毒薬・劇薬と毒物・劇物の違いは?表示の色と保管、一覧の調べ方を解説

毒薬・劇薬と毒物・劇物の違いは?表示の色と保管、一覧の調べ方を解説
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「毒薬」「劇薬」「毒物」「劇物」は、名前が似ているうえに現場でも試験でも並べて出てくるため、どれがどの制度の話なのか整理がつかなくなりがちです。とくに表示の色と、施錠が要るかどうかは、麻薬の規定とも混ざって覚え違いが起きやすいところです。

この記事では、4つの区分の根拠法・表示・保管の違い、指定を判断する数値の基準が2系統あること、名簿と濃度による除外の調べ方を扱います。薬機法と毒物及び劇物取締法の条文、厚生労働省の判定基準をもとにしています。

この記事でわかること
  • 毒薬・劇薬と毒物・劇物を分けている根拠法と「医薬用外」の意味
  • 表示の色と枠の違い、施錠義務があるのはどの区分か
  • 毒薬30 mg/kgと毒物50 mg/kgという2系統の判定基準
  • 一覧の調べ方と、濃度で劇物から外れるケース
目次

毒薬・劇薬と毒物・劇物は、根拠にしている法律が違う

この4つは字面が似ているため、ひとつの制度の4段階だと受け取られがちです。実際は、別々の2つの法律が2区分ずつ持っています。毒薬・劇薬は医薬品の中の区分で根拠は医薬品医療機器等法(以下、薬機法)、毒物・劇物は医薬品以外の化学物質の区分で根拠は毒物及び劇物取締法(以下、毒劇法)です。

区分根拠になる法律容器・被包の表示保管譲渡の書面・保存・交付制限
毒薬薬機法44条1項黒地に白枠、白字で品名と「毒」他の物と区別し、かぎを施す(48条)署名又は記名押印の文書/2年/14歳未満に交付不可(薬剤師等への販売は文書不要・46条2項)
劇薬薬機法44条2項白地に赤枠、赤字で品名と「劇」他の物と区別する(施錠の定めなし)署名又は記名押印の文書/2年/14歳未満に交付不可(薬剤師等への販売は文書不要・46条2項)
毒物毒劇法2条1項「医薬用外」+赤地に白色で「毒物」盗難・紛失を防ぐ必要な措置(11条)押印又は署名の譲受書/5年/18歳未満に交付不可(病院・薬局が購入するときも必要)
劇物毒劇法2条2項「医薬用外」+白地に赤色で「劇物」盗難・紛失を防ぐ必要な措置(11条)押印又は署名の譲受書/5年/18歳未満に交付不可(病院・薬局が購入するときも必要)

覚えるべきものは毒性の順番ではありません。①根拠法 ②表示 ③保管 ④譲渡、の4点セットが法律ごとに別々に決まっています。

譲渡の書面を保存する年数(2年と5年)と、交付できない年齢(14歳未満と18歳未満)は実務で最も入れ替えられるので、根拠の条文とセットで押さえてください(薬機法46条・47条、毒劇法14条・15条)。

医薬品側にはもう1つ、開封して売れる者を限る規定があります。薬機法45条は、店舗管理者が薬剤師である店舗販売業者と、医薬品営業所管理者が薬剤師である卸売販売業者以外の販売業者に対し、封を開いて毒薬・劇薬を販売・授与すること、その目的で貯蔵・陳列することを禁じています。

実務で効いてくるのは、この書面が必要になる相手が2つの法律で違う点です。薬機法46条2項は、薬剤師等に対してその身分に関する公務所の証明書の提示を受けて販売する場合と、常時取引関係のある薬剤師等に販売する場合には、1項の文書を要しないとしています。

つまり卸から劇薬を仕入れるたびに書面を交わす必要はありません。一方、毒劇法14条にはこの形の除外がなく、病院や薬局が病理用のホルマリンを買うときは、押印または署名をした譲受書を提出します。同じ「書面」でも、日常の負担がまったく違います。

