違いは「効く方と効かない方」という対立ではありません。整理すると、成分の立体構造の関係、製剤のラインアップ、添付文書の注意記載、薬価の4点に集約されます。

2剤を比べる前に、いまの処方の分布を押さえておきます。国内の抗菌点眼はそのほとんどがキノロン系で、処方の90%以上をモキシフロキサシンに代表される第4世代が占めると報告されています

感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版)も、第3、第4世代のフルオロキノロン系抗菌点眼は組織への移行性が向上し、レンサ球菌への効果が強くなっていると位置づけています。

タリビッドとクラビットは、そのなかで長く使われてきた定番という位置にあります。どちらが出ても不自然ではありませんが、施設によっては第4世代が第一選択になっていることも珍しくありません。

成分・濃度・剤形の対応(どの名前が何を指すのか)

タリビッド点眼液0.3%は有効成分がオフロキサシンで、1mL中に3mgを含みます(販売開始1987年9月)。

クラビット点眼液0.5%は日本薬局方レボフロキサシン点眼液で、1mL中にレボフロキサシン水和物5mg(同2000年4月)。さらに高濃度のクラビット点眼液1.5%(15mg/mL)が2011年6月から加わりました。

剤形は、タリビッド側にだけ眼軟膏(タリビッド眼軟膏0.3%、1g中オフロキサシン3mg)があります。点眼液3製剤は薬効分類名がいずれも「広範囲抗菌点眼剤」で、規制区分は処方箋医薬品、貯法は室温保存、有効期間は3年です。

「タリビット」という表記もよく使われますが、正式な販売名は「タリビッド」です。内服のクラビット錠・タリビッド錠や点滴のクラビット点滴静注は別の剤形で、効能・効果も副作用も違います。ここで扱うのは点眼と眼軟膏に限った話です。

同じところと違うところの早見表

以下はタリビッド点眼液0.3%クラビット点眼液0.5%ほかの添付文書(2020年12月改訂・第1版、眼軟膏は2021年2月改訂・第1版)に基づく比較です。

項目タリビッド点眼液0.3%クラビット点眼液0.5%/1.5%
有効成分オフロキサシン(ラセミ体)レボフロキサシン水和物(左旋体)
濃度3mg/mL5mg/mL/15mg/mL
眼軟膏あり(0.3%)なし
適応症7疾患で同一(眼瞼炎、涙嚢炎、麦粒腫、結膜炎、瞼板腺炎、角膜炎、眼科周術期の無菌化療法)
適応菌種の差プロビデンシア属、バークホルデリア・セパシアを含むエンテロバクター属を含む
用法1回1滴、1日3回、適宜増減(眼軟膏は適量を1日3回塗布)
MRSAの注意(5項)記載なし記載あり
長期使用の注意(8.2)「長期間使用しないこと」あり記載なし
小児等(9.7)項目自体なし1.5%のみ記載あり
禁忌本剤の成分及びキノロン系抗菌剤への過敏症本剤の成分、オフロキサシン及びキノロン系抗菌剤への過敏症
薬価(1mL)107.40円42.60円/41.60円

承認された用法は3製剤とも1回1滴、1日3回ですが、これは適応症のうち軽い側を想定した回数です。感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版)には、重症例あるいは刺激による流涙が顕著な場合には30分から1時間ごとの点眼を行うと記載されています。

添付文書の「症状により適宜増減する」は、この頻回点眼までを含んだ幅です。角膜潰瘍の患者に1日3回と説明すると現場とずれますし、逆に1時間ごとの指示が来ても疑義照会の対象にはなりません。

同ガイドラインは初期治療薬についても、軽症では1剤、重症ではフルオロキノロン系、セフェム系、アミノグリコシド系から2剤を組み合わせるとしています。グラム陰性桿菌を疑う場合はフルオロキノロン系とアミノグリコシド系、グラム陽性球菌を疑う場合はフルオロキノロン系とセフェム系という例です。

