ロキソニンとカロナールは、どちらも痛みと熱に使う薬ですが、薬効分類も、飲めない人の範囲も違います。両方が処方されたときや、手元にどちらもあるときに、どちらを使うか迷う場面は少なくありません。
効能・効果、禁忌と警告、用法・用量、小児や持病のある方での扱いを、両剤の添付文書とインタビューフォーム、公的資料をもとに薬剤師の視点で整理しています。
- ロキソニンとカロナールの違いを添付文書で比較
- 「どっちが強い」を鎮痛・炎症・使える量の3つで整理
- 禁忌8項目と2項目の差と、妊娠中・授乳中の扱い
- 頭痛での適応の扱いと、飲み合わせ・市販薬の重複
ロキソニンとカロナールは何が違うのか(早見表で比較)
ロキソニンの有効成分はロキソプロフェンナトリウム水和物(第一三共)。薬効分類名は「鎮痛・抗炎症・解熱剤」で、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs、エヌセイズ)のひとつです。カロナールの有効成分はアセトアミノフェン(国際的な一般名はパラセタモール、あゆみ製薬)で、薬効分類名は「解熱鎮痛剤」。NSAIDsには含まれません。
以下は、ロキソニン錠60mgの添付文書(2025年3月改訂・第4版)とカロナール錠200/300/500の添付文書(2023年10月改訂・第4版)の記載です。
| 項目 | ロキソニン | カロナール |
|---|---|---|
| 有効成分 | ロキソプロフェンナトリウム水和物 | アセトアミノフェン |
| 効能・効果 | 「消炎・鎮痛」「鎮痛・消炎」「解熱・鎮痛」(消炎の語がある) | 「各種疾患及び症状における鎮痛」「解熱・鎮痛」「小児科領域における解熱・鎮痛」(消炎の語がない) |
| 警告 | 設定なし | あり(肝障害、アセトアミノフェンの重複) |
| 禁忌 | 8項目 | 2項目 |
| 重大な副作用 | 14項目 | 8項目 |
| 小児の用法・用量 | 設定なし | あり(体重1kgあたり1回10〜15mg) |
| 妊婦 | 妊娠後期は禁忌。それ以外の妊婦も必要最小限で慎重投与 | 禁忌ではなく有益性投与。妊娠後期は胎児の動脈管収縮の記載あり |
| 鎮痛での用法・用量 | 1回60mg、1日3回。頓用は1回60〜120mg | 1回300〜1000mg、間隔4〜6時間以上、1日総量4000mgまで |
| かぜでの上限 | 1回60mgを頓用、原則1日2回、1日最大180mg | 1回300〜500mgを頓用、原則1日2回、1日最大1500mg |
| 剤形 | 錠60mg、細粒10%(ほかに外用剤) | 錠200・300・500、細粒20%・50%、原末、シロップ2%、坐剤小児用50、坐剤100・200・400 |
いちばん根っこにある違いは、効能・効果に「消炎」の語が入っているかどうかです。消炎とは、炎症(腫れ・熱感・発赤・痛みを起こす体の反応)を抑えること。炎症を抑える薬として承認されているのはロキソニンだけ、という事実が承認内容そのものから読み取れます。つまりこの2剤は体のどこにどう働くかが違う薬です。
作用のしくみの違い(なぜ効き方も副作用も変わるのか)
ロキソニンは胃への刺激を抑えた設計だが、胃に来ないわけではない
痛み・炎症・発熱には、体内で作られるプロスタグランジンが関わります。ロキソプロフェンはこれが作られる工程を止める薬ですが、プロスタグランジンは胃の粘膜を守る側でも働くため、同じ仕組みで胃も攻撃してしまいます。
そこを避ける工夫が作用機序に書かれています。「胃粘膜刺激作用の弱い未変化体のまま消化管より吸収され、その後速やかにプロスタグランジン生合成抑制作用の強い活性代謝物trans-OH体(SRS配位)に変換されて作用する」「シクロオキシゲナーゼを作用点とした……特に鎮痛作用が強力である」。
シクロオキシゲナーゼ(COX)はプロスタグランジンを作る酵素の名前。飲んだ時点では効き目の弱い形で、吸収されてから本体に変わる設計をプロドラッグと呼びます。つまり胃で暴れない姿で運び、体内で本体に変えることで胃への直接の刺激を減らした薬です。
ただし禁忌には、消化性潰瘍のある患者に投与しない理由として「プロスタグランジン生合成抑制により、胃の血流量が減少し消化性潰瘍が悪化することがある」とあります。プロドラッグ化で減らせるのは粘膜への直接刺激だけで、吸収後に全身でプロスタグランジンを抑える働きは残ります。「胃にやさしい設計」と「胃を荒らさない」は別の話です。