年齢の制限にも読み替えの落とし穴があります。47条の交付制限について、処方箋により調剤された薬剤は特定の人への使用が決まっているため薬機法上の医薬品には当たらず、14歳未満でも交付できるという解釈が示されています。条文が想定しているのは、店頭での販売・授与の場面だと押さえてください。

毒薬・劇薬は、薬機法が指定した「医薬品」

薬機法44条1項は毒薬を「毒性が強いものとして厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定する医薬品」、2項は劇薬を「劇性が強いものとして…指定する医薬品」と定義します。どちらも文末が「医薬品」で終わる点が肝心で、試薬や工業薬品の話ではありません。

また「指定する医薬品」とあるとおり、毒性の数値が一定以下なら自動的に毒薬になる仕組みでもありません。なお毒薬・劇薬は一般用医薬品(市販薬の第1類から第3類)にはならず、薬機法4条5項3号が要指導医薬品の対象として毒薬と劇薬を挙げています。

毒物・劇物は、「医薬品と医薬部外品以外のもの」

毒劇法2条1項は毒物を「別表第一に掲げる物であつて、医薬品及び医薬部外品以外のものをいう」と定義します。2項の劇物も「別表第二に掲げる物であつて、医薬品及び医薬部外品以外のもの」です。

定義そのものに「医薬品及び医薬部外品以外」と書き込まれているため、同じ成分でも医薬品や医薬部外品として扱われている限り毒物・劇物には当たりません。成分が何かではなく、どの資格で流通しているかで適用される法律が決まります。

ラベルの「医薬用外」が意味していること

試薬瓶や消毒薬にある「医薬用外劇物」の表示は、毒劇法12条1項が義務づけているものです。意味は文字どおり、医薬品ではない用途のもの。前項の2条の定義を、容器の上で目に見える形にしたのがこの4文字です。

逆に、医薬品である劇薬の容器に「医薬用外」と書くことはありません。付いていれば毒劇法、付いておらず「毒」「劇」の1文字と枠があれば薬機法。目の前の容器がどちらの法律の話かは、この4文字で判別できます。

「毒性が強いから毒物」ではない。名簿に載っているかで決まる

「毒物のほうが劇物より毒性が強い」で理解を止めているケースがあります。方向は外れていませんが、仕組みとしては正確ではありません。毒劇法2条は「別表第一に掲げる物であつて」と書いており、毒性の程度そのものを要件にしていないからです。薬機法44条も「厚生労働大臣が…指定する医薬品」です。

どちらも名簿に載っているかで決まります。判断には後述の基準が使われますが、基準に当てはまることと実際に指定されていることは別で、厚生労働省も判定基準は薬事審議会における審議の参考とするものである旨を令和6年12月の改定案で明記しています。

実務上は、自己判断せずに名簿を引くことに尽きます。ただし、名簿に載っていないから安全、とも読み替えないでください。

毒薬・劇薬の一覧はどこで確認するか

医薬品側の名簿は、薬機法施行規則204条が「法第四十四条第一項及び第二項に規定する毒薬及び劇薬は、別表第三のとおりとする」と定めており、実体は同規則の別表第三です。別表第三は「毒薬」「劇薬」の2部構成で、それぞれ〈生薬、動植物成分及びそれらの製剤〉〈生物学的製剤及び抗菌性物質製剤〉〈無機薬品及びその製剤〉〈有機薬品及びその製剤〉の4カテゴリーに分かれています。

ただ、手元の1品目のために毎回この別表を引くのは現実的ではありません。含量による除外規定が数多く置かれているためでもあります。たとえば「アクチノマイシンD及びその製剤。ただし、一バイアル中アクチノマイシンD〇・五mg力価以下を含有するものを除く。」「マイトマイシンC及びその製剤。ただし、一個又は一バイアル中マイトマイシンC二mg力価以下を含有するものを除く。」という書き方です。

つまり原体が毒薬でも、流通している製剤が毒薬とは限りません。個別の製品を知りたいときの最短ルートは、その製品の添付文書にある「規制区分」欄です。麻酔で使うロクロニウム臭化物(エスラックス静注)とスキサメトニウム塩化物は毒薬、ジギタリス製剤のジゴキシンは劇薬と記載されています。