抗菌点眼が2本出ている処方は、重症度の反映であって重複投与ではありません。

副作用は3製剤とも、重大な副作用がショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)で共通し、その他の副作用もびまん性表層角膜炎等の角膜障害、眼刺激、眼痛、眼瞼炎などが重なり、差は頻度区分の書き方にとどまります。

薬価は令和8年8月13日適用の薬価基準収載品目リストによります。

成分の違い:オフロキサシンとレボフロキサシンは何が違うのか

ラセミ体と左旋体:「効く側だけを取り出した」という意味

2剤は、別の薬に作り替えた関係ではなく、同じ分子のうち効いている側だけを取り出した関係にあります。オフロキサシンはラセミ体、つまり右手と左手のように鏡に映した関係の2種類が半分ずつ混ざったものです。組成が同じでも酵素へのはまり方が違い、抗菌活性も同じではありません。

レボフロキサシン水和物は、そのうち活性の高い側(左旋体)だけを取り出したものです。クラビット点眼液の添付文書には「ラセミ体であるオフロキサシンの一方の光学活性体(左旋体)であり、オフロキサシンの約2倍の抗菌活性を有する」と記載されています。

つまり「2倍」の正体は、同じ重さを点眼したときに効く側の成分が実質2倍入っている、ということです。

オフロキサシンの添付文書には、化学名が(3RS)体と記され、水酸化ナトリウム試液溶液が旋光性を示さないことも書かれています。2種類がちょうど半分ずつ含まれているということで、MIC80がほぼ全菌種でぴたりと2分の1に並ぶのは、右旋体側の抗菌活性の寄与が小さいことの表れです

作用機序は両剤とも同じ

主な作用機序は、DNAジャイレース(トポイソメラーゼII。細菌がDNAを複製するときに必要な酵素)活性とトポイソメラーゼIV活性の阻害による細菌のDNA合成阻害で、作用は殺菌的です。

どちらを強く阻害するかは細菌によって異なると添付文書に記載され、インタビューフォーム(製薬会社が作成する詳細な医薬品情報集)では、MIC(最小発育阻止濃度)とMBC(最小殺菌濃度)に大きな差はないとされています。

差がつくのは機序ではなく、どのくらいの濃度で効くかという量の側です。

「抗菌力は約2倍」「効果が高い」は、どの数字のことか

承認時試験のMIC80で見る「約2倍」

クラビット点眼液0.5%の承認時臨床試験では、外眼部感染症から採取した臨床分離株に対し、両成分の抗菌力が同じ条件で測定されています。指標はMIC80、集めた菌株の80%の発育を抑えられる濃度です。

菌種株数レボフロキサシンオフロキサシン
黄色ブドウ球菌1510.51
表皮ブドウ球菌47348
レンサ球菌属10824
肺炎球菌3924
腸球菌属2448
コリネバクテリウム属19024
緑膿菌3148
アシネトバクター属420.51
アクネ菌5040.51
インフルエンザ菌23≦0.06≦0.06

単位はμg/mL、接種菌量は10の6乗CFU/mL(CFUは菌の数を表す単位)です。ほぼ全ての菌種でレボフロキサシンの値がオフロキサシンのちょうど半分で、インフルエンザ菌だけは両者とも測定範囲の下限のため差が出ていません。この規則正しい2分の1が、添付文書にある「約2倍の抗菌活性」の実体です。

ただし現場で見るべきは、半分になった後の絶対値です。表皮ブドウ球菌、腸球菌属、緑膿菌はレボフロキサシンでも4μg/mL、コリネバクテリウム属は2μg/mLで、黄色ブドウ球菌の0.5μg/mLとは一桁近い開きがあります

半分になっても、もともと高い菌は高いままです。同ガイドラインは、コリネバクテリウムにフルオロキノロン系抗菌薬へ耐性化を示す株があり、治療上注意を要すると記載しています。