カロナールは作用のしくみが完全には解明されていない
アセトアミノフェンは、効く仕組みがはっきり決まっていません。説明を省いているのではなく、添付文書がそう書いています。「作用の正確な部位や機序は完全には解明されていないが、作用機序としては、中枢神経系に作用し、プロスタグランジン合成、カンナビノイド受容体系又はセロトニン作動系などに影響を及ぼすと考えられている」。
中枢神経系とは脳と脊髄のこと。カンナビノイド受容体系とセロトニン作動系は、どちらも痛みの伝わり方を脳の側で調節する仕組みです。つまり痛みが起きている現場ではなく、受け取る側で効いていると考えられているのがアセトアミノフェンです。
「抗炎症作用がない」という説明も見かけますが、添付文書の作用機序欄にその記載はありません。厚生労働省の検討会議が公表した公知申請への該当性に係る報告書が引用する国内の成書に、局所でのCOX阻害作用は非常に弱いとあるだけです。承認内容ではないため、本記事では「抗炎症作用は弱いとされる」にとどめます。
ロキソニンとカロナールはどっちが強いのか
もっとも多い質問ですが、「強い」を一つの物差しで語ると必ずどこかで嘘になります。3つに分けて考えます。
鎮痛の強さ:添付文書の「特に鎮痛作用が強力」が指しているもの
この一文が「ロキソニンのほうが強い」の根拠として広く使われています。ただしこれは作用機序の欄に置かれた薬理としての記述であり、ある患者さんのこの痛みにどちらがよく効くかという順位づけでも、同じ用量で比べた臨床試験の結論でもありません。
裏づけとして添付文書が挙げているのは動物実験です。ラットへの経口投与で、Randall-Selitto法(炎症足加圧法)のED50値は0.13mg/kgで、ケトプロフェン、ナプロキセン、インドメタシンに比べ10〜20倍の鎮痛作用を示した、という内容です。
同じ欄にはロキソプロフェンナトリウム水和物の鎮痛作用は末梢性であるとも書かれています。ロキソニンは痛みが起きている末梢で、カロナールは痛みを受け取る中枢で働くと考えられている。効く場所が違うので、どちらが上かではなく、どの痛みにどちらが噛み合うかで考えることになります。
そして「カロナールは弱い薬」という印象は、現在の承認内容とずれてきています。2023年2月24日、カロナールの効能・効果は「各種疾患及び症状における鎮痛」へ変更されました。
それ以前は頭痛、耳痛、症候性神経痛、腰痛症、筋肉痛、打撲痛、捻挫痛、月経痛、分娩後痛、がんによる疼痛、歯痛、歯科治療後の疼痛、変形性関節症という個別の列挙でした。
がんによる疼痛が旧記載の時点で入っていたことは、カロナールが弱い薬という印象を崩す材料になります。
2017年に日本リウマチ学会から関節リウマチ、日本麻酔科学会から術後疼痛の効能追加要望が出され、厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で妥当性が認められ、公知申請により承認されたものです。
公知申請とは、有効性・安全性がすでに医学薬学上明らかと判断される場合に、臨床試験の全部または一部を新たに実施せずに承認申請できる制度を指します。
炎症・腫れを伴う痛みでは差がはっきり出る
2つめの物差しが炎症です。ロキソニンの効能・効果には腫れや熱感を伴う痛みが並び、カロナールは痛みを取ることが幅広く認められている一方、炎症を抑えることは承認の範囲に入っていません。抜歯後や外傷後のように腫れが絡む痛みで消炎作用を持つロキソニンが選ばれやすいのは、この差が背景にあります。
ただし、どちらを使うかは持病・併用薬・年齢を踏まえて処方医が判断することです。
使える量の幅:1日180mgと1日4000mg
3つめが、どこまで増やせる薬なのかという上限の幅です。早見表のとおり、鎮痛での上限はロキソニンが1日180mg前後に収まるのに対し、カロナールは1日4000mgまで幅があります。頓用とは、症状が出たときにその都度使うことです。
この4000mgには経緯があります。日本のアセトアミノフェンは長らく1回300〜500mg、1日900〜1500mgと、国際標準(1回500〜1000mg、1日最大4000mg)より低い用量でした。
2005年11月に日本疼痛学会と日本ペインクリニック学会が厚生労働省へ是正要望書を提出し、公知申請を経て2011年1月21日に1日4000mgまでの用量拡大と変形性関節症の効能追加が承認されています。
