シングリックスと生水痘ワクチンの違いは?効果と禁忌から薬剤師が解説

シングリックスと生水痘ワクチンの違いを効果と禁忌から薬剤師が解説
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帯状疱疹の予防に使えるワクチンは、生ワクチンの乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」と、組換えワクチンのシングリックス筋注用の2種類です。効果の数字も、副反応の出方も、そもそも接種できるかどうかも違うため、どちらを案内するかで迷う場面があります。

この記事では、2剤の中身の違いから、効果と持続、副反応の発現率、接種できない人の範囲までを扱います。数字は両剤の添付文書とインタビューフォーム、厚生労働省の資料、国立感染症研究所のファクトシート、日本皮膚科学会のガイドラインから引いています。

この記事でわかること
  • シングリックスと生水痘ワクチンの中身と仕組みの違い
  • 効果と持続の差、そして生ワクチンの数字が資料で食い違う理由
  • 2剤の副反応の発現率と、接種後に見逃してはいけないサイン
  • 免疫を抑える治療中の人に生ワクチンが使えない理由
目次

シングリックスと生水痘ワクチンの違いを先に整理する

国内で帯状疱疹の予防に使えるワクチンは2種類です。乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」は弱毒化した生きたウイルスを使う生ワクチン、シングリックス筋注用はウイルスそのものを含まない組換えワクチンにあたります。

違いが効いてくるのは、効果の高さと持続、副反応の出方、打てる人の範囲という3つの軸です。とくに3つ目は、免疫を抑える治療を受けている人では選択肢そのものが変わるため、窓口で最初に確認する項目になります。

2025年4月から、帯状疱疹ワクチンは予防接種法に基づく定期接種になりました。2種類のうちいずれか1種類を選び、機会は原則として生涯に1回です。対象はその年度に65歳になる方で、2029年度までは70歳から100歳まで5歳刻みの年齢に当たる方にも経過措置があります。

費用は両剤とも保険給付の対象外です。自費の相場は生ワクチンが1回8,000円から10,000円程度、シングリックスが1回22,000円から26,000円程度ですが、医療機関ごとに設定が異なります。定期接種の自己負担額も自治体で違うため、金額は市町村の案内で確認してください。

表のPHNは帯状疱疹後神経痛のことで、皮疹が治ったあとも痛みが残る合併症です。高齢者に案内する機会が多いもう一方のワクチンについては、プレベナー20とキャップバックスの違いで整理しています。

項目乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」シングリックス筋注用
分類生ワクチン(弱毒生水痘ウイルス岡株)組換えワクチン(gE抗原とアジュバント)
効能・効果水痘の予防/50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防帯状疱疹の予防(水痘の定期接種には転用不可)
接種回数と経路1回・皮下注射(上腕伸側)2回・筋肉内注射(上腕三角筋部)
効果の目安
(厚生労働省の資料)
1年で6割程度、5年で4割程度、10年は記載なし1年で9割以上、5年で9割程度、10年で7割程度
PHNへの効果
(接種後3年時点)
6割程度9割以上
効果の数字の出どころ国内試験と海外の同型ワクチンの試験が混在日本を含む国際共同の第III相試験
免疫が低下している人接種してはならない(接種不適当者)むしろ接種対象に含まれる
妊娠妊娠が明らかな者は接種不適当有益性が危険性を上回るときのみ
主な副反応接種部位反応50.6%、全身性反応3.9%接種部位81.5%、全身性58.2%
保管と調製5℃以下・遮光。溶解後は直ちに使用2〜8℃。調製後6時間以上たてば破棄
保険上の扱い両剤とも薬価基準未収載で保険給付の対象外

「不活化ワクチン」と呼ばれているものの正式な呼び名

シングリックスは「不活化ワクチン」と説明されがちですが、正式な一般名は乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(チャイニーズハムスター卵巣細胞由来)で、厚生労働省の資料でも「組換えワクチン」と表記されます。不活化ワクチンは本来、培養したウイルスを薬品や熱で殺して抗原にしたものです。