高齢者の結膜炎で主な起炎菌となるコリネバクテリウムでは、高度のキノロン耐性が認められるという指摘もあります。長引く高齢者の結膜炎に同じ抗菌点眼を出し続ける形が、この2剤でいちばん避けたい使い方です。

直接比較した第III相試験(97.2%と88.1%)と、その読み方

2剤を直接比べた試験もあります。クラビット点眼液0.5%の国内第III相試験では、外眼部細菌感染症の患者366例(有効性の解析対象287例)に、本剤または0.3%オフロキサシン点眼液を1回1滴、1日3回、原則3日以上(症状消失後2日まで、通算14日間まで)点眼しました。

有効率はレボフロキサシン0.5%群97.2%(140/144例)、オフロキサシン0.3%群88.1%(126/143例)で、レボフロキサシン群が有意に優れた臨床効果を示しました。

副作用は本剤群176例中5例(2.8%)、主なものはしみることとそう痒感が各1.1%(2/176例)です。評価は日本眼感染症学会制定の評価判定基準(1985年改訂、1988年・1993年一部追加)に準拠しています。

ただし国内第II相試験では差が出ていません。252例(解析対象181例)で、レボフロキサシン0.3%群90.6%(58/64例)、0.5%群92.2%(59/64例)、オフロキサシン0.3%群90.6%(48/53例)と、3群間に有意差は認められませんでした。

この結果を「クラビットの方が効く薬だ」と一般化するのは行きすぎです。比較されたのは0.5%レボフロキサシンと0.3%オフロキサシンで、濃度も含めた製剤同士の比較であり、成分そのものの優劣を検証した試験ではありません。

MICの差にも同じ注意が要ります。MICは試験管の中(in vitro)で測った指標で、点眼薬が眼の表面で到達する濃度とは桁が違うためです。レボフロキサシンの最高血中濃度は点滴で9μg/mL、内服で8μg/mLですが、点眼では3,000から15,000μg/mLに達すると報告されています

製剤の濃度から計算すると、タリビッド点眼液0.3%は3,000μg/mL、クラビット点眼液0.5%は5,000μg/mL、同1.5%は15,000μg/mLです。上の表でMIC80がいちばん高い菌でも4から8μg/mLですから、点眼液そのものの濃度はその1,000倍前後になります。

MIC80が2倍違うことの意味は、この桁の前ではかなり小さくなります。

感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版)にも、点眼薬中の薬剤は高濃度であるため、耐性と示されていてもすでに使用して十分な効果が得られていればそのまま継続して差し支えない、という記載があります。つまり「タリビッドが出たから弱い薬にされた」という受け取り方は、根拠として弱いということです。

添付文書の注意書きの差(実務でいちばん効くのはここ)

適応症は同じで、適応菌種にわずかな差がある

適応症は3製剤で完全に同一で、上の表に挙げた7疾患が文言まで一致します。

7疾患のうち、眼科周術期の無菌化療法だけは使い方が他と違います。承認された用法は1日3回ですが、承認時の臨床試験はいずれも1日5回、手術前2日間という設計で行われています

タリビッド点眼液では眼手術患者367例の全例で術後感染がみられず、クラビット点眼液0.5%では無菌化率70.0%(35/50例)でした。裏を返せば、術前に点眼しても結膜嚢を完全に無菌にはできないということです。

周術期のキノロン系点眼は、使用期間の見直しも検討されている段階です。術前の点眼を「これで菌はゼロになる」と説明しないほうが、実態に合います。

適応菌種にはわずかな差があります。タリビッド点眼液にだけ入っているのがプロビデンシア属とバークホルデリア・セパシア、クラビット点眼液にだけ入っているのがエンテロバクター属です。これは承認された効能・効果の記載の差であって、抗菌スペクトルの優劣を示すものではありません。