その承認条件(高用量・長期投与時の肝障害の発現状況を報告すること)は特定使用成績調査を経て2014年9月5日に解除され、翌2015年2月にカロナール錠500が発売されました。危険だから規格が大きいのではなく、使える幅が広がった結果として必要になった規格という順序です。
なお添付文書の規制区分を見ると、錠500だけが劇薬で、錠200と錠300は該当しません。同じ成分・同じ製品名でも、規格によって扱いが変わります。棚での置き場所や在庫の管理が規格ごとに違うのはこのためです。
症状別の使い分けと、頭痛だけ扱いが違う理由
出発点は、何に使える薬として承認されているかです。ロキソニン(内服)は、関節リウマチ・変形性関節症・腰痛症・肩関節周囲炎・頸肩腕症候群・歯痛の消炎・鎮痛、手術後、外傷後並びに抜歯後の鎮痛・消炎、急性上気道炎(急性気管支炎を伴うものを含む)の解熱・鎮痛。
カロナールは、各種疾患及び症状における鎮痛、急性上気道炎の解熱・鎮痛、小児科領域における解熱・鎮痛です。
生理痛(月経痛)や打撲痛はカロナールの旧記載に並んでいた症状で、現在は「各種疾患及び症状における鎮痛」に含まれます。ロキソニンに月経困難症の記載はありません。「歯痛」は後から追加された適応で、2003年10月の日本口腔外科学会の要望書を受け、医療実態の調査を経て2005年12月に追加承認されました。
頭痛だけ、承認上の扱いが非対称になっている
実感と承認内容がいちばんずれるところです。ロキソニン(内服)の効能・効果に「頭痛」は含まれていません。したがって頭痛に対するロキソニン内服の使用は適応外使用にあたります。一方カロナールは、旧記載でも現在の記載でも頭痛を含みます。
ただし、頭痛にロキソプロフェンが処方される場面は実際にあります。その差の公的な裏づけが、社会保険診療報酬支払基金の「審査情報提供事例(薬剤)」です。
薬効コード114の事例番号 jirei141 に「原則として、『ロキソプロフェンナトリウム水和物【内服薬】』を『片頭痛』、『緊張型頭痛』に対し処方した場合、当該使用事例を審査上認める。」と掲載されています。
同じ薬効コードには「顎関節症の関節痛」(jirei235)、「尿管結石」(jirei297)の事例も並びます。ただし保険上の扱いは断定できません。審査情報提供事例のページには「本提供事例に示された適否が、すべての個別診療内容に係る審査において、画一的あるいは一律的に適用されるものではないことにご留意ください」と明記されているためです。
適応外使用は「使ってはいけない」という意味ではありません。承認された効能・効果の範囲外での使用であり、使うかどうかは処方医が個々の症例で判断し、その責任を負うものです。「頭痛にロキソニンが出たけれど大丈夫か」と聞かれたときは、承認の線と審査上の取扱いを分けて示し、判断は処方医にあることを添えます。
副作用と「飲んではいけない人」の違い
禁忌はロキソニン8項目、カロナール2項目
禁忌とは、その患者には投与してはいけないと添付文書で定められている条件です。
ロキソニンの禁忌は8項目。消化性潰瘍、重篤な血液の異常、重篤な肝機能障害、重篤な腎機能障害、重篤な心機能不全のある患者、本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者、アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤等による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者、妊娠後期の女性です。
カロナールの禁忌は2項目のみで、重篤な肝障害のある患者と、本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。使える人の広さという点では、この8対2がもっとも客観的な指標になります。ただし禁忌が少ないことは安全であることとイコールではなく、カロナールには警告があり、ロキソニンには警告が設定されていないという逆向きの差もあります。
重大な副作用はロキソニンが14項目、カロナールが8項目で、いずれも頻度不明。ロキソニン側にはショック・アナフィラキシー、消化性潰瘍・消化管出血・消化管穿孔、急性腎障害・ネフローゼ症候群・間質性腎炎、心筋梗塞・脳血管障害、無菌性髄膜炎などが並びます。