組換え技術でウイルスのタンパク質だけを作らせたシングリックスは、厳密には別の分類にあたります。

効能にも非対称があります。ビケンは「水痘の予防」と「50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防」の2つを持ちますが、シングリックスは帯状疱疹の予防だけで、予防接種法に基づく水痘の予防接種には転用できないと添付文書に明記されています。

中身が違う。生きたウイルスか、抗原とアジュバントか

効果の差も、副反応の出やすさも、打てない人の広さも、もとをたどると製剤の中身に行き着きます。ここを押さえると、以降の数字が丸暗記ではなく理屈で読めます。

生水痘ワクチンは弱毒化した「生きたウイルス」そのもの

ビケンの中身は弱毒生水痘ウイルス岡株です。岡株は日本で開発された水痘ワクチン用のウイルス株で、病気を起こす力を弱めたまま免疫だけを立ち上げられるように継代されたものを指します。含有量は溶解後の0.5mL中に1000PFU以上で、PFUはプラーク形成単位、つまり生きたウイルスの数を表す単位です。

予防の仕組みは薬効薬理に書かれています。加齢などで水痘帯状疱疹ウイルスに対する免疫、とくに細胞性免疫が低下すると、神経節に潜んでいたウイルスが再活性化して帯状疱疹を起こします。接種するとこの細胞性免疫が増強され、再活性化を抑えることが期待される、という理屈です。

つまり、水痘のワクチンをそのまま高齢者に打って、落ちてきた免疫を押し上げているわけです。ビケンは1987年3月に水痘用として販売開始され、2016年3月18日に「50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防」が効能追加されました。

シングリックスはgE抗原とアジュバントの組み合わせ

シングリックスにウイルスは入っていません。入っているのは、水痘帯状疱疹ウイルスの表面にある糖タンパク質E(gE)という抗原が50μgと、AS01Bというアジュバントです。アジュバントは効き目を高めるために加える添加物で、抗原だけでは免疫の反応が弱いときにスイッチを強く押す役割をします。

AS01Bの中身は、MPL(3-脱アシル化-4’-モノホスホリルリピッドA)50μgと精製キラヤサポニン(QS-21)50μgを、リポソームという脂質の膜に包んだものです。MPLとQS-21はどちらも免疫を刺激する材料で、リポソームはそれを免疫細胞に届けるための入れ物にあたります。

作用機序は、すでに水痘帯状疱疹ウイルスへの免疫を持つ人にgE抗原とAS01Bを一緒に接種することで、gE抗原に特異的なCD4陽性T細胞と抗体が誘導されるというものです。再活性化を抑えているのが細胞性免疫である以上、そこを狙い撃ちで立ち上げる設計になっています。

承認は2018年3月、販売開始は2020年1月です。

この違いが効果と副反応と禁忌のすべてを決めている

ビケンは生きたウイルスなので、免疫が抑えられている人に打つとウイルスが増えてしまうおそれがあり、そのぶん打てない人の範囲が広くなります。シングリックスは強力なアジュバントで免疫を意図的に強く立ち上げるため、効果が高く出る反面、注射部位の痛みや発熱、筋肉痛といった反応も出やすくなります。

生きているから禁忌が広い、免疫を強く動かすから反応が出やすい。この1行を押さえると、以降の数字を個別に覚える必要がなくなります。

効果と持続はどれくらい違うのか

2剤の差がもっともはっきり出る項目です。ただし数字は資料によって食い違って見えることがあり、その理由まで説明できるかが分かれ目になります。

厚生労働省の資料はどう整理しているか

厚生労働省の帯状疱疹ワクチンのページと定期接種のリーフレットでは、予防効果が接種後の年数ごとに整理されています。

  • 接種後1年時点:生ワクチンは6割程度、組換えワクチンは9割以上
  • 接種後5年時点:生ワクチンは4割程度、組換えワクチンは9割程度
  • 接種後10年時点:生ワクチンは記載なし、組換えワクチンは7割程度
  • PHNへの効果は接種後3年時点で、生ワクチンが6割程度、組換えワクチンが9割以上

この表は広く引用されますが、効果の欄については出典が当該ページに明示されていません。「厚生労働省が何%と保証している」という紹介は避け、「資料ではこう整理されている」という言い方にとどめるのが正確です。