MRSAへの注意はクラビットだけに書かれている

クラビット点眼液0.5%・1.5%には「5. 効能・効果に関連する注意」があります。

本剤におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する有効性は証明されていないので、MRSAによる感染症が明らかであり、臨床症状の改善が認められない場合、速やかに抗MRSA作用の強い薬剤を投与すること、という内容です。

インタビューフォームには、レボフロキサシンの眼科由来MRSAに対するMIC80が32μg/mLであり治療薬としては十分といえないと判断された、と根拠が示されています。

タリビッド点眼液には、この5項そのものがありません。ただし記載が無いことは「タリビッドならMRSAに効く」という意味ではありません。オフロキサシンはレボフロキサシンを含むラセミ体で、MRSAへの活性がむしろ高いと考える理由はないためです。

眼科で問題になるのはMRSAだけではありません。感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版)は、MRSAと並べてメチシリン耐性表皮ブドウ球菌(MRSE)を多剤耐性菌に挙げています。MIC80の表でも、表皮ブドウ球菌はレボフロキサシンで4μg/mLと高い部類です。

その「抗MRSA作用の強い薬剤」が何かは、添付文書には書かれていません。同ガイドラインは、クロラムフェニコール点眼がMRSAやMRSEを起炎菌と診断された感染症に適応を持つ一方、静菌的で自家調整のバンコマイシン塩酸塩点眼より効果が劣ると記載しています。

自家調整剤は各施設の手続きが要るため、実務上はまず眼科への紹介が現実的な出口になります。

「長期間使用しないこと」はタリビッドだけに書かれている

逆に、タリビッド側にだけある記載もあります。8.1「本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること」は両剤に共通です。

これに加えて、タリビッド点眼液0.3%とタリビッド眼軟膏0.3%には8.2「長期間使用しないこと」があり、クラビット点眼液0.5%・1.5%にはこの項がありません。3製剤とも日数の上限そのものは書かれていないため、いつまで続けるのかを尋ねられたときは、この8.1と8.2が直接の根拠になります。

記載の有無は、注意の要不要の差ではありません。キノロン系抗菌点眼を長期に投与していると、選択的にMRSAが増えることが指摘されています。感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版)にも、抗菌薬の長期点眼下での細菌感染ではMRSAが多いという記載があります。

この耐性菌選択のリスクは、レボフロキサシンにも同じようにかかります。8.2が無いことを「クラビットなら長く続けてよい」と読み替えないよう、必要最小限の期間にとどめる8.1が両剤に共通である点を先に置いて説明します。

キノロン系はWHOのAWaRe分類でWatchに分類され、限られた疾患と適応にのみ使うことが求められる群です。

なおタリビッド点眼液とクラビット点眼液0.5%の承認時の試験は、原則3日以上(症状消失後2日まで)、上限はおおむね2週間として組まれていました。クラビット点眼液1.5%の第III相試験は14日間の投与です。試験デザインであって承認された用法ではありませんが、期間の目安にはなります。

小児と禁忌の記載の差(「8歳未満は禁忌」は誤り)

クラビット点眼液1.5%にだけ、9.7小児等の項があります。内容は「低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は8歳未満の小児に投与した臨床試験は実施していない」です。クラビット点眼液0.5%とタリビッド点眼液0.3%には、9.7の項自体がありません。

「臨床試験を実施していない」は「禁忌」ではありません。3製剤のいずれにも、使ってよい年齢の下限を定めた記載はありません。8歳未満には使えない、と説明すると事実と食い違います。使用の可否は処方医の判断になります。

禁忌の書き方も非対称です。タリビッド点眼液は「本剤の成分及びキノロン系抗菌剤に対し過敏症の既往歴のある患者」、クラビット点眼液は「本剤の成分、オフロキサシン及びキノロン系抗菌剤に対し過敏症の既往歴のある患者」と、オフロキサシンが名指しで加えられています。