感染対策の現場では、消毒薬が分かりやすい例になります。内視鏡の消毒に使うグルタラール製剤(ステリハイドL)と過酢酸製剤(アセサイド6%消毒液)は、どちらも医薬品で規制区分は劇薬です。容器に「医薬用外」は付きません。

一方、病理検査室のホルマリンは医薬品ではないため医薬用外劇物になります。ホルムアルデヒドという同じ成分が、医薬品かどうかで別の法律に振り分けられるわけです。同じ建物の中に、両方が並んで置かれています。

毒物・劇物の一覧はどこで確認するか(特定毒物を含む)

毒劇法側の名簿は3段構えです。法の別表第一(毒物・28号)、別表第二(劇物・94号)、別表第三(特定毒物・10号)があり、各表の最終号が政令に委任しています。その政令が「毒物及び劇物指定令」(昭和40年政令第2号)です。

別表第一(毒物)には、シアン化水素、シアン化ナトリウム、水銀、砒素、セレン、ニコチン、弗化水素、黄燐、クラーレ、四アルキル鉛などが並びます。

別表第二(劇物)で医療現場にもあるものを挙げると、ホルムアルデヒド(第81号)、メタノール(第83号)、フエノール(第70号)、クロロホルム(第20号)、過酸化水素(第10号)、蓚酸(第49号)、硫酸(第89号)、水酸化ナトリウム(第54号)、クレゾール(第15号)、塩化水素(第8号)、アンモニア(第4号)、四塩化炭素(第26号)。さらに指定令2条により、キシレン(第22号の4)、酢酸エチル(第30号の3)、塩素(第17号の3)も劇物です。

別表第三の特定毒物は、毒物のさらに上に置かれた区分です。毒劇法2条3項が「毒物であつて、別表第三に掲げるもの」と定義し、四アルキル鉛、モノフルオール酢酸、モノフルオール酢酸アミド、パラチオン(ジエチルパラニトロフエニルチオホスフエイト)など全10号。判定基準では、毒物のうち毒性が極めて強く危害発生のおそれが著しいものを特定毒物とする、とされています。

一覧を「これで全部」と言い切れないのは、指定令が改正されるからです。直近では令和7年10月29日公布の政令第358号で、フエナザキンおよびこれを含有する製剤が新たに劇物に指定されました(19.4%以下を含有するものを除く)。ここに書いた内容は2026年8月時点で、最新は厚生労働省とe-Gov法令検索の毒物及び劇物取締法で確認してください。

濃度で外れることがある(オキシドールは劇物ではない)

「過酸化水素が劇物なら、消毒に使うオキシドールも劇物なのでは」と思った方がいるかもしれません。ここに濃度の話が入ります。指定令2条19号は「過酸化水素を含有する製剤。ただし、過酸化水素六%以下を含有するものを除く」としており、過酸化水素約3%の一般的なオキシドールはこの除外に当たります。

もう一段付け加えると、薬局にあるオキシドールは日本薬局方に収載された医薬品です。毒劇法2条の定義が「医薬品及び医薬部外品以外のもの」である以上、濃度を待たずに毒劇法の対象から外れます。濃度の除外規定が効いてくるのは、同じ過酸化水素でも医薬品ではない製品のほうです。

濃度で扱いが変わるのは消毒薬に共通する話で、手指消毒用アルコールの有効濃度と使い分けも同じように濃度で決まります。

同じ形の除外規定はいくつもあります。アンモニアは10%以下を含有するものを除く(2条8号)、塩化水素も10%以下を除く(2条16号)、クレゾールは5%以下を除く(2条25号)という具合です。

この数字が意味するのは、劇物に指定された成分を含む製品でも劇物とは限らない、ということ。逆に、同じ成分名でも高濃度の原液は劇物という状態が同じ部屋の中で並びます。判断の単位は成分名ではなく、製品ごとの濃度です。