生ワクチンの10年時点が空欄なのは、効果がゼロと分かっているからではありません。その時点のデータが示せない、ということを表しています。

シングリックスの効果は臨床試験でどこまで確かめられているか

根拠は、日本を含む複数国で実施された国際共同の第III相試験です。50歳以上を対象にした試験(ZOSTER-006)では、14,759例(うち日本人603例)を組み入れ、プラセボと比較した有効率は97.16%(95%信頼区間 93.72から98.97)、追跡期間の中央値は3.1年でした。

PHNの発症例数は、本剤群0例に対してプラセボ群18例です。

70歳以上に絞った試験(ZOSTER-022)では、13,163例(うち日本人563例)で有効率89.79%(84.29から93.66)、追跡期間の中央値は3.9年でした。年齢が上がると数字がやや下がることが読み取れます。

10年たっても効果は続くのか

この2試験の接種者を長期に追いかけた試験(ZOSTER-049)もあります。7,408例(うち日本人235例)を追跡し、接種後5.6年から11.4年の期間での有効率は79.77%(73.72から84.61)、先行試験を含めた11.4年間では87.73%(84.89から90.12)と報告されています。

つまり、10年前後の追跡でも有効率が8割前後にとどまっているのが現時点の姿です。国立感染症研究所のファクトシートも、2回目接種後8年で83.3%以上、9年で72.7%、10年で73.2%と集計しており、厚生労働省の表の「10年で7割程度」はこれと整合します。

「生ワクチンは約5割」という数字はどこの数字か

生ワクチンの効果として「約50%」がよく出回っていますが、ここは切り分けが要ります。国立感染症研究所の帯状疱疹ワクチンファクトシート第2版には、国内で50歳以上の1,175人を対象にした試験の結果が載っています。

ビケンを1回接種したあと3.36年間のサーベイランスで、帯状疱疹への予防効果は27.8%、PHNへの予防効果は73.8%でした。

一方、よく引かれる51.3%は、米国で60歳以上の38,546人を対象に行われたZOSTAVAXという生ワクチンの試験の数字です。同じ試験でPHNの発症は66.5%、疾病負荷は61.1%減少しています。50歳から59歳の22,439人を対象にした別の試験では69.8%が報告されています。

いずれも国内のビケンで得られた数字ではありません。

海外の数字が引かれるのは、ZOSTAVAXがビケンと同じ岡株から作られた製剤だからです。ファクトシートも「同等の有効性が期待できると考えられている」としています。ただし、期待できるという評価と、国内で実測された値であることは別です。

日本の生ワクチンは力価が低いから効果が低い、という説明は避けてください。ファクトシートは「ZOSTAVAXと比較して、日本の乾燥弱毒生水痘ワクチン『ビケン』はウイルス力価と大きな差はない」と明記しています。数字は出どころをつけて並べるのが安全です。

打っても発症することはあるし、効果の落ち方も違う

有効率は、接種した人で発症がどれだけ減ったかを示す割合です。100%でない以上、接種しても帯状疱疹になる人はいます。「打ったのに出た」という相談では、この点を先に共有しておくと話が早いはずです。

効果の落ち方も違います。ZOSTAVAXの長期追跡では、接種後4年から7年で帯状疱疹の発症が39.6%減、7年から11年では21.1%減まで下がりました。60歳以上を対象にした研究では、接種後1年以内の発症阻止効果が68.7%だったのに対し、8年目には4.2%まで低下したと報告されています。

では国内のビケンではどうかというと、そこを示すデータがありません。インタビューフォーム第18版は「本剤の臨床試験では50歳以上の者に接種した時の免疫持続に関するデータはない」と明言しています。国内で持続を見ているのは水痘皮内抗原を使った皮内テストの紅斑径であって、発症予防率ではありません。

先ほどの表で生ワクチンの10年欄が空欄だった理由がここにあります。5年で4割程度という値も、海外の同型ワクチンのデータを当てはめた見積もりだと理解しておくのが妥当だと思います。