オフロキサシンで過敏症を起こした人はレボフロキサシンでも起こしうる、という関係の表れです。

なお妊婦(9.5)と授乳婦(9.6)は3製剤とも同じ文言で、妊婦には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与、授乳婦では治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮して授乳の継続または中止を検討する、と書かれています。

製剤の違い:クラビットの2つの濃度と、タリビッドの眼軟膏

クラビット点眼液0.5%と1.5%はどう違うのか

濃度は5mg/mLと15mg/mLで3倍の差があります。添加剤も0.5%は塩化ナトリウムとpH調節剤、1.5%は濃グリセリンとpH調節剤と異なり、性状も0.5%が微黄色から淡黄色の澄明な液、1.5%は微黄色から黄色とやや濃くなります。

効能・効果は同一です。1.5%の国内第III相試験は細菌性結膜炎と細菌性角膜炎の患者238例(有効性の解析対象176例)を対象に実施され、有効率は100%(結膜炎170/170例、角膜炎6/6例)でした。

副作用は238例中7例(2.9%)、主なものは眼刺激3件(1.3%)です。眼刺激の頻度区分は1.5%だけが1〜5%未満で、0.5%とタリビッド点眼液は1%未満と、しみやすさに記載上の差があります。

しみやすさは、単なる使い心地の話ではありません。感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版)は、頻回点眼が副作用の発生率を高めること、とくに高濃度の薬剤やアミノグリコシド系は角膜上皮障害を生じやすいことを挙げています。

1.5%だけに角膜沈着物が頻度不明として記載されているのも、高濃度製剤であることと切り離せません。角膜炎で1.5%を頻回に使っている患者が「またしみるようになった」と訴えたときは、感染の悪化だけでなく点眼による角膜上皮障害も併せて考えます。

高濃度である意味は、1.5%の添付文書18.3に示されています。

in vitro眼組織中濃度シミュレーションモデルで、1.5%の1日3回点眼は0.5%の1日3回点眼と比べ、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MIC 0.5μg/mL)と緑膿菌(MIC 1μg/mL)の耐性菌出現を抑制した、という内容です。

試験管内のモデルであり、臨床で耐性菌を減らせることを示したものではありません。

感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版)は、高濃度のレボフロキサシン水和物点眼が使用できることでグラム陰性菌に対する治療効果が向上した、と位置づけています。

1.5%だけにある「涙嚢部を圧迫」の指導と、苦味の副作用

クラビット点眼液1.5%の適用上の注意には、他の2製剤には無い一文があります。患眼を開瞼して結膜嚢内に点眼し、1〜5分間閉瞼して涙嚢部を圧迫させた後、開瞼すること、という指導です。あわせて1.5%だけに、味覚異常(苦味等)が「その他」の欄に、角膜沈着物が眼の頻度不明欄に記載されています。

涙嚢部の圧迫は、目頭を軽く押さえて、点眼液が鼻涙管から鼻やのどへ流れ込む量を減らす手技です。

添付文書に因果関係の説明はありませんが、高濃度の製剤に苦味の記載と涙嚢部圧迫の指導が併存することから、鼻やのどへ流れた薬剤が味として感じられるためと考えられています。「差すと口が苦くなる」という訴えは、記載のある事象です。

眼軟膏があるのはタリビッドだけ(適応菌種にトラコーマクラミジア)

タリビッド眼軟膏0.3%は1g中にオフロキサシン3mgを含み、添加剤は精製ラノリン、流動パラフィン、白色ワセリンです。3.5gのチューブで有効期間は4年です。他の点眼剤と併用する場合は本剤を最後に使用し、少なくとも5分以上あけることも適用上の注意に明記されています。

見落とされやすいのが適応菌種です。眼軟膏にはトラコーマクラミジア(クラミジア・トラコマティス。細胞の中でしか増えられない細菌の一種)が含まれますが、点眼液にはオフロキサシン、レボフロキサシンのいずれも含まれていません。同じ成分でも、剤形が変わると承認された適応菌種が変わります。