心血管の側では2025年3月改訂でうっ血性心不全が加わり、心筋梗塞・脳血管障害の記載には、国内のレセプトデータベースを用いた心血管系イベントのリスク評価が文献として付されています。
カロナール側にも、ショック・アナフィラキシー、中毒性表皮壊死融解症(TEN)・皮膚粘膜眼症候群(SJS)、喘息発作の誘発、劇症肝炎・肝機能障害・黄疸、顆粒球減少症、間質性肺炎、間質性腎炎・急性腎障害、薬剤性過敏症症候群が記載されています。喘息発作も腎障害もカロナールで起こりうる、と書かれています。
出血の側にも記載があります。カロナールは出血傾向のある患者について血小板機能異常が起こることがあるとされ、その他の副作用には血小板減少と血小板機能低下(出血時間の延長)が挙がっています。「アセトアミノフェンは血を固まりにくくしないから抜歯前でも安心」という説明は、添付文書の記載を超えています。
カロナールにだけある「警告」:肝障害とアセトアミノフェンの重複
警告は添付文書でもっとも強い注意喚起です。1つめは「本剤により重篤な肝障害が発現するおそれがあることに注意し、1日総量1500mgを超す高用量で長期投与する場合には、定期的に肝機能等を確認するなど慎重に投与すること」。2つめはアセトアミノフェンを含む他の薬剤との併用回避で、次の項で扱います。
なぜ肝臓なのか。インタビューフォームには「常用量では大半がグルクロン酸抱合や硫酸抱合によって代謝され、排泄される」とあります。抱合とは、薬に別の物質をくっつけて水に溶けやすくし、尿から出しやすくする処理です。
続けて「一部はシトクロムP450(CYP2E1)で水酸化され、活性代謝物N-acetyl-p-benzoquinone imine(NAPQI)を生成する。NAPQIは肝細胞内でグルタチオン(GSH)抱合を受けた後、メルカプツール酸として、尿中に排泄される」。
CYP2E1は薬を代謝する肝臓の酵素、NAPQIは肝臓に毒性を持つ物質で、量に限りのあるグルタチオンがこれを受け止めて無害化しています。
つまり常用量なら安全に処理されるが、量が増えるか受け止め役のグルタチオンが減っていると、NAPQIが肝細胞を傷つけるという設計です。1日1500mg超で肝機能の確認が求められるのは、この経路があるためです。
グルタチオンが減る条件も書かれています。「絶食・低栄養状態・摂食障害等によるグルタチオン欠乏、脱水症状のある患者:肝障害があらわれやすくなる」。発熱で食事も水分もとれないまま解熱薬だけを続けている状態は、これにそのまま当てはまります。過量投与では肝臓・腎臓・心筋の壊死の報告があり、解毒にはアセチルシステインの投与を考慮するとされています。
いちばん危ないのは市販のかぜ薬との重複
実害が出やすいのはカロナールと市販のかぜ薬・解熱鎮痛薬との重複です。市販の総合感冒薬や解熱鎮痛薬にはアセトアミノフェンが配合されているものが多く、処方されたカロナールに加えて飲むと同じ成分を二重に飲むことになります。
カロナールの添付文書には「本剤とアセトアミノフェンを含む他の薬剤(一般用医薬品を含む)との併用により、アセトアミノフェンの過量投与による重篤な肝障害が発現するおそれがあることから、特に総合感冒剤や解熱鎮痛剤等の配合剤を併用する場合は、アセトアミノフェンが含まれていないか確認し、含まれている場合は併用を避けること」とあります。
さらに重要な基本的注意に「アセトアミノフェンを含む他の薬剤と併用しないよう患者に指導すること」と記載されています。服薬指導そのものが添付文書で求められている、数少ない項目のひとつです。実務では次の3点で重複を拾えます。
- 市販薬を使っているか、お薬手帳だけでなく口頭でも確認する(市販薬は手帳に載らないことが多い)
- 市販薬の箱や添付文書の成分欄で「アセトアミノフェン」の記載を一緒に探す
- 解熱薬を1日にどれだけ飲んだかを時刻とともに聞き取り、1日総量が上限を超えていないかを見る
ロキソニン側にも同じ構図があります。市販のかぜ薬にはイブプロフェンなどのNSAIDsが配合されているものがあり、こちらはNSAIDs同士の重複です。
加えて、ロキソプロフェンそのものが市販薬として販売されています。2011年1月にスイッチOTCとして発売されたロキソニンSがそれです。
処方されたロキソニンに市販のロキソニンSを足すと、同じ成分を二重に飲むことになります。成分名で確認する習慣が、両方向で効いてきます。かぜのときに何が必要かは、風邪に抗生物質が処方されない理由とあわせて押さえておきます。