副反応はどれくらい違うのか

「シングリックスは副反応がきつい」という評判が先行しています。発現率は確かに生ワクチンより高いのですが、内訳と持続まで見ると受け取り方が変わります。

シングリックスの副反応を数字で見る

50歳以上を対象にしたZOSTER-006試験では、接種後7日間の日誌で安全性を調べた4,379例のうち、注射部位の副反応の発現頻度が81.5%でした。内訳は疼痛79.1%、発赤38.0%、腫脹26.3%です。

全身性の副反応は58.2%で、主なものは筋肉痛41.4%、疲労40.1%、頭痛33.9%でした。添付文書のその他の副反応の一覧では、悪寒21.4%、発熱16.7%、胃腸症状(悪心、嘔吐、下痢、腹痛)12.0%も10%以上の項目に挙がっています。

補足しておきたいのが年齢差です。70歳以上を対象にしたZOSTER-022試験では、注射部位の副反応が74.1%、全身性の副反応が43.8%と、いずれも50歳以上の試験より低い値でした。反応の強さは免疫応答の強さと連動するため、高齢になるほど穏やかになる傾向があります。

数字だけを見せると身構えられてしまいます。8割の人に注射部位の痛みが出るが、それは免疫が立ち上がっているサインでもあり、多くは数日で軽くなる。この2つをセットで伝え、接種翌日に予定を入れないでおくよう添えるほうが実像に近い説明になります。

生水痘ワクチンの副反応

ビケンには、帯状疱疹の予防という効能での国内第III相試験のデータがあります。50歳以上の健康成人259例を対象に0.5mLを1回皮下接種し、接種6週から8週後までに発現した副反応の割合は50.6%でした。内訳は、接種部位反応が50.6%であるのに対し、全身性反応は3.9%にとどまります。

局所の症状は発赤44.0%、そう痒感27.4%、熱感18.5%、腫脹17.0%、疼痛14.7%、硬結13.5%です。

つまりビケンでも半数の人に何らかの反応は出ますが、そのほとんどは腕の局所にとどまり、熱や倦怠感といった全身の症状はほとんど出ません。仕事を休めるかどうかを気にしている人にとっては、ここが実務的な差になります。

生ワクチン特有の注意もあります。添付文書には、被接種者から非接種者へのワクチンウイルスの水平伝播が報告されていると記載されています。頻度が高いものではありませんが、生きたウイルスを使う製剤の性質として知っておく必要があります。

2剤で異なる重大な副反応

ここまでの発現率は、頻度の高い一過性の反応の話です。それとは別に、頻度は不明ながら注意すべき重大な副反応が添付文書に定められています。この2つを混ぜて説明しないことが大切です。

シングリックスでは、ショックとアナフィラキシー、そしてギラン・バレー症候群が重大な副反応です。ギラン・バレー症候群は、四肢の遠位から始まる弛緩性麻痺や腱反射の減弱、消失などの症状であらわれます。失神に関する注意は第5版から置かれており、2026年6月改訂の第6版では観察時間の記載が「接種後30分程度」から「接種後一定時間」に改められました。

血管迷走神経反射として失神があらわれることがあるため、転倒を避ける目的で接種後一定時間は座らせるなどして観察することが望ましいとされています。ビケンの添付文書に同様の記載はありません。

ビケンの重大な副反応は、アナフィラキシー、免疫性血小板減少症、無菌性髄膜炎です。免疫性血小板減少症は通常、接種後数日から3週ごろに紫斑や鼻出血、口腔粘膜出血としてあらわれるとされています。

接種後に見逃してはいけないサイン

患者さんには、接種後に次の症状が出たら様子を見ずに医療機関へ連絡するよう伝えます。手足の力が入らない感じやしびれが下から上へ広がる、歩きにくい。接種直後にふらつく、気が遠くなる。紫斑や鼻血、歯ぐきからの出血が続く。発熱に加えて強い頭痛や吐き気、首の後ろのこわばりがある。

なお、ギラン・バレー症候群は、2025年10月24日の副反応検討部会で報告基準に加える方針案が示され、その後の予防接種法施行規則の改正で正式に追加されました。現行の基準では、水痘と帯状疱疹に共通して、接種後28日以内のギラン・バレー症候群が報告の対象です(2026年8月時点)。