これに対応して、用法・用量に関連する注意には、トラコーマクラミジアによる結膜炎の場合には8週間の投与を目安とし、その後の継続投与については慎重に行うこと、と記載されています。

臨床成績では、外眼部細菌感染症で有効率95.2%(79/83例)、トラコーマクラミジアによる結膜炎で97.7%(42/43例、未発表例を含む)と報告されています。

クラミジア・トラコマティスは、性感染症の原因菌でもあります。眼科医の解説では、尿道炎や咽頭炎の合併があるため経口薬の全身投与を併用するという運用が紹介されています。ただしこの併用を定めた公的な記載は確認できていないため、現場でそう語られている水準の情報です

眼軟膏だけで8週間続ける前に、パートナーを含めた感染源の評価が要る疾患だという点は押さえておきます。

眼軟膏にステロイドは入っていない

タリビッド眼軟膏0.3%の組成は、有効成分のオフロキサシンと基剤だけで、ステロイドは配合されていません。抗菌薬は原因になっている細菌を叩く薬、ステロイドは炎症そのものを抑える薬で、目的が違います。眼科で両方が同時に処方されることはありますが、別々の薬剤として出ているということです。

なお併用は無条件に推奨されているわけではありません。感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版)のCQ-5(CQ=ガイドラインが答えを示す臨床上の疑問)では、細菌性角膜炎の治療に副腎皮質ステロイド点眼は併用しないことを提案する、とされ、推奨の強さは「使用しないことを弱く推奨する」と記載されています。

弱い推奨ですから一律に禁じられているのではなく、症例ごとに判断される領域です。

遮光の指示には、製剤ごとの安定性データの裏づけがある

遮光して保存することは3製剤に共通の指示で、これは慣習ではありません。

裸の点眼容器を光に当てた苛酷試験では、タリビッド点眼液は25℃・90万lx・hr、クラビット点眼液0.5%は25℃・30万lx・hr(lx・hrは浴びた光の積算量の単位)で含量の低下が確認され、規格外となりました。いずれも遮光用の透明投薬袋に入れた条件では規格内です。

ただし試験条件が完全に同一とは限らないため、どちらが何倍光に弱い、という比較には使えません。両製品とも包装に投薬袋が同梱されているので、袋に入れたまま保管するよう指導します。

薬価と後発品の違い

意外に開きがあるのが薬価です。令和8年8月13日適用の薬価基準収載品目リストで並べると、次のようになります。

品名規格薬価
タリビッド点眼液0.3%0.3% 1mL107.40円
オフロキサシン点眼液0.3%(後発各社)0.3% 1mL28.30〜107.40円
クラビット点眼液0.5%0.5% 1mL42.60円
クラビット点眼液1.5%1.5% 1mL41.60円
レボフロキサシン点眼液0.5%(後発各社)0.5% 1mL20.80〜21.80円
レボフロキサシン点眼液1.5%(後発各社)1.5% 1mL19.10〜25.90円
タリビッド眼軟膏0.3%0.3% 1g113.50円

先発品同士では、タリビッド点眼液0.3%がクラビット点眼液0.5%の約2.5倍です。5mL入り1本に換算すると537.0円と213.0円になります(記事執筆時点の薬価による計算)。古い薬の方が高いという直感に反しますが、薬価は改定のたびに市場実勢価格を反映するため、こうした逆転は珍しくありません。

濃度が3倍のクラビット点眼液1.5%も41.60円で、0.5%とほぼ同額です。1.5%が処方されていても、高い方を選ばれているわけではありません。

後発品の扱いにも違いがあります。薬価基準収載品目リストでは、クラビット点眼液0.5%・1.5%には「同一剤形・規格の後発医薬品がある先発医薬品」の欄に○が付き、レボフロキサシン点眼液の各社品は後発医薬品として記載されています。