そもそも名簿に載っていない成分もあります。メタノールは劇物(別表第二第83号)ですが、エタノールは毒物及び劇物指定令に掲名がなく、毒物にも劇物にも当たりません。消毒用エタノールで管理の対象になるのは毒劇法ではなく、消防法の危険物第4類アルコール類としての貯蔵量です。

医薬品側も同じで、別表第三の毒薬の部ではアクラルビシンが「一バイアル中アクラルビシンとして二〇mg力価以下を含有するものを除く」などを除外しています。医薬品なら添付文書の規制区分欄、試薬なら製品ごとのSDS(安全データシート)と指定令を見るのが確実です。

指定を判断する数値の基準は、2系統ある

ここが最も取り違えやすい場所です。どちらにも「何mg/kgで指定するか」という基準がありますが、別々に作られた別の基準で、数字も一致していません。経口で比べると毒薬は30 mg/kg以下、毒物は50 mg/kg以下。同じ「重いほうの区分」でも閾値が違います。

投与・ばく露の経路毒薬劇薬毒物劇物
経口30 mg/kg以下300 mg/kg以下LD50が50 mg/kg以下LD50が50超300 mg/kg以下
皮下20 mg/kg以下200 mg/kg以下項目なし項目なし
静脈内(腹腔内)10 mg/kg以下100 mg/kg以下項目なし項目なし
経皮項目なし項目なしLD50が200 mg/kg以下LD50が200超1,000 mg/kg以下
吸入(ガス)項目なし項目なしLC50が500 ppm(4hr)以下LC50が500超2,500 ppm(4hr)以下
吸入(蒸気)項目なし項目なしLC50が2.0 mg/L(4hr)以下LC50が2.0超10 mg/L(4hr)以下
吸入(ダスト、ミスト)項目なし項目なしLC50が0.5 mg/L(4hr)以下LC50が0.5超1.0 mg/L(4hr)以下

毒薬・劇薬の欄は「概略の致死量」、毒物・劇物の欄はLD50(半数致死量。試験動物の半数が死亡する投与量)です。同じ表に並べていますが、指標そのものが違う点に注意してください。

毒薬・劇薬の指定基準と、急性毒性以外の6つの視点

医薬品側の基準は、平成10年3月12日に中央薬事審議会常任部会で了承された「毒薬・劇薬指定基準」で、2本立てです。1本目は急性毒性で、概略の致死量が上の表の値のいずれかに該当するもの。信頼限界が付されているものはその下限を採用し、動物の種類や投与法で差異があるものは原則として最も強い急性毒性を示すものを採用します。

見落とされがちなのが2本目。急性毒性の数値に届かなくても、次のいずれかに該当すれば指定されうる、という6つの視点です(毒薬と劇薬のどちらに指定するかは程度により判断)。

  • 原則として、動物に薬用量の10倍以下の長期連続投与で、機能又は組織に障害を認めるもの
  • 通例、同一投与法による致死量と有効量の比又は毒性勾配から、安全域が狭いと認められるもの
  • 臨床上中毒量と薬用量が極めて接近しているもの
  • 臨床上薬用量において副作用の発現率が高いもの又はその程度が重篤なもの
  • 臨床上蓄積作用が強いもの
  • 臨床上薬用量において薬理作用が激しいもの

この6項目があるため、劇薬は「致死量が低い薬」とは限りません。効く量と危ない量が近い、副作用が重い、蓄積する、といった安全域の狭さだけでも劇薬になりえます。つまり「劇薬=よく効く強い薬」は誤りで、条文が挙げているのは「劇性が強いもの」であって有効性の強さではありません。

毒物・劇物の判定基準と、令和7年3月の改定

毒劇法側の基準は「毒物劇物の判定基準」で、最終改定は令和7年3月(発出通知は令和7年3月6日 医薬薬審発0306第6号)です。全身急性毒性は、得られる限り多様なばく露経路の情報を評価し、どれか一つの経路でも毒物と判定されれば毒物、毒物と判定される経路が一つもなく、どれか一つで劇物と判定されれば劇物とします。