持病・年齢でどちらを選ぶか
妊娠中・授乳中はどちらを使うか
妊娠中に第一選択となるのはカロナールです。ただし「妊婦にカロナールなら無条件で安心」という説明は、添付文書の記載から外れます。
ロキソニンは妊娠後期の女性が禁忌で、理由は動物実験(ラット)での分娩遅延と胎児の動脈管収縮の報告です。加えて2024年10月の改訂で、妊娠後期を除く妊婦についても記載が追加されました。
治療上の有益性が危険性を上回るときにのみ、必要最小限にとどめること。羊水量と胎児の動脈管収縮を疑う所見を、妊娠週数や投与日数を考慮して適宜確認すること。
背景には、シクロオキシゲナーゼ阻害剤で胎児の腎機能障害・尿量減少とそれに伴う羊水過少症が起きたという報告と、妊娠中期の使用で胎児の動脈管収縮が起きたという報告があります。
カロナールも妊婦は禁忌ではありませんが、有益性投与です。添付文書には妊娠後期の女性への投与により胎児に動脈管収縮を起こすことがあると明記されています。妊娠中にカロナールが選ばれるのは、禁忌ではなく有益性投与だからであって、影響がないからではありません。
授乳中は、アセトアミノフェンとロキソプロフェンのどちらも、国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センターの「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」に収載されています(2025年8月改訂)。
ロキソニンの添付文書は動物実験(ラット)での乳汁移行を挙げたうえで、授乳の継続または中止を検討することとしており、中止を指示しているわけではありません。
子どもに使えるのはどちらか
ロキソニンの添付文書には「小児等を対象とした臨床試験は実施していない」と記載されており、小児の用法・用量が設定されていません。カロナールは「小児科領域における解熱・鎮痛」が承認された効能・効果に含まれます。
小児の解熱にアセトアミノフェンが使われる背景には、承認内容だけでなく経緯もあります。1999年から2000年のインフルエンザ脳炎・脳症の調査を受け、日本小児科学会理事会は2000年11月12日の見解で、ジクロフェナクナトリウムとメフェナム酸について注意を示しました。
同じ見解は、アセトアミノフェンでは致命率の上昇がなく、インフルエンザに伴う発熱にはアセトアミノフェンがよいと考えるとしています。一方で、他の非ステロイド性消炎鎮痛剤については調査症例数が少なく関連性は明確になっていない、とも記しています。
つまり名指しで注意が示されたのはジクロフェナクナトリウムとメフェナム酸であり、NSAIDs全般が脳症の原因と証明されたわけではありません。ロキソプロフェンが小児で使えない理由はこれとは別で、小児の用法・用量そのものが設定されていないことにあります。理由が2つあることを分けて押さえておくと、保護者からの質問に答えが崩れません。
用法・用量は体重1kgあたり1回10〜15mgを投与間隔4〜6時間以上あけて使い、1日総量60mg/kgを限度、ただし成人の用量を超えない。小児科領域での1回最大用量は500mg、1日最大用量は1500mgです。体重20kgなら1回200〜300mg(錠200を1〜1.5錠)が目安にあたります。
ただしカロナールにも下限があり、「低出生体重児、新生児及び3ヵ月未満の乳児を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない」とされています。剤形の広さも小児では効いてきます。カロナールにはシロップ2%、細粒20%・50%、坐剤小児用50、坐剤100・200・400があり、内服できない場面や体重に合わせた調整に対応できます。ロキソニンには坐剤もシロップもありません。
大人用のロキソニン錠を割って子どもに飲ませる使い方は成り立ちません。小児の用法・用量が設定されておらず、割った量が安全である根拠がないためです。カロナールも、大人の錠剤を割るのではなく体重に合わせた剤形と用量を医師の指示で使うのが原則です。
高齢の方・腎機能が落ちている方
高齢者は両剤とも「副作用があらわれやすい」とされ、少量からの開始など慎重な投与が求められています。また両剤とも「過度の体温下降、虚脱、四肢冷却等があらわれることがある」とあり、特に高熱を伴う高齢者では投与後の状態に注意することとされています。小児等が対象に挙げられているのはカロナールのみです。