打てない人の範囲が2剤で大きく違う

ここが、2剤の使い分けを実質的に決めている部分です。効果や費用の比較よりも先に確認すべき項目で、間違えると健康被害に直結します。

生水痘ワクチンは免疫が低下していると接種できない

ビケンの添付文書には、帯状疱疹の予防という効能に対する接種不適当者として、明らかに免疫機能に異常のある疾患を有する者、および免疫抑制をきたす治療を受けている者が挙げられています。用法及び用量に関連する注意にも、これらの人に「接種してはならない」という一文があります。

さらに、帯状疱疹の予防では併用禁忌が設定されています。対象は副腎皮質ステロイド剤(プレドニゾロン等の注射剤と経口剤)と、免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス、アザチオプリン等)です。

免疫機能が抑えられている状態ではワクチンウイルスの感染が増強あるいは持続する可能性があり、播種性の症状を呈するおそれがあるためとされています。

妊娠していることが明らかな者も接種不適当者です。妊娠可能な女性については、あらかじめ約1か月間避妊してから接種し、接種後約2か月間は妊娠しないよう注意させることとされています。つまり治療内容と妊娠の可能性を確認しないと、そもそも種類を決められません。

免疫が低い人ほど帯状疱疹になりやすい、という矛盾

帯状疱疹は細胞性免疫が落ちたときに再活性化して起こります。免疫を抑える治療を受けている人は、本来ならもっとも予防したい層です。ところが、その人たちに生ワクチンは打てません。

この点は、日本皮膚科学会の帯状疱疹診療ガイドライン2025にも書かれています。

2016年3月18日に水痘生ワクチンの効能追加が承認されたものの、帯状疱疹予防目的での接種不適当者として免疫機能に異常のある疾患を有する者などが挙げられており、帯状疱疹発症リスクの高い患者に接種できないという現状がある、という記載です。

制度の側にも同じ構図が表れます。定期接種の対象には、60歳から64歳でヒト免疫不全ウイルス(HIV)により免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方が含まれています。

定期接種では2種類のうちいずれかを選ぶ建て付けですが、この層はビケンの接種不適当者に当たるため、実際には組換えワクチンを選ぶことになります。

これは適応外の使い方の話ではありません。承認されている内容と、制度上の対象者の定め方を重ね合わせると自動的にそうなる、という運用の話です。定期接種の対象に入っているからどちらでも選べる、と早合点しないための線引きだと考えてください。

シングリックスは免疫が低下している人も接種対象になる

シングリックスの用法及び用量は、50歳以上の者に加えて、帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の者を対象にしています。後者は具体的に、疾病または治療により免疫不全である者、免疫機能が低下した者、免疫機能が低下する可能性がある者、およびそれ以外で医師が接種を必要と認めた者を指します。

裏づけとなるデータも臨床成績にあります。自家造血幹細胞移植を受けた18歳以上の1,846例(うち日本人80例)を対象にした国際共同第III相試験では、有効率68.2%(95%信頼区間 55.5から77.6)でした。

固形悪性腫瘍の患者232例、造血器腫瘍の患者562例、腎移植患者264例でも、免疫原性と安全性が評価されています。

接種不適当者は、明らかな発熱を呈している者、重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者、本剤の成分でアナフィラキシーを呈したことがある者などが中心で、免疫の状態による除外はありません。厚生労働省のリーフレットでも、組換えワクチンの接種条件は「免疫の状態に関わらず接種可能」と記載されています。

筋肉内注射だからこそ注意が要る人

免疫の状態では除外されない一方、筋肉内注射であるがゆえの注意はあります。血小板減少症や凝固障害を有する人、抗凝固療法を施行している人は接種要注意者とされており、筋肉内注射部位の出血のおそれが理由です。禁忌ではありませんが、抗凝固薬を服用している患者さんでは事前に確認しておきたい項目です。