数値は上の表のとおりで、吸入はLC50(半数致死濃度。空気中の濃度で示す指標)で見ます。さらに局所毒性の枠があり、皮膚または眼などの粘膜に対する重篤な傷害を有する物質は劇物と判定されます。皮膚腐食性は、ウサギを用いる皮膚腐食性試験で最高4時間までのばく露後、3匹中1匹以上に表皮を貫通して真皮に至る明らかな壊死を生じる場合です。

眼などの粘膜に対する重篤な損傷は、ウサギの眼に検体を入れて刺激性を評価するDraize試験で、24・48・72時間の平均スコア計算値が角膜混濁3以上または虹彩炎1.5超の陽性応答が3匹中少なくとも2匹に見られる場合などが該当します。

令和7年3月の改定の中心は、吸入試験と経皮毒性試験の実施要否の基準がなかったことを受けた、経済協力開発機構(OECD)のガイダンス文書(GD19・GD237)に基づく試験免除基準の新設です。旧基準(最終改定は平成29年2月)にあった劇性のベンチマーク化合物の例示(10%硫酸、5%水酸化ナトリウム、5%フェノール)は、代替法での判定時に誤った解釈を招くとして削除されました。

製剤の除外にもルールがあり、刺激性が強いため劇物と判定された物の製剤は3%未満で除外、pH(水素イオン指数)2以下の酸またはpH11.5以上の塩基などは1%未満で除外となります。一方、毒物と判定された物の製剤について、原則として除外は行われません。

つまり毒物・劇物の判定基準は経口の数値だけの話ではなく、経皮・吸入・局所毒性まで含む立体的な作りです。医薬品側とは構造そのものが違うと理解しておくと、数字の取り違えが起きません。

この数値をヒトの致死量として読み替えてはいけない

ここまでのmg/kgの数値は、動物実験の結果をもとに行政が指定の可否を判断するための基準値です。ヒトの致死量ではありません。「体重あたり何mgで死ぬ」という形に読み替えないでください。

指標そのものが違ううえ、動物種でも投与経路でも製剤の形でも値は動きます。誤飲や曝露が起きたときは、数値を調べるより先に相談してください。公益財団法人日本中毒情報センターの中毒110番が365日24時間対応しています。

一般専用電話は大阪中毒110番が072-727-2499、つくば中毒110番が029-852-9999で情報提供料は無料。たばこ誤飲事故専用電話は072-726-9922です。医師や医療機関からは医療機関専用電話(大阪 072-726-9923、つくば 029-851-9999)で、情報提供料は1件につき2,000円になります。

対象は化学物質や動植物の毒による急性中毒で、実際に事故が発生している場合に限られます。番号と受付内容は2026年8月時点のもので、最新は日本中毒情報センターの公式サイトで確認してください。

表示(ラベル)の違いは、色と枠と「医薬用外」で見分ける

現場で最初に目に入るのが容器のラベルです。見分ける軸は2つ。医薬品側(毒薬・劇薬)には「枠」があり、毒劇物側(毒物・劇物)には「医薬用外」が付きます。

毒薬は黒地に白枠・白字、劇薬は白地に赤枠・赤字

薬機法44条1項は毒薬について、「その直接の容器又は直接の被包に、黒地に白枠、白字をもつて、その品名及び「毒」の文字が記載されていなければならない」と定めます。2項の劇薬は「白地に赤枠、赤字をもつて、その品名及び「劇」の文字」です。

どちらも品名とセットで、地の色・枠の色・文字の色の3点が指定されています。3項では、これらの表示に触れる毒薬・劇薬は販売・授与および販売や授与の目的での貯蔵・陳列をしてはならないとされ、表示は流通の前提条件になっています。

なお薬機法51条により、直接の容器の記載が外部の容器または被包を透かして容易に見られないときは、外箱にも同じ記載が必要です。箱を開けるまで「毒」「劇」が分からない、ということは起きません。