腎臓では明確な差が出ます。ロキソニンは重篤な腎機能障害のある患者が禁忌で、理由は「急性腎障害、ネフローゼ症候群等の副作用を発現することがある」。重篤でない腎機能障害やその既往でも、浮腫、蛋白尿、血清クレアチニン上昇、高カリウム血症等が起こることがあるとされています。血清クレアチニンは腎臓の働きを示す血液検査の指標です。
カロナールは腎障害が禁忌ではありませんが、腎障害又はその既往歴のある患者について「投与量の減量、投与間隔の延長を考慮すること。症状が悪化又は再発を促すおそれがある」と記載されています。つまりカロナールは腎臓に負担がない、という説明は不正確です。
外来で注意が要るのは、ACE阻害剤やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤、チアジド系利尿薬、ロキソニンが揃う処方です。ロキソニンの添付文書には、降圧剤との併用で腎機能を悪化させるおそれがあり、機序はプロスタグランジン生合成抑制による腎血流量の低下と記載されています。
降圧薬と利尿薬を継続している高齢の方に、痛みで解熱鎮痛薬が加わる形は珍しくありません。夏場の脱水や、食事がとれていない時期と重なると条件が揃います。腎機能の数値だけでなく、いま何を飲んでいるかまで見ます。
喘息のある方・胃が弱い方
喘息は「喘息ならカロナール」で終わらせないことが大切です。ロキソニンはアスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤等による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者が禁忌で、それ以外の気管支喘息でも病態を悪化させることがあるとされています。
添付文書の用語は「アスピリン喘息」ですが、臨床ではNSAIDs過敏喘息とも呼ばれます。アスピリンだけで起きるものではなく、シクロオキシゲナーゼ阻害作用を持つNSAIDs全般が引き金になるためです。
名前のせいで「アスピリンを飲まなければ関係ない」と受け取られやすいので、聞き取りでは薬の名前ではなく、痛み止めや解熱薬で発作が出たことがあるかを尋ねます。
カロナールは禁忌ではありません。ただし気管支喘息のある患者では症状が悪化するおそれがあり、アスピリン喘息又はその既往歴のある患者についても症状が悪化又は再発を促すおそれがあると記載され、重大な副作用にも喘息発作の誘発が入っています。
さらに2023年10月改訂で追記された制限があります。アスピリン喘息又はその既往歴のある患者では、カロナールの1回最大用量はアセトアミノフェンとして300mg以下とすること。通常の鎮痛が1回300〜1000mgですから、上限が3分の1以下に絞られます。処方された1回量が300mgを超えていないかを見る、添付文書に根拠のある確認ポイントです。
胃については、ロキソニンは消化性潰瘍が禁忌、潰瘍の既往では再発のおそれ、潰瘍性大腸炎やクローン病でも病態を悪化させるおそれがあるとされています。カロナールにも2023年10月改訂で「消化性潰瘍又はその既往歴のある患者:症状が悪化又は再発を促すおそれがある」が入り、胃と無関係な薬ではありません。
飲み合わせで注意する薬
ロキソニンで確認する併用薬
ロキソニンの併用注意には、外来で日常的に出会う組み合わせが並びます。ワルファリンは抗凝血作用が増強されるおそれがあり、必要なら減量とされています。エドキサバンなどの第Xa因子阻害剤では出血の危険性が増大します。
クロルプロパミドなどのスルホニル尿素系血糖降下剤は、蛋白結合率の高さから血糖降下作用が増強されます。レボフロキサシンなどのニューキノロン系抗菌剤とは、痙攣誘発作用を増強することがあるとされ、発熱と痛みで抗菌薬と解熱鎮痛薬が同時に出る場面がそのまま該当します。
メトトレキサートは血中濃度が上昇するため、関節リウマチの患者さんでは特に注意します。リチウム製剤も同様に血中濃度が上がり、リチウム中毒を起こすことがあります。
腎臓の側でとくに見ておきたいのが、降圧剤(ACE阻害剤、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤等)とチアジド系利尿薬です。添付文書には、降圧作用を減弱するおそれに加えて、腎機能を悪化させるおそれがあると記載されています。降圧薬と利尿薬を飲んでいる高齢の方にロキソニンが加わる処方は、外来でよく見かけます。