一方、タリビッド点眼液0.3%にはこの○が無く、オフロキサシン点眼液0.3%の各社品も同じ欄が空欄です。この区分の理由は公的な資料で確認できていないため、リスト上の事実の提示にとどめます。

窓口で聞かれるのは、区分よりも中身です。確認した範囲では、オフロキサシン点眼液0.3%「ニットー」の添加剤は先発と同じ塩化ナトリウムとpH調節剤で、防腐剤は含まれていません。ウサギでの眼房水中および角膜中の濃度でも、先発との生物学的同等性が確認されています。

ただし添加剤は後発品ごとに異なりうるため、防腐剤の有無を聞かれたときは、その製品の添付文書で確かめるのが確実です。

価格差は説明の材料にはなりますが、選択の理由にはなりません。どちらを使うかは、患者の状態と施設の採用薬を踏まえた処方医の判断です。

良くならないときと、適応の外側にある使われ方

改善しないときに何を疑うか(再評価の目安)

抗菌点眼を続けても改善しない場合、量や日数を足す前に確認すべきことがあります。ガイドラインは、治療効果が乏しいときの確認事項として3点を挙げています。

  1. 治療方針の見直し(起炎菌を推測し直す、真菌の可能性を考える)
  2. 混合感染の可能性(外傷では細菌と真菌、アトピー性皮膚炎の患者では治療中の角膜ヘルペス併発)
  3. 患者のアドヒアランス(指示どおりに点眼できているかの確認)

同ガイドラインのCQ-1「細菌性角膜炎の診断において有用な検査は何か」への推奨は塗抹検鏡と培養検査を強く推奨するというもので、推奨の強さは「実施することを強く推奨する」です。経験的に薬を替え続ける前に、検査で確かめる方向が示されています。

そもそも細菌感染ではない可能性も残ります。薬剤耐性(AMR)臨床リファレンスセンターは、キノロン系点眼で改善しない結膜炎には、アレルギー性、ウイルス性、薬剤毒性、涙小管炎などの別の疾患が隠れていることが少なくないと指摘しています。

このうち薬剤毒性は、点眼そのものが原因になっている状態です。感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版)には、薬剤毒性角膜症で生じる分岐したひび割れ状のラインが特徴的な形態を示し、国内ではepithelial crack lineと呼ばれていると記載されています。

点眼を足すほど悪くなる患者がいるという視点を持っておくと、「効かないからもう1本」で終わらせずに済みます。同じ抗菌点眼を数週間続けている慢性結膜炎の患者は、まずこの可能性を疑う対象です。

強い眼痛、視力の低下、黒目に白い濁りが見える、コンタクトレンズ装用者の充血と眼痛は、角膜炎や角膜潰瘍として緊急性が高く、次の受診日を待たずに眼科を受診するよう指示します。残った目薬を家族に使う、以前もらった目薬を使い回すことも、診断が違えば効かないうえに耐性菌を選択するため避けるよう伝えます。

細菌かどうかを見極めてから抗菌薬を使うという考え方は、風邪に抗生物質が必要になる場面の整理とも共通します。

ステロイド点眼併用下のアレルギー性結膜炎は、審査上どう扱われるか

前提として、両剤の効能・効果は先に挙げた7疾患であり、アレルギー性結膜炎は含まれていません。実際の臨床では、ステロイド点眼を使っているアレルギー性結膜炎の患者に、細菌感染の併発を防ぐ目的で抗菌点眼が併せて処方されることがあり、これは適応外使用にあたります。

この点は、社会保険診療報酬支払基金の統一事例【投薬】243(令和6年7月31日)に取扱いが示されています。ステロイド点眼剤の投与がある場合のアレルギー性結膜炎に対する広範囲抗菌点眼剤の算定は、原則として認められない、という内容です。