毒物は「医薬用外」+赤地に白色、劇物は「医薬用外」+白地に赤色

毒劇法12条1項は、容器および被包に「医薬用外」の文字と、毒物については赤地に白色をもって「毒物」、劇物については白地に赤色をもって「劇物」の文字を表示しなければならない、としています。

最も間違えられるのが、地の色と文字の色が反転している点です。毒物は赤地に白、劇物は白地に赤。医薬品側の劇薬(白地に赤枠・赤字)と劇物(白地に赤色)が近い見た目になることも、混乱の一因になっています。

販売する側にはもう一段あります。毒物劇物営業者が販売・授与するときは、12条2項により、①毒物又は劇物の名称 ②成分及びその含量 ③厚生労働省令で定める毒物又は劇物については省令で定めるその解毒剤の名称 ④取扱及び使用上特に必要と認めて省令で定める事項、を表示しなければ販売・授与できません。

保管場所と小分けした容器にも表示が要る

見落とされやすいのが12条3項です。毒物・劇物を貯蔵し、又は陳列する場所にも「医薬用外」と「毒物」「劇物」の文字を表示しなければなりません。容器だけでなく、棚や薬品庫の側にも要るということです。

小分けも同じで、12条1項は「容器及び被包」に表示を求め、分注した容器を除外していません。北海道が業務上取扱者向けに示す遵守事項でも、使用の際に小分けした毒物劇物の容器及び被包にも表示すること、と明記されています。原液のボトルにはラベルがあるのに分注した小瓶が無表示、という状態が生まれやすい工程です。

医薬品側も同じです。山口県は、調剤用で装置瓶に入れられたものにも、毒薬・劇薬と同じ表示が必要であると示しています。元のボトルには黒地に白枠の表示があるのに、装置瓶に移した時点で表示が消える、という状態を作らないでください。

GHSのラベルを貼っただけでは足りない

日本産業規格(JIS)Z 7253は、化学品の危険有害性を伝えるためのラベル・作業場内の表示・安全データシート(SDS)の様式を定めた規格です。この改定が令和7年12月25日付けで官報に公示され、毒劇法の容器・被包への表示に係る留意事項通知が一部改正されました(医薬薬審発1225第1号)。

要点は、JISが求める表示と毒劇法が求める表示は一部が異なるということ。JISでは求められないのに法で求められる項目として、「医薬用外毒物」「医薬用外劇物」の文字、含量、省令で定める解毒剤の名称などがあります。

つまり、GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)に沿ったラベルを貼っただけでは毒劇法の表示義務を満たしません。試薬のラベルを確認するときは、絵表示の有無ではなく「医薬用外」の4文字があるかを見てください。

保管の違い。鍵をかける義務があるのはどれか

「毒薬は施錠、では劇薬は」「鍵をかけた堅固な設備は毒薬だったか麻薬だったか」。看護師国家試験でも病棟での指摘でも繰り返し問われますが、条文を並べれば迷いません。

毒薬は施錠、劇薬は他の物と区別するところまで

薬機法48条1項は「業務上毒薬又は劇薬を取り扱う者は、これを他の物と区別して、貯蔵し、又は陳列しなければならない」と定めます。分かれ目は2項で、「前項の場合において、毒薬を貯蔵し、又は陳列する場所には、かぎを施さなければならない」。施錠義務が書かれているのは毒薬だけで、劇薬には施錠の定めがありません。

条文の言葉づかいにも注意してください。48条2項は「かぎを施す」であって、「堅固な設備」とは書いていない。この言い回しは麻薬側のものです。

ただし条文の外にもう一段あります。厚生労働省は平成13年4月23日の医薬発第418号で、毒薬については受払い簿等を作成し、帳簿と在庫現品の間で齟齬がないよう定期的に点検することを求めています。

劇薬についても同じ通知が、受払いを明確化して在庫管理を適切に行い、盗難・紛失および不正使用を防止するために必要な措置を講じることを求めています。この通知は、医療機関で毒薬である筋弛緩薬が不正に使われた事案を受けて出されたものです。施錠義務の有無と、数量を管理する必要の有無は別だと考えてください。