カロナールで確認する併用薬
「カロナールは飲み合わせの心配がない」という説明は、添付文書の記載と合いません。ワルファリンは、血漿蛋白結合部位での競合により抗凝血作用が増強されることがあり、減量など慎重な投与とされています。抗凝固薬を飲んでいる方でもカロナールなら安全、とは言えません。
カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、プリミドン、リファンピシン、イソニアジドの長期連用者では、肝薬物代謝酵素が誘導され、肝毒性を持つNAPQIへの代謝が進むため、肝障害を生じやすくなるとの報告があります。アルコール多量常飲者も同じ機序です。リチウム製剤とチアジド系利尿剤も併用注意に入ります。
現場でいちばん見落としやすいのが抗生物質・抗菌剤との併用です。過度の体温下降を起こす頻度が高くなるとされ、機序は不明と書かれています。感染症で抗菌薬とカロナールが同時に出るのは日常的な処方なので、高齢の方では投与後の血圧と手足の冷えを確認します。
飲み方の実務(何錠・何時間あける・空腹時)
錠数に置き換えます。ロキソニン錠は1錠60mgなので、鎮痛での1回60mgは1錠、頓用の1回60〜120mgは1〜2錠、かぜの熱と痛みでは1日最大180mg(3錠)。カロナールは錠200なら1回2錠で400mg、錠500なら1回1〜2錠で500〜1000mgとなり、鎮痛での1回300〜1000mgの範囲に入ります。
逆にいえば、錠200を1回1錠(200mg)で飲むと、成人の鎮痛の下限である1回300mgに届きません。錠数を確認するときは、1回量が何ミリグラムになるかまで戻して見ます。
間隔は、カロナールが4〜6時間以上という具体的な数字を添付文書に持つのに対し、ロキソニンは時間の指定がなく1日3回という回数で示されています。同じ間隔で考えないほうが安全です。どちらも「年齢、症状により適宜増減する」とあり、量と間隔は処方で決まっているため、自己判断で変えないよう伝えます。
空腹時に飲んでよいか
「カロナールは胃に優しいから空腹時でも大丈夫」という説明が広く出回っていますが、添付文書の記載とは食い違います。両剤とも、用法及び用量の欄に「空腹時の投与は避けさせることが望ましい」と明記されています。カロナールも例外ではありません。
とはいえ、発熱で食事がとれないときに解熱薬を使う場面は現実にあります。判断は患者さんの状態を見て医師・薬剤師が行いますが、絶食・低栄養状態や脱水では肝障害があらわれやすくなるという先ほどの記載とも重なります。食べられていない状態で解熱薬を続けることは、胃の負担という以前に肝臓の側からも注意が要るということです。
効かないときはどうするか
両剤の添付文書が述べているのは、鎮痛薬による治療は原因療法ではなく対症療法であるということです。どちらにも「原則として同一の薬剤の長期投与を避けること」とあり、カロナール坐剤には急性疾患では原則5日以内に限ること、という記載もあります。したがって答えは「増やす」ではなく、痛みや熱の原因を評価する方向へ向けることです。
頭痛で回数が増えているときは、薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)を疑う場面があります。「頭痛の診療ガイドライン2021」では、3か月を超えて定期的に急性期治療薬を使っている状態で、アセトアミノフェンや単一成分のNSAIDsは月15日以上、トリプタンやエルゴタミン、オピオイド、複合鎮痛薬は月10日以上が使用過多の目安とされています。
飲む量ではなく飲む日数が指標になる点が、患者さんの感覚とずれます。「1回1錠しか飲んでいないから大丈夫」と考えている方には、月に何日使ったかを一緒に数えます。
- 黒い便、吐血、強い腹痛(消化性潰瘍・消化管出血・消化管穿孔)
- 尿が出ない、むくみ(急性腎障害・間質性腎炎)
- 強いだるさ、皮膚や白目が黄色い、尿が濃い(劇症肝炎・肝機能障害・黄疸)
- 息苦しさ、ゼーゼーする(喘息発作の誘発)
- 発疹、粘膜のただれ、高熱を伴う皮疹(中毒性表皮壊死融解症・皮膚粘膜眼症候群)
- 解熱薬のあとにぐったりする、意識がはっきりしない、けいれん、手足が冷たい
よくある質問
- ロキソニンとカロナールは一緒に飲んでもいいですか?