免疫を抑える治療中の人にどちらを接種するかは、患者さんや薬剤師が決めるものではありません。使っている薬剤と治療の段階を主治医に伝えたうえで判断してもらう領域です。記事の役割は、その相談に持っていく材料をそろえるところまでです。

よくある質問

生ワクチンを接種した人に、あとからシングリックスを接種できますか

シングリックスの添付文書は「本剤と他の帯状疱疹ワクチンの互換性に関する安全性、免疫原性、有効性のデータはない」としています。接種できるとも打ち直すべきとも言えないのが現時点の答えです。定期接種の対象になるかは市町村、医学的な可否は医師の判断と案内します。

シングリックスの2回目が2か月を過ぎてしまった場合はどうしますか

添付文書は、2か月を超えた場合であっても6か月後までに2回目を接種することと定めています。標準は2か月の間隔ですが、遅れたからといって1回目からやり直すという規定はありません。実際の日程は接種した医療機関で調整してもらいます。

帯状疱疹にかかったことがある人にも接種をすすめますか

厚生労働省のQ&Aでは、帯状疱疹や水痘にかかったことがある方も定期接種の対象になるとされています。ただし罹患後どのくらい間隔をあけるかについて、国内の一次資料に明確な決まりは見当たりません。時期は主治医と相談して決めるものと説明します。

水疱瘡にかかった記憶がない人でも接種する意味はありますか

感染症流行予測調査では、成人の水痘帯状疱疹ウイルスに対する抗体保有率は90%以上と報告されています。記憶がなくてもすでに感染していて、帯状疱疹の発症リスクを持つ方が大半です。接種歴や罹患歴がはっきりしないときは、医療機関で確認してもらいます。

シングリックスと生水痘ワクチンの違いを踏まえて現場で確認すること

2剤の違いの要点
  • 中身が違う。ビケンは弱毒化した生きたウイルス、シングリックスはgE抗原とアジュバントの組み合わせ
  • 効果は組換えワクチンが明確に高い。厚生労働省の資料では1年時点で9割以上、10年時点で7割程度
  • 生ワクチンの数字は出どころで変わる。国内の報告は27.8%、海外の同型ワクチンの試験は51.3%
  • 回数と経路が違う。ビケンは皮下に1回、シングリックスは筋肉内に2回で通常2か月あける
  • 副反応はシングリックスのほうが多いが多くは一過性。ビケンは全身性反応が3.9%と少ない
  • 免疫を抑える治療中はビケンが接種不適当。シングリックスはむしろ対象に含まれる

一言にすると、効果と持続で選ぶならシングリックス、回数と体への負担の軽さで選ぶならビケン、免疫を抑える治療をしているならビケンは選べない、ということになります。まず打てるかどうかを確認し、そのあとで効果と負担を比べる順番です。

ステロイドや免疫抑制剤、生物学的製剤を使っている方と、妊娠している方や妊娠の可能性がある方では、生ワクチンが選択肢から外れます。

感染制御認定薬剤師として現場で感じるのは、種類選びの前段でつまずいている相談が多いことです。効果の数字を比べる前に、治療内容と接種歴、そして自治体の要綱を押さえる。この順番を守るだけで答えの精度は上がります。なおこれは一般的な考え方であり、個別の診断や治療の指示ではありません。

まず確認するのは3つです。現在使っている薬剤と治療の状況、これまでの帯状疱疹ワクチンの接種歴、そして住んでいる市町村の助成の要件と期限。ここが揃っていれば、主治医との相談は具体的なところから始められます。

参考文献

執筆:薬剤師/感染制御認定薬剤師。本記事は一般的な情報提供であり、診断・治療を目的とするものではありません。症状や治療・お薬について判断が必要な場合は、かかりつけの医師・薬剤師にご相談ください。

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この記事を書いた人

花(はな)|病院薬剤師・感染制御認定薬剤師・病院薬学認定薬剤師
病院薬剤師として20年以上勤務し、現在も医療現場でICT(感染対策)やAST(抗菌薬適正使用)などに携わっています。記事では電子添文、インタビューフォーム、診療ガイドライン、公的機関・学会の資料などを確認し、医薬品や感染症に関する情報を分かりやすくまとめています。

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