毒物・劇物は盗難・紛失の防止と、飲食物の容器の禁止

毒劇法11条は具体的な形ではなく目的で書かれています。1項は「盗難にあい、又は紛失することを防ぐのに必要な措置を講じなければならない」。2項は施設の外に飛散し、漏れ、流れ出、しみ出、地下にしみ込むことを防ぐ措置、3項は施設の外で運搬する場合の同様の措置です。

4項は「毒物又は厚生労働省令で定める劇物については、その容器として、飲食物の容器として通常使用される物を使用してはならない」。ペットボトルへの移し替えを禁じている条文です。

「必要な措置」の中身は条文からは読み取れません。行政がどの水準を想定しているかは自治体の手引が具体的で、北海道は届出不要の業務上取扱者向けに次の遵守事項を示しています。

  • 貯蔵設備は毒物劇物専用でかぎのかかる頑丈なものとし、施錠すること
  • 目の行き届く場所に保管し、保管場所には毒物・劇物があることを表示すること
  • 毒物劇物の受払簿を作成し、日常的に使用量及び在庫量を確認すること
  • 鍵の管理者と不在時の代理者をあらかじめ選任し、鍵の管理簿を備えること
  • 貯蔵設備と設備内の毒物劇物について、転倒防止等の震災対策と定期的な保守点検を行うこと

ここは書き分けが要ります。受払簿や鍵の管理簿は法11条に明文で書かれた義務ではなく、「必要な措置」の具体策として行政が示しているものです。水準には自治体によって差がありうるため、最終的な確認先は所管の保健所になります。

事故時の動きも条文にあります。17条1項は、飛散・漏出等により不特定又は多数の者について保健衛生上の危害が生ずるおそれがあるときは直ちに保健所、警察署又は消防機関に届け出るとともに必要な応急の措置を講じる、とし、2項は盗難・紛失のときは直ちに警察署に届け出る、としています。届出先が違う点は院内マニュアルに書いておいてください。

麻薬・向精神薬とどう違うか(「鍵をかけた堅固な設備」は麻薬)

麻薬及び向精神薬取締法(以下、麻向法)34条1項は麻薬取扱者に、所有し又は管理する麻薬を麻薬業務所内で保管することを義務づけます。問題の一文は2項で、「前項の保管は、麻薬以外の医薬品(覚醒剤を除く。)と区別し、鍵をかけた堅固な設備内に貯蔵して行わなければならない」。「鍵をかけた堅固な設備」は麻薬の規定であって、毒薬の48条2項ではありません。

向精神薬は50条の21で、濫用を防止するため厚生労働省令で定めるところにより保管・廃棄その他必要な措置を講じる、とされ、堅固な設備という言葉は使われていません。表示は、麻向法31条が麻薬営業者(麻薬小売業者を除く)について丸で囲んだ「麻」の記号などの記載を求め、向精神薬は50条の19で丸で囲んだ「向」の記号です。

薬局と病院にはもう1つ、覚醒剤原料があります。セレギリン塩酸塩(エフピーOD錠)とリスデキサンフェタミンメシル酸塩(ビバンセカプセル)が該当し、覚醒剤取締法30条の12は人目につかない場所で、かつかぎをかけた場所での保管を求めています。

運用で問われるのは同居の可否です。覚醒剤原料は麻薬保管庫に入れられず(麻向法34条)、毒薬・劇薬とも区別して保管し(薬機法48条)、毒物・劇物の保管庫にも入れられません(昭和52年3月26日 薬発第313号)。

保管の水準は4段になります。麻薬が鍵と堅固な設備、覚醒剤原料が鍵をかけた場所、毒薬が施錠、劇薬が他の物との区別まで。どこまで求められるかが法律ごとに違うので、金庫の中身を混ぜないことが実務の要点です。

色と枠で指定しているのは薬機法44条だけ、「医薬用外」が付くのは毒劇法だけ、記号で示すのは麻向法だけです。色の暗記から入るより、どの法律の話かを先に分けたほうが定着します。