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どちらの添付文書にも「他の消炎鎮痛剤との併用は避けることが望ましい」と記載されています。組み合わせるかどうかは処方医が個々の症例で判断するもので、手元の薬を自分の判断で足すことは想定されていません。
- ロキソニンで眠くなることはありますか?
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添付文書のその他の副作用に、眠気が0.1〜2%未満の頻度で記載されています。頻度は高くありませんが、車の運転や機械の操作をする方には確認しておきたい項目です。
- お酒と一緒に飲んでも大丈夫ですか?
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カロナールの併用注意にはアルコールが挙がり、多量常飲者で肝不全を起こしたとの報告が記載されています。ロキソニンの併用注意にアルコールの記載はありませんが、飲酒してよい意味ではありません。
- 痛み止めを長く飲み続けても問題ありませんか?
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両剤とも「原則として同一の薬剤の長期投与を避けること」とされ、長期投与時は定期的な検査が求められています。その他の注意には、長期間投与された女性で一時的な不妊が認められたとの報告もあります。
- 錠剤をシートのまま飲み込んでしまったときは?
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両剤の添付文書に、PTPシートの誤飲で硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、穿孔から縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがあると記載されています。速やかに受診するよう伝えます。
ロキソニンとカロナールの違いを踏まえて、現場で何を確認するか
- 炎症を抑える働きが承認内容にあるのはロキソニンだけ(効能に「消炎」の語がある)
- 使える人が広いのはカロナール(禁忌2項目に対しロキソニンは8項目)。ただし警告があるのはカロナールだけ
- 小児の用法・用量があるのはカロナールのみ。増やせる幅もカロナールが広い(鎮痛で1日4000mgまで)
- 空腹時を避けることが望ましいのは両剤とも
- アセトアミノフェンは市販のかぜ薬にも入っている。重複すると過量投与になりうる。ロキソプロフェンも市販薬にある
- 妊娠中の第一選択はカロナール。ただし禁忌ではなく有益性投与で、妊娠後期は胎児の動脈管収縮の記載がある
- 相互作用はどちらにもある。ワルファリンは両剤とも併用注意
結論を1つに絞るなら、この2剤は強さの順番で並ぶ薬ではなく、承認されている働きの範囲が違う薬です。そのうえで、患者さんに説明する場面で確認しておきたいことを挙げます。
- 市販薬を使っていないか。成分欄でアセトアミノフェンとNSAIDsの重複を確認する
- 食事と水分がとれているか。とれていない状態でのアセトアミノフェンは肝障害の条件と重なる
- 腎機能・肝機能の状態、喘息・消化性潰瘍の既往、妊娠の有無と週数、授乳の有無
- 併用薬。抗凝固薬、降圧薬と利尿薬、ニューキノロン系抗菌剤、メトトレキサート、リチウム
- いつから1日何回飲んでいるか。長引いているなら原因の評価につなぐ
添付文書は改訂されます。判断に迷う場面では最新の版を確認するのが確実です。
参考文献
- ロキソニン錠60mg/ロキソニン細粒10% 添付文書(PMDA 医療用医薬品情報)(第一三共、2025年3月改訂・第4版/PMDA掲載2025年3月5日)
- ロキソニン錠60mg/ロキソニン細粒10% インタビューフォーム(第一三共、2025年3月改訂・第14版)
- カロナール錠200・300・500 添付文書(PMDA 医療用医薬品情報)(あゆみ製薬、2023年10月改訂・第4版/PMDA掲載2023年10月12日)
- カロナール錠・細粒・原末 インタビューフォーム(あゆみ製薬、2024年4月作成・第3版)
- カロナール坐剤小児用50/カロナール坐剤100・200・400 添付文書(あゆみ製薬、2023年10月改訂・第1版)
- 厚生労働省 医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議「公知申請への該当性に係る報告書 アセトアミノフェン 関節リウマチ(要望番号IV-43)」
- 社会保険診療報酬支払基金「審査情報提供事例(薬剤)」
- PMDA「シクロオキシゲナーゼ阻害作用を有するNSAIDs(全ての妊婦が禁忌とされている薬剤を除く)の『使用上の注意』の改訂について」(2024年10月8日)
- 日本小児科学会「インフルエンザ脳炎・脳症における解熱剤の影響について」(理事会見解、2000年11月12日)
- 国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター「授乳中に安全に使用できると考えられる薬(薬効順)」(2025年8月改訂)
- 日本頭痛学会・日本神経学会「頭痛の診療ガイドライン2021」(Mindsガイドラインライブラリ)