細菌性結膜炎を併発した場合の投与は有用だが、発症抑制を目的とした投与は保険診療上適切ではないと考える、というのが記載されている理由です。

あくまで「原則として」であり、審査の判断は地域や症例によって変わりうるため、一律に算定できないとは言えません。処方するかどうかは、細菌感染が実際にあるかという診断に基づく処方医の判断です。

よくある質問

同じものを市販薬で買えますか

いずれも処方箋医薬品で、同じものを薬局で購入することはできません。市販の抗菌目薬はサルファ剤を配合した製品で、成分も適応も異なります。症状が続くときは受診をすすめてください。

コンタクトレンズをつけたまま点眼できますか

3製剤とも添付文書に装用の制限は記載されておらず、添加剤に防腐剤の記載もありません。ただし感染性角膜炎の発症誘因ではコンタクトレンズ装用が最多とされ、治療中に装用してよいかは主治医の判断になります。

フルメトロンなど他の目薬とは、どちらを先に差しますか

添付文書の規定は「他の点眼剤とは少なくとも5分以上あける」だけで、どちらが先かの定めはありません。懸濁性の点眼を後に回す運用が一般的とされますが、施設や処方医の指示に従ってください。眼軟膏は最後に使います。

ものもらいや目やにには、必ず抗菌の目薬が必要ですか

充血と目やにだけで抗菌点眼を使うべきではない、というのが専門医の指摘です。細菌性では好中球が主体の黄色く粘る膿性の目やに、アレルギー性やウイルス性では透明でさらさらした目やにが多いとされます。麦粒腫でも霰粒腫との鑑別が必要なので、眼科での診断をすすめてください。

残った目薬は取っておいて使えますか

後日の使い回しや家族への流用は避けるよう伝えてください。診断が違えば効果は期待できず、耐性菌を選ぶことにつながります。添付文書にも、必要最小限の期間の投与にとどめるよう記載があります。

まとめ:タリビッド点眼とクラビット点眼の違いをどう説明するか

2剤の違いは、この4点に集約される
  • 成分の関係:レボフロキサシンはオフロキサシンの左旋体で、抗菌活性は約2倍。MIC80はほぼ全菌種でちょうど2分の1
  • 製剤の幅:クラビットは0.5%と1.5%の2濃度、タリビッドは点眼液と眼軟膏の2剤形。眼軟膏だけトラコーマクラミジアが適応菌種に入る
  • 適応症は3製剤とも同一。どちらが処方されていても不適切ということはない
  • 添付文書の記載差:MRSAの注意はクラビットだけ、「長期間使用しないこと」はタリビッドだけ、小児等の記載はクラビット1.5%だけ。記載の有無は耐性菌リスクの差ではない
  • 薬価:先発同士でタリビッド点眼液が約2.5倍。クラビットは0.5%と1.5%がほぼ同額(記事執筆時点の薬価)

結論を一つに絞るなら、違いは「効く方と効かない方」ではありません。第III相試験で差は示されていますが、濃度を含めた製剤同士の比較であって、成分の優劣を決めた試験ではないためです。

患者から「前と違う薬になった」と言われたときは、同じ系統の抗菌の目薬で、使える病気の範囲も同じだと先に伝えると、不安の大部分は解消します。そのうえで1日3回という用法、他の目薬とは5分以上あけること、眼軟膏があるなら最後に使うことを確認します。

まず確認したいのは、その点眼が適応症の範囲で使われているか、そして何日目で再評価する予定かです。良くならないときに薬を足すのではなく、診断に戻る。その線を持っておくことが、2剤のどちらを使う場面でも共通して効いてきます。

参考文献

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この記事を書いた人

花(はな)|病院薬剤師・感染制御認定薬剤師・病院薬学認定薬剤師
病院薬剤師として20年以上勤務し、現在も医療現場でICT(感染対策)やAST(抗菌薬適正使用)などに携わっています。記事では電子添文、インタビューフォーム、診療ガイドライン、公的機関・学会の資料などを確認し、医薬品や感染症に関する情報を分かりやすくまとめています。

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