よくある質問

劇薬に鍵をかけていなくても違反になりませんか

薬機法48条2項が施錠を求めているのは毒薬だけです。劇薬は1項の「他の物と区別して、貯蔵し、又は陳列」まで守れば法の要求は満たします。ただし施設の内規で施錠を求めている場合はそちらが優先されるので、院内規程を確認してください。

消防法の「危険物」と毒物・劇物は同じものですか

軸が違います。消防法2条7項の危険物は別表第一の品名と性状で決まる区分で、火災の危険性に着目しています。一方、毒物及び劇物取締法1条は保健衛生上の見地から取締りを行う法律です。同じ物質が両方に該当することもあります。

病院や薬局に毒物劇物取扱責任者を置く必要はありますか

原則として必要ありません。毒劇法22条5項が準用しているのは11条、12条1項および3項、17条、18条で、毒物劇物取扱責任者を定めた7条・8条は含まれていないためです。ただし該当の政令事業を営む場合や自治体の指導がありうるので、最終確認は所管の保健所へ。

譲受書は押印がないと受け付けてもらえませんか

令和7年10月29日公布の厚生労働省令第107号により、毒劇法施行規則12条の2は「譲受人が押印し、又は署名した書面」に改められました。押印か署名のどちらかで足ります。実際の様式は取引先の運用にもよるため、事前に確認してください。

「劇薬」と表示された薬は市販薬にもありますか

いわゆる第1類から第3類の一般用医薬品にはなりません。薬機法4条5項3号が毒薬と劇薬を要指導医薬品の対象として挙げ、同項4号の一般用医薬品を「要指導医薬品を除く」と定義しているためです。

まとめ:毒薬・劇薬・毒物・劇物の違いは4点セットで押さえる

この記事の要点
  • 毒薬・劇薬は薬機法の医薬品区分、毒物・劇物は毒劇法の化学物質区分で、根拠法そのものが別
  • 区分は毒性の順位ではなく、名簿(薬機法施行規則別表第三/毒劇法の別表と指定令)に載っているかで決まる
  • 指定の基準は2系統あり、経口の閾値は毒薬が30 mg/kg以下、毒物がLD50 50 mg/kg以下で一致しない
  • 表示は毒薬が黒地に白枠白字、劇薬が白地に赤枠赤字、毒物が医薬用外と赤地に白色、劇物が医薬用外と白地に赤色
  • 施錠義務があるのは毒薬のみ。「鍵をかけた堅固な設備」は麻薬、「かぎをかけた場所」は覚醒剤原料の規定
  • 該当するかは成分名では決まらない。過酸化水素6%以下は劇物から除外されるなど、規格・含量・濃度まで見て決まる

現場での確認は3手です。①それは医薬品か、医薬品以外か(どちらの法律の話か) ②その製品の規格・濃度で区分が決まる ③区分が決まったら、表示・保管・譲渡を法律ごとの決まりに合わせる。確認先は、手元の医薬品なら添付文書の規制区分欄、試薬ならSDSと毒物及び劇物指定令です。

患者さんや他職種に説明するときは、「毒物のほうが強い」ではなく「別の法律の区分です」と最初に置くと誤解が生まれません。

警戒しておきたいのは3点。分注した容器や装置瓶の無表示、保管場所の表示漏れ、そして劇薬に施錠義務がないことを「管理しなくてよい」と読み替えてしまうことです。

医薬発第418号は劇薬にも受払いの明確化と在庫管理を求めています。法が定める最低ラインと院内規程は別物なので、自施設のルールを一度確認しておいてください。

参考文献

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この記事を書いた人

花(はな)|病院薬剤師・感染制御認定薬剤師・病院薬学認定薬剤師
病院薬剤師として20年以上勤務し、現在も医療現場でICT(感染対策)やAST(抗菌薬適正使用)などに携わっています。記事では電子添文、インタビューフォーム、診療ガイドライン、公的機関・学会の資料などを確認し、医薬品や感染症に関する情報を分かりやすくまとめています。